遺跡の探索
「これで10匹かなー?」
ゴブリンを殴り倒したクローベルを眺めながらサリミラがつぶやく。
ケイディア達は現在、ホルテ遺跡の地下を探索している。入り口で奇襲を仕掛けられて以降は順調に遺跡を攻略していた。ゴブリンが飛び出してきた右手側の通路の先に地下への階段があり、レッサーオーガが出てきた正面の扉は手付かずで、反対側の通路は崩壊していた。
「ヤバかったのは最初だけだったな」
「それも一瞬で片付いたけど」
ダングルスの言葉にケイディアは苦笑を返す。モンスター達が連携して襲いかかってきたのは最初の戦闘だけだ。その後、通路で正面から襲ってくるゴブリンを次々と討伐し、入り口の戦いはイベント戦のようなものだったのだろうと彼らは結論付けた。
「クエストのイベント戦にしては完全に殺しに来てたんだよなあ」
「初心者用クエストとは一体……」
「最初のがイベント戦ならあの扉の先も何か待ち構えてそうだけどねー」
「私のMP足りるかなあ……」
現在、クローベルのMPは心もとない量にまで下がっている。消費したのは道中で自身に掛けた能力上昇と回復もあるが、何よりMPを使う原因になったのは、サリミラだ。
「お前、筋力上がりきるまでその武器封印しろよ」
「えー?隊長、そんなひどいこと言わないでよー」
「1発撃つだけで自分のLP6割持ってく武器とか使えねえよ……」
筋力が足りていないことによる反動ダメージが半端ではなかった。2発撃てば自傷で死ねる。
だが、その威力は申し分ないものだった。速さと防御力が無い代わりにレッサーオーガは攻撃力と体力が多い。中距離、遠距離の攻撃手段があれば、逃げながら少しずつ体力を削るのがメジャーな攻略法である。そのレッサーオーガの体力を余裕で消し飛ばす火力は確かに凶悪だ。
まあ、1人で2体倒していると考えればお得かもしれない。当たればだが。
「お、宝箱はっけーん」
地下の広さ的にはここで全ての部屋を回り終わっただろう。扉を開けた先に木製の宝箱が置かれていた。
「誰も開けてない宝箱とか初心者ダンジョンにあるのか?」
「宝箱は自動的に補充されるらしいぞ?」
「なるほどー。それは嬉しいねー」
宝箱は、誰もいないタイミングで、ダンジョンや道端にゲームシステムにより設置される。中身はその場所のレベルに合わせて数種類からランダムだ。
設置場所や設置タイミングにもばらつきがあり、上級ダンジョンでアイテム狙いで宝箱の設置を待つ、といったことは難しい。
「……罠とかじゃないよな?」
「最初の奇襲のせいで、その可能性も否定できないからなあ……」
「はっはー。一番最初の宝箱がトラップとかー、そんなことあるはずないってー」
「フラグ立てないでよ」
フラグを立てるサリミラを尻目に、パーティリーダーであるダングルスが宝箱に歩み寄り、杖で軽く叩いてみる。特に反応はない。
ちなみにだが、こういった罠判定や解錠のスキルを覚える『斥候』のジョブが存在し、これは生産系に分類される。ジョブが無くても、知識や技術があれば罠を見極めたり解除することは可能だが、1パーティに1人いると便利なジョブである。
しかし、このパーティにはそんな便利な役はいないので、ダングルスが男は度胸!とばかりに一息に宝箱を開ける。
「お、腕輪だ」
中に入っていたのは、黒色でシンプルな装飾の腕輪だった。
「おー。いいアイテムかなー?」
「アクセサリーか。効果は?」
「えーっと『黒鉄の腕輪』耐久力を+2」
ダングルスがアイテムをタップし、効果を読み上げる。
「耐久かあ、魔力だったら貰ったのに」
「あ、私がもらってもいいー?防御上がったら反動ダメージ減るかもだし」
「いいぞ。ケイも使わないだろ?」
「まあ今一番それがいるのはサリだろうな」
そんなやりとりであっさりとサリミラの物になった。
その腕輪が、初級ダンジョンでトップクラスのレア物だと、彼らが知るのは先の話である。
ビギナーズラックでレアアイテムゲット。前衛職なら喉から手が出るほどほしいやつです。




