統率された魔物達
「サリミラ!」
「あいよー!」
ダングルスの声に応えるように、私の出番とばかりにサリミラがレッサーオーガに向かって突撃する。だが、それは思わぬ形で阻止をされた。
「ギギャー!」
「ギャギギャー!」
「おっとー?」
木箱の裏側に潜んでいたゴブリン2体がサリミラの前に飛び出して来たのだ。
さらに背後からも、ガタリ、と何かが動いた音が耳に届く。ケイディアが振り返ると、部屋の両隅に積み重ねられていた木箱の蓋が開いており、そこから出てくる2体のモンスターの姿が見えた。
ゴブリンに似ているが、今までのゴブリンよりも一回り大きい。肌の色も暗めの赤色ではなく、色褪せたような赤色だ。手に持つ獲物もゴブリンよりも一回り大きい棍棒である。
ケイディアにつられてそれを見たダングルスが焦ったように叫ぶ。
「後ろ、ホブゴブリンだ!ゴブリンの上位種!しかも2体!」
「また囲まれたのか!?」
「上位種2体は相手出来るかわかんないよ!?」
「私はゴブリンに負けそうー」
視線を戻せばサリミラがゴブリンに殴られていた。そこにのそのそとレッサーオーガが歩み寄ってくる。ケイディアは慌てて魔法を放った。
「強き風よ『ハイウインド』!」
「ギャギ!?」
「グギギャー!」
ハイウインドは強風を起こすだけの風属性魔法だが、詠唱をすることで小柄なゴブリン程度なら吹き飛ばすこともできる。巻き起こった強風によって積み重なった木箱がいくつか崩れた。
「ケイくん、ありがとー!」
「状況は何も良くなってないけどな。どうする?」
「任せろ。ケイとクロはホブゴブリンを頼む」
そう言ってダングルスが杖を構える。両手剣のレベル上げを軸に戦っていたため、MPは潤沢だ。
「火竜の息吹は天をも焦がす!『ドラゴンブレス』!」
「「グギャー!?」」
「グオオオオオォォォォ!!」
『ドラゴンブレス』は火属性魔法レベル10のスキルだ。詠唱つきで放ったそれはゴブリンを容赦なく消し炭にし、レッサーオーガにも少なくないダメージを与える。
邪魔者がいなくなれば、あとはさっきと同じ展開になるだろう。ケイディアは自分の敵に集中することにした。
ケイディアとクローベルの前に迫るのは2体のホブゴブリンだ。ホブゴブリンの推奨レベルは4である。ちなみにモンスターの推奨レベルは、1対1で戦ったときにキャラレベルがこれだけあれば余裕を持って倒せる、という指針である。ちなみにクエストの推奨レベルは、パーティの平均レベルがこれだけ欲しい、という指針になる。クローベルはレベル2だが、ケイディアはまだレベル1だ。
「俺は援護に徹する。俺とクローベルに『フェザーステップ』」
「ケイくんと2人ならなんとかなるかな。『アタッカーブースト』!」
ケイディアは移動能力を向上させる風属性魔法『フェザーステップ』を発動させた。これを自身だけではなくクローベルにも使っておく。
そして、正面から突撃していくクローベルとは対称的にケイディアは大きく回り込むようにホブゴブリンの側面に移動しようとする。だが、ホブゴブリン達にも少しながら知能はある。狙いに気付き、ケイディアの動きを追いかけようとする。しかし、
「グギャッ!グギャッ!」
「あんた達の相手は私よ!『インパクトアーム』!」
「ギッ!?」
動きを追いかけようとしたホブゴブリン達にすごいスピードでラリアットが入った。
ただ、勢いはあったがダメージはあまり大きくないようで、すぐに反撃が返ってくる。だが、ホブゴブリン達が棍棒を振り下ろした先には既にクローベルはいない。
「グギギャ!?」「グギ!?」
「はやっ!?」
「バフが二重にかかると速さがすごいね、これ!」
クローベルが前に出て数発殴る。そして、相手の攻撃に合わせて下がり、下がった所で横からケイディアが矢を放つ。変則的なヒットアンドアウェイでどんどんホブゴブリン達の体力は削られていった。
矢を放つケイディアの方へ近づこうとすれば、クローベルが正面に回り込む。ホブゴブリンは苛立だし気に棍棒を振るうが、当たるはずもなく、飛んでくる矢にさらに体力を削られる。
そんな作業の中で一度爆音が轟いた。あちらの戦いが終わったようだ。轟音に対し、ホブゴブリン達は一瞬固まったが、ケイディア達は原因が分かりきっているので気にしない。
そうして、二重のバフによるスピード差の前に、ホブゴブリン達は為す術もなく、ライフを失い消滅した。
戦闘はあっさり終わりましたが、書くのは時間がかかりました。遅くなって申し訳ないです。




