占い師の女性
「……あれかな?」
「あれじゃない?」
「あれだ」
町の東側の大通りまでやってきた3人であるが、遠目からでも目的の人物はわかった。白い布がかかった机の上に「占」と書かれた行燈のようなものが置かれており、いわゆる路上占いを行っているようだ。
カマセーヌの知り合いの占い師は女性キャラだった。紫のフードをかぶり、フェイスベールと呼ばれる顔の下半分を覆う布で口元を隠しており、目元しか見えない。瞳は藍色で、その目の下にはうっすらとクマがある。フードから伸びている髪の毛は、遠目からは黒髪に見えたが瞳の色と同じ藍色のようだ。あと特筆すべき点といえば、結構な猫背である。
「よう、シオ」
シオと呼ばれた女性は、呼びかけたカマセーヌとそれに付き従うケイディアとフローデを一瞥すると、フッと息を吐き呟く。
「……あなたたちがここへ来ることはわかっていました」
「……メッセ送ったからな」
「ふふ、占い師ジョークですよ。今日はいつもの2人とは違う人ですね」
メッセージを飛ばしてここで占いをしていると返事があってここに来ているのだから、わかっているに決まっている。
見た目よりも案外気さくな性格なのかもしれない。そう思いながらケイディアとフローデは挨拶を交わす。
「初めまして、ケイディアです」
「フローデです」
「こいつらは今日一緒にクエストやってる知り合いだ。こいつが言ってた占い師な」
「はじめまして。塩こんぶと申します」
「塩こんぶさん……?」
「ふふふ、シオとお呼びください」
塩こんぶもとい、シオは、立ち上がり丁寧なお辞儀をする。座っているときは猫背で縮こまっていたが、立ち上がり背筋を伸ばすとケイディアより少し高いくらいだ。
だが、席に着くとやはり猫背になり、小さくなってしまう。その姿勢からは自然と見上げる形になる。
上目遣いにじっとケイディアを見て口を開く。
「ふむ、あなた……何か悩みを抱えていますね?」
「え、俺ですか?」
悩み、そう言われてケイディアが真っ先に思い当たるのは、事の発端となったカマセーヌとの会話だ。思い返せば、取得するスキルについての相談からこのクエストは始まったのだ。
「どの未来を選ぶのか、決めるのはあなた自身ですが、いくらかの助言はできると思いますよ?」
こちらにお掛けなさいな、とシオはケイディアを正面の席へと促す。ケイディアをじっと見つめる藍の瞳は、全てを見透かしている様だ。
ケイディアがそんなことを考えているとカマセーヌから声がかかる。
「そいつ、適当言ってるだけだから本気にするなよ」
「え?」
「うん。バーナム効果ってやつだね。誰にでも当てはまることをそれっぽく言うやつ」
「あらあら、初めての方にまで見破られてしまうとは」
もっと精進が必要ですねと彼女は悪びれもせずに言う。
手のひらの上でいいように転がされたことに若干の悔しさを覚えながら、ケイディアが席を立とうとすると、シオはそれを制止した。
「それで、何か悩んでいることがあるのでしょう?初回料金として特別に無料で占ってさしあげます」
「え、でも適当だって……」
「占いというのは人との対話なの。相手の話を聞いて、相手の探している答えを導き出す、いわば相談のプロなのですよ」
「は、はあ」
何かまだ騙されているような気がしながらも、ケイディアは取得するスキルについて悩んでいることを話し出す。
「なるほど。確かにその手の相談は多いですね。……じゃあ早速」
そう言って彼女はどこからか取り出したタロットカードをケイディアの目の前でシャッフルしはじめる。そしてカードを扇のように広げるとケイディアに向かって差し出した。
「一枚引いてください」
「え?」
「一枚引いてください」
「……これって机に並べたりするんじゃないんですか?」
その様子は占い師と言うよりカードマジックを披露するマジシャンだ。戸惑いながらもケイディアが一枚つかむと、それを机の上に裏向きのまま置くように促す。
「では、表にしてください」
「えっと……はい」
言われるままにカードをひっくり返す。そこに描かれていたのは上下逆の塔の絵だった。
ちょっと区切りが悪いですがここまでで。
塩こんぶというキャラ名をそのまま使うと雰囲気を壊しそうなので地の分ではシオで表記しています。




