つかの間の休憩
「時間をかけてゆっくり治れ『スローヒール』」
「適当な詠唱だなw」
クローベルが杖をかざすと、他三人の体力が少しずつ回復していく。損傷が激しいのは多い方からダングルス、サリミラ、ケイディアの順だ。
一部の魔法は詠唱によって、効果ではなく、効率が上がるものもある。例えば今クローベルが使っている『スローヒール』は、普通に唱えるよりも回復の所要時間が長い代わりに回復量が上がり、消費MPも抑えられている。
「お前が考えたらどんな詠唱になるんだ?」
「そうだな、『幾星霜の時よ、我が同胞を救い賜え』とか」
「そんな痛いのを詠唱するのは嫌」
バッサリと拒否されたダングルスの顔が(´・ω・`)になる。
「どうやってんだw」
「(´・ω・`)」
「(´・ω・`)」
「笑わせないでよw」
顔文字顔の2人に並んで見つめられて、クローベルも吹き出してしまった。ちなみにこれは『フェイスエモート』という機能で、表情を漫画的に表現することができるものだ。
「それにしても……自傷技が流行ってんの?」
自分の『エンチャントエクスプロード』による爆発で、ボロボロになったダングルスを見ながらケイディアは呆れたように呟く。至近距離で自分の武器が爆発したのだ。それは持っていた者もただでは済まない。
『エンチャントエクスプロード』はダングルスのオリジナルスキルである。武器に過剰な魔力を注ぎ込み、物質内で魔力を暴走させた状態を作り出し、衝撃を与えることで爆発を引き起こす。だが、当然過剰な魔力を注ぎ込まれた武器はバラバラになる上に、引き起こされる爆発自体も制御しきれていない。
ドラゴンを倒すことはできたが、その大技のおかげで新品の防具は目に見えてボロボロ、持って来た剣も失うという惨状である。
「いい火力だったねー」
「火力はロマン、力こそパワー」
「ちょっと何言ってるかわからない」
クローベルの言葉にダングルスの顔が再び(´・ω・`)になったものの、体力の回復は恙無く終了した。
「でもやっぱり炎技だから通りは悪い。基本的にはサリミラに頼んだほうがいいな。武器は有限だし」
「弾も有限だよー?」
「私のMPも有限だからね?真っ先に尽きそうなんだけど」
回復役が足りてないよ、と言うクローベルにダングルスは考え込む。
「火属性は、不死鳥の炎をイメージすれば回復使えそうな気がするんだが……まだレベルが足りないっぽいな」
「土属性の回復魔法!もレベル足りないねー」
「……俺は今の会話で修得した」
そう言うケイディアの視界には『風属性スキル《ヒールウインド》を習得しました』と表示されている。
ちなみに今のジョブレベルはダングルスが炎属性レベル12、ケイディアが風属性レベル9、サリミラが土属性レベル7である。それぞれの属性にも得手不得手があるようで、回復魔法を習得したのは、レベルとしては真ん中のケイディアだけだった。
「どんどんケイ君は後衛になるねー」
「……俺も前で戦うスキル取るべきか?」
「ケイ君はそのままでいいよ?」
それならそれで面白いけどなー、とダングルスは言うが、そうなってしまうと後衛装備で突撃するパーティが出来上がってしまう。
……あぁ、でもちょっと面白そうだな。
「あ!あっちにレレドベ見えるよー」
「……また2匹、いや、離れたところにもう1匹見えるな」
「不意討ちでサリが1匹倒せばなんとかなるんじゃない?」
「よし、回復要員も増えたし、乱獲いってみるか!」
サリミラが攻撃し、ケイディア、クローベルの2人が減った体力を回復する。そんな他力本願なダングルスの作戦にケイディア達は苦笑しながらも頷いた。
後衛装備で突撃するフラグが立ちました。回収するかは今後の流れ次第。




