地雷を踏む
ゴブリン達の失敗は、サリミラではなく、クローベルを狙ったことだ。初期装備に外套のみ、近接に関しては土属性魔法しかないサリミラを狙っていれば、そのライフを大きく削ることができただろう。
ただ、回復職を狙うことは、作戦としては間違っていない。だが、クローベルは一般的な回復職のジョブ構成ではなかった。なんの躊躇いもなく杖を手放し、拳で迎撃する。すでにゴブリン2匹を同時に相手取るのは経験済みだ。
「『アタッカーブースト』!」
先の戦いで使った白魔法のスキルを今回も発動させる。
『アタッカーブースト』は一応、オリジナルスキルに分類される。一応、というのは、一定数のプレイヤーが使っており、オリジナルと呼ぶほどオリジナリティーが無いからだ。中身は単に筋力上昇の『パワーアップ』と、敏捷性上昇の『スピードアップ』を合わせただけのシンプルなものである。
実は杖を手放す前に使った方が効果が高いのだが、咄嗟にそこまでの判断をすることはできなかった。
「グギャ!?」
「グギギャー!?」
それでも、ゴブリン2匹程度を相手にするには十分な能力を発揮する。拳闘士特有の連撃により、1人で容易に2匹を押さえた。
隣にいたサリミラの判断も迅速だった。ゴブリン2匹に襲いかかられたクローベルを助けることなく、正面に向かって走り出す。拳が当たるほどの近距離で戦っているところに大口径の銃弾をお見舞いするわけにもいかないし、何よりクローベルには少しのダメージでゴブリン2匹を倒しきった実績がある。
そして、身を翻し向かう先にいるのはレッサーオーガだ。駆け寄りながら、まだ一度も撃っていない愛銃を背中から下ろす。
「どいてー!」
「「!!」」
その声と動きでレッサーオーガの命運を察したケイディアとダングルスは、素直に左右にわかれて道を譲り、そのまま両通路のゴブリンに挑む。
レッサーオーガの正面で腰だめに構えたサリミラはニヤリと笑う。実戦での記念すべき第一射だ。
「グオオォォォォォ!!」
「おりゃー!」
レッサーオーガの雄叫びに答えるように、気合いの入った掛け声と同時に引き金を引いた。その瞬間、
「うわっ!?」
「おおぅ!!」
「きゃぁ!?」
「わははー!」
遺跡が震えるほどの爆音が響いた。普通、こんな閉鎖空間、しかも近距離で対物ライフルをぶっ放そうものなら、周囲にいるものもただでは済まない。だがこの音は、爆音だと脳に錯覚させているだけなので、鼓膜が破れたり、痛めたりといった心配はない。ただ飛び上がるほどの音が心臓に悪いだけだ。
飛び出した弾丸は、レッサーオーガの首もとに当たり、断末魔の声を上げる暇もなくその上半身を消し飛ばした。
地雷を踏んだのはモンスター達でした。普通の初心者パーティ相手ならばもう少し頑張れたかもしれません。




