戦いの結末
「汝らの旅路がこの大地に新たな光をもたらさんことを!」
イトリスの町、大教会。設定上は大地の女神を祀り、信仰を集める場所であり、プレイヤーにとっては『神術』と呼ばれる神の力を借りる魔法を教わる場所である。
そして、死んでしまったプレイヤーの復活地点でもある。司教のNPCに見送られ、4人のプレイヤーはとぼとぼと歩きながら話していた。
「いやぁ、火竜は強敵でしたね」
「……そうだな」
「あと3発入れれば倒せたのにー」
「うん、現状じゃ無理だよね、それ」
クローベルの作り出した隙に撃ち込んだサリミラの一撃は、サリミラのLPを5割以上消費しながらも、ドラゴンのLPを3割しか削れなかった。その攻撃で完全に嫌悪値を向けられたサリミラはドラゴンに追い回され、速度アップの効果切れであえなく脱落した。
残った二人の攻撃はほとんど通らず、『逃げるなんて男らしくない』『敵前逃亡は死罪だよね』という幽霊からの野次が飛ぶ中、二人そろって尻尾の薙ぎ払いに持っていかれ、全滅したのだった。
「痛みは無いけど恐怖はあるよな。あの浮遊感」
「そうだな。多分今回一番飛んだのはクロだったと思うが」
「あー私、錐揉みしながら飛んだけど、その時は何が起きたかわからなかったわ」
「わたしは地面に叩きつけられただけで済んだけどねー。皆は漫画みたいな飛び方してたけど」
サリミラの死因はドラゴンに踏みつぶされたことによる圧死だが、他3人はバトル漫画のように吹き飛び、バトル漫画のように壁に激突している。岩を3つくらい貫通すれば完ぺきだったねー、とサリミラが軽い口調で話す。
「じゃあ今日はクエストの報告だけ終わらせて落ちるか?」
「負けて終わるの悔しいなあ……。けど、リベンジしようにも勝ち目なさそうだしなあ……」
「レベル上げてからまたチャレンジすればいいでしょ。戻っても遭遇できるか分からないし」
「LPとかMPとかフルならなんとかなるかもだけどねー。あっ」
冒険者ギルドに向かって歩いていた4人だったが、ふと、何かを思い出したサリミラが声を上げ、メニュー画面を開けて指を動かす。操作していたのはストレージ、つまり所持アイテムの画面だったようで、何かのアイテムを実体化して手に持った。
「どうしたんだ?サリミラ」
「ふふー。リーダーにいいものあげるよー」
「ん?……おい、これ!」
「えっと……『赤竜の劣竜鱗』?これってさっきのレッサーレッドドラゴンの鱗ってこと?倒してないのに?」
「ブレドロってやつか!」
モンスターの爪や翼などを破壊することで、破壊したプレイヤーにその破壊部位に応じたドロップが発生することがある。これがブレイクドロップ、通称ブレドロである。
サリミラの攻撃は、LPを3割しか削れなかったが、レッサーレッドドラゴンの頑丈な竜鱗に穴を開けるほどの威力があった。それにより、ブレイクの判定がされたらしく、運よくドロップが発生したようだ。
「感謝したまえよー」
「ははー。めっちゃ助かります」
ダングルスは、どや顔のサリミラの手から暗い赤色の鱗を跪いて受け取った。鱗と言っても、一枚が手のひらほどの大きさがあり、とても鱗には見えない。
「レッサーレッドドラゴンの鱗なんて、今のレベルだと普通は手に入らないからな!」
「……よかったな」
「それって一枚でも意味あるの?」
「…………あ」
鱗を握ったままダングルスがフリーズする。確かに一般的なゲームで素材というと、複数集める必要があるものがほとんどだ。
「……なあサリ、これ、もう3枚くらい取ってきてくれない?」
「無茶言うなし」
たとえ同じように銃弾を撃ち込んだとしても、同じようにドロップが発生するとは限らない。宝の持ち腐れになることを察したダングルスは遠い目になると、握った赤色の鱗をそっとストレージにしまい込んだ。
10以上レベル上の相手に準備無しで勝てるわけなかった。
とりあえず次話(予定ではダングルス視点)で二部完結です。




