遺跡に響く音色
地下の探索を終え、エントランスホールまで戻ってきた一行。正面の扉はレッサーオーガが開け放った状態のままだ。
戻ってくるまでに2匹のゴブリンとかち合ったため現在のゴブリン種の討伐数は12だが、目標の20体にはまだ届いていない。
「さてー、またイベント戦かなー?」
「見る限りではホールに敵影はないけど」
「また奇襲とかこないよね……?」
「とりあえず、俺が先頭で突入する。今回はケイが殿な」
「へーい」
ダングルスを先頭にそれぞれ武器を構え、クローベル、サリミラ、ケイディアと扉の中に入っていく。広間のような場所で、中心部には2階へと続く階段があり、その先に大きな扉が見える。隅には他の部屋に続く扉もあった。
「さて、1階を調べるか、上を調べるか」
「マップ埋めは丁寧派なのでー、私は1階からがいいと思うなー」
「まあ1階からでいいだろ。地下も先に行ったし」
「そうそう。宝箱とか取り残しは嫌だもんね」
と、満場一致で1階を調べることになったが、あまり広くもなく、特にめぼしいものは見つからなかった。ゴブリンが2匹ずつが2回出てきて計4匹狩れただけである。
そして元の広間に戻ってきたケイディア達だったが、ケイディアはふと、あることに気付く。
「あれ?」
「どうした?」
「あの扉って、俺、閉めたっけ?」
そう言って、最初に入ってきた扉、エントランスホールにつながる扉を指さす。その扉はしっかりと閉められていた。
「……さあ?閉めたんじゃねえの?それか、自動的に閉まったか」
「でもー、地下から戻ってきたときは開いてたよねー?」
「ケイくん、弓構えてたし、わざわざ扉閉めたりしてないよね?」
「……そうだったな」
律儀なゴブリンが閉めたのだろうか。いや、それよりももっとわかりやすい可能性がある。
「他プレイヤーが通ったか、だな」
「その可能性が高いよね」
「戦闘中に背後を狙われると怖いな」
「PKなのかなー?」
まだPKとは限らない。だが、PKが潜んでいると考えて動いた方がいいだろう。
「虱潰しに探すか、構わず上に行ってみるか」
「出ていったのか入ってきたのかもわからないしな」
「そっかー、ただの冒険者が探索して出ていった可能性もあるんだねー」
「入って扉閉めれば、後ろからの奇襲は回避できるんじゃない?」
「ふむ。じゃあ行くか」
クローベルの案が採用され、2階を探索することに決まった。階段を上がり、扉を開ける。
覗いた部屋は下の部屋よりも一回り広い大広間だった。部屋の中心に不規則に木箱が積み重なり、その向こうに先ほど戦ったレッサーオーガのような影が見えた。
「なんだあの不自然な箱」
「露骨すぎる飛び道具対策だなぁw。扉の外から狙えないようにしてるのか」
「向こうにいるのはー、またレッサーオーガかなー?」
「……眠ってる?」
クローベルの言った通り、木箱が邪魔で少し見えにくいが、レッサーオーガは眠っているようにも見える。全員が入り扉を閉め、なるべく音を立てないように部屋を進んでいく。
部屋の半ば、ある程度木箱に近づいた時に唐突にそれは聞こえてきた。
「……笛の音?」
「近いな。でも外か?」
フルートのような澄んだ音色の響きに、窓の方を見る。その音色は窓のすぐ外から聞こえてくるようだった。
そういえば、最初にジョブを選ぶときに楽師のジョブもあったな、などとケイディアは悠長に考えていた。
「上手いねー」
「……でもこれ、まずくないか?」
「まずいって……あ!?」
「グルオオオォォォォォ!!」
視線を窓から戻すと、ちょうど笛の音色で起き上がったレッサーオーガが、ケイディア達を睨み付け雄叫びをあげるところだった。
次回は再びレッサーオーガ戦です。前回のようにさっくり終わらせられるでしょうか?




