レレドベ狩り
「とりあえず突撃ー」
サリミラは軽いテンションで大口径ライフルを構え、距離が近いほう、自身の身長の倍近くの大きさのレッサーレッドドラゴンベビーの正面に躍り出る。サリミラと対面したドラゴンは、自身の力を誇示するかのように天に向かって咆哮を上げた。
「クオオオォォォォオ!!」
だが、自分より随分と小さな人間の姿にドラゴンも油断したのだろうか。敵対する相手から目を離したことは失錯であり、文字通りの命取りとなった。
ドォン!と、お馴染みの爆音とともに吐き出された弾丸は未だに天を見上げるレッサーレッドドラゴンベビーの腹部に直撃する。
「クオオォォォ……!」
弾丸はドラゴンを貫きはしなかったものの、レッサーオーガを吹き飛ばすに足る運動エネルギーの直撃は、そのLPを全損させた。ズシンという地響きとともにドラゴンの死体が横たわり、キラキラとエフェクトを発しながら消えて行く。
「えげつねぇ……」
ぼそりと呟くダングルスにケイディアは全面的に同意する。
一方で残ったほうのレッサーレッドドラゴンベビーは、轟いた爆音と同族が一撃で狩られた衝撃のせいか、金縛りにあったかのように動かない。
「そっちはオレ達で狩るぞ。クロはサリの回復を頼む」
「わかった」
「風のように速く、羽根のように軽く『フェザーステップ』」
ケイディアは詠唱付きで敏捷上昇の補助魔法『フェザーステップ』を発動させる。その声にようやく相手のレッサーレッドドラゴンベビーも動き出した。
「クキャァァァァァ!」
レッサーレッドドラゴンベビーのターゲットは、一人近寄ってきたケイディアだ。レッサーレッドドラゴンベビーは腕が発達しておらず、主な攻撃手段は頭や尻尾になる。
噛みつきにかかってきたドラゴンをケイディアは横へのステップでかわす。だが、そこに体をぶん回しての横凪ぎの尻尾が飛んできた。
「あっ、ちょっ」
バックステップでの回避は間に合わない。見事に弾き飛ばされ、ゴロゴロと転がされた。
「ケイくん大丈夫?」
「後ろに跳んでたから大丈夫……行けるか?」
ケイディアがふと見ると、ダングルスが杖を水平に構えたポーズで止まっている。その周囲と足下には魔方陣が浮かび上がり、パチパチと魔力が火花を散らしている。
『ストップモーション』と呼ばれるこのシステムスキルは、静止することで集中状態を演出し、魔法や一部のスキルの威力を高めることができるものだ。
「我が紅蓮、火球となりて敵を討て『ファイアボール』!」
満を持して放ったのは、岩石鳥を仕留めたのと同じ『ファイアボール』だ。だが、詠唱とモーションにより威力を高めた『ファイアボール』は、岩石鳥を倒したときの3倍以上の大きさの火球となり、レッサーレッドドラゴンベビーの頭部に炸裂する。
「クキャオオォォォォォ!」
「……全然ピンピンしてるんですが?」
「火竜に火の玉ぶつけてもねー」
もともと火属性の素材を取りに行きたいと言い出したのはダングルスである。だが、火属性の素材が集まるということは、火属性の攻撃は通りにくいということでもある。そして、ダングルスはバリバリの火属性魔術師だ。
今回の言い出しっぺであり、パーティのリーダーであるダングルスはいい笑顔でこう言った。
「『みんながんばれ』」
「うるせぇよ!」
火山ステージではリーダーがお荷物でしかないことが発覚(知ってた)。諦めて他力本願スタイルに移行します。




