ゲーマーの技
「貫け!『パワーウインドシュート』!」
「穿て『ロックランス』」
風を纏った弓矢と地面から飛び出た岩が突き刺さり、レッドレッサードラゴンベビーは少し後退る。ケイディアとサリミラが短い詠唱付きで放ったそれは、しっかりと唱えたダングルスの『ファイアボール』よりも明らかに効いているように見えた。
「火山に行くのに炎しか使えないってのはどうなの」
「んー、炎が効かないとなるとこいつの出番か?」
「剣あるのかよ。でも流石にそれは……」
ポンコツ扱いされたダングルスは、アイテムストレージから初心者用の長剣を取り出していた。だが、ただでさえレベルが足りないと言っているのにメイン武器でもない剣で戦うのは無謀だろう。しかし、当のダングルスは、そのままフラリとドラゴンに近づいていく。
「あ、おい」
「まあリーダーとして、できる所も見せとかないとな」
ケイディアの制止の声にニヤリと不敵な笑みで返すと、ドラゴンの攻撃圏内に入ったダングルスはふと立ち止まる。一見無防備なその姿にドラゴンは容赦なく噛みついてきた。
ダングルスはそれを横にずれるだけで回避する。だが、それはケイディアも辿った道だ。そこに飛んでくるのは横凪ぎの尻尾。
「危な―――」
思わずクローベルが声を上げかけるが、その時にはもうダングルスの行動は終わっている。持っていた剣を地面に突き立てグッと体重をかけたのだ。ダングルスの身体に叩きつけられるはずだった尻尾は、その勢いのまま抜き身の刃に迫る。
「くっ」
「グッキャァァアァア!!?」
腕から伝わる衝撃にダングルスも呻くが、対するドラゴンが上げたのは悲鳴のような鳴き声だ。尻尾がちぎれ飛ぶようなことは無かったが、這うように距離を取り、睨み付けるように振り返る。だが、その目に映ったのは間髪を入れず追撃をしかけてくる相手の姿だった。
「シッ!」
鋭い息とともに振り抜かれたダングルスの剣がドラゴンの首を叩く。だが、蛇腹のようになったその部分は思いの外硬い。結果として、刃が通りはしなかったが、その衝撃にドラゴンは苦しそうに呻いた。
その一連の様子を見て、スキルを使わなくてもここまで戦えるものなのかと、ケイディアはただ感心していた。だが、魔力に極振りをしているせいで、いまいちダメージが振るわない。剣で戦うようなステータスには欠片も振っていないダングルスは、頼りの炎魔法が効かない以上、こうやってちまちまと削るしかないのだろう。加勢をすべきかと思ったが、迷いの無いダングルスの動きがそれを躊躇わせる。
ダングルスは呻くドラゴンを前に追撃には移らず、素早いステップで二歩、三歩と距離を取り、肩の高さまで剣を持ち上げ、水平に構えた状態で詠唱を始める。
「紅蓮の炎魔の奔流よ、逆巻け、畝れ、渦を成せ。我が捧ぐは我が武器、魔を以て討つは我が標的。過ぎたる力を一刀に。刹那の力を我が手に宿せ。『エンチャントエクスプロード』!」
そう叫んだ瞬間、オレンジ色の光が剣の柄から切っ先に向かって走った。
「今のも炎属性魔法だよな?」
「それしか使えないはずだからねー?」
オレンジ色に光を放つ剣を片手に、ダメージから立ち直ったレッドレッサードラゴンベビーに向かって歩み寄る。ついさっき先手をとって痛い目を見たドラゴンとしては、同じ手は躊躇われるのだろう。しかし、ダングルスは斬りかかる様子もなく、どんどん近づいてくる。
堪え切れなかったドラゴンが迎撃をしようと身体を少し引いた瞬間、ダングルスは一気に大きく踏み込み懐に潜り込んだ。
「『バスタースイング』!!」
使ったのは大振りに剣を振り、相手に叩きつけるだけの剣の初期スキルだ。だが、その直前に使っていた魔法の効果でそれは全くの別物になる。
ケイディア達が見たのは、ドラゴンの首に当たった瞬間光った刀身と、その直後に起こった爆発による橙色の炎だった。
「グキャアァアアアアァ……!」
刀身の爆発による爆炎は、火竜の炎属性耐性を上回るには到らなかったが、爆発による衝撃までもは殺しきれなかった。
ダングルスの一撃は、レッドレッサードラゴンベビーの残りのLPを根こそぎ持っていったのだった。
もしかして主人公が一番活躍してないのでは……?でもこの先もあまり活躍する予定がありません。どうしよう?
『エンチャントエクスプロード』の解説は次回。威力は出ますがデメリットも多々あります。




