少女フローデ
ギルドに入ってきた少女をジッと見つめるカマセーヌに対し、ケイディアは口を開く。
「……カマセーヌ様、ロリコンなの?」
「ばっかちげーよ!」
慌てた様子のカマセーヌに、ふぅん、とケイディアは訝し気な視線を向ける。
入口に現れた少女は、遠目だがどう見ても小さい。身長は120センチ程度しかないように見える。茶髪のツインテールで、暗めの赤色の瞳がキョロキョロと動いている。質素で動きやすそうな服装は近接職にも見えるが、腰のベルトにポーチと魔術書のような本が吊るされているので、ジョブは魔法使い系なのだろうと予想できる。
「……話しかけたら事案にならないだろうか」
「……ロリコンなの?」
「ちげえって!……あれ、初期装備じゃないだろ?でも見たことないキャラだから移動組だと思うんだよな」
「へぇ……」
この時点でケイディアは、なにか嫌な予感がした。
移動組なら洗礼を、と意気込むカマセーヌとケイディアの姿があたりを見回していた少女の目に映る。
「あ、ケイ君?」
「ぶはっ!?」
思わず吹き出してしまうケイディア。
離れていても通るその声は完全に少女の声なのだが、この場でケイディアに話しかけるということは、その少女がここで待ち合わせをしていた相手だということだ。
「えぇ……?マジですか?」
「お、お前の知り合いなのかよ?」
「……そうみたいです」
頭を抱えているケイディアのもとに少女が駆け寄ってくる。
「牛先輩……マジですか」
「ん?ああ、かわいいでしょ?」
「かわいいですけど……」
実際、近くで見るとかなりの美少女なのだが、その中身が知り合い、しかも自分より年上の男性だと考えると複雑な心境だった。
牛先輩は隣に座っているカマセーヌをちらりと見てからケイディアに話しかける。
「……そちらの方は?」
「えっと、こちら、カマセーヌ様です。ちょっとした知り合いです」
「え?あの?」
「えーと……こちら、学校の先輩です」
性別すら変わっている牛先輩をどこまで紹介していいものかわからず、お茶を濁した紹介になってしまった。そんなケイディアの胸中も知らず、性別詐称の牛先輩は笑顔を見せながら軽く頭を下げる。
「はじめまして、カマセーヌさん。コデニナの街からやって来ましたフローデと申します。うちの後輩がお世話になっています」
牛先輩のキャラはフローデというらしい。カマセーヌに対してにこやかに挨拶をした。
それに対し、カマセーヌのほうは腕組みをし、ふんぞり返って返答をする。
「へっへっへっ、殊勝な態度だな。ここら一帯は俺様の島だからな」
「こんなこと言ってますけど、カマセーヌ様、めっちゃいい人ですから」
「やめろw」
カマセーヌは未だに悪役キャラを守ろうとしているのだが、お節介なのかいたる所でアドバイスをしているせいで、もうイトリスの大半のプレイヤーに人の好さは知れ渡っている。
「噂はうかがってますよ。『負けロールのカマセーヌ』様」
「二つ名みたいなのまでついてるじゃないですかカマセーヌ様」
「へっへっ。まあ俺様ほどの実力者なら当然のことだな」
『負けロールのカマセーヌ』という異名に、あきれ顔のケイディアとまんざらでもないカマセーヌ。
「で、どうしたんですか、それ」
「キャラの性別選べる時って、操作キャラには女の子選んじゃうんだよね。男操作するのより女の子かわいいしていたいし……。あ、中身は男なんで気兼ねなく接してください」
「お、おう。そうなのか」
男であることをさらっとカミングアウトする様子を見るに、先輩はネカマプレイするつもりはないらしい。そのことにケイディアは少しばかり安堵した。
一方のカマセーヌは少し思案気な表情をしている。フローデの中身が男だと聞いてショックを受けたのだろうかとケイディアが思っていると、
「なあ、お前のパーティ、あと2人女キャラいたよな?」
黒瀬と砂川にネカマ疑惑が発生していたようだった。
ケイディアは苦笑いを浮かべながらも、カマセーヌが失言して不興を買わないように注意しておく。
「あっち2人はあれでもリアル女子なので気を付けてください」
「……『あれでも』は怒られる奴だね」
失言したのはケイディアのほうだった。
実際の体型と大きく異なるキャラを作った場合、女神様に注意勧告はされますが(日常生活に影響を及ぼす可能性があるため)、押し切ることはできます。自己責任です。




