お散歩中のお嬢様
「……誰かいるぞ」
クエストに向けて林道を歩いていた一行だが、ホルテ遺跡のある丘の入り口、少し開けた地点で、1人の女性キャラが倒木に座っているのを発見した。キャラの見た目はケイディア達と同世代ぐらいだろうか。赤色の木の実を弄んでいる。
「PKでは無さそうだな」
「座ってるしなぁ」
「騙し討ちタイプのPKかもよ?」
「こんにちはー!」
ボソボソと3人で小声で相談しているにも関わらず、空気を読まないサリミラが声をかけた。相手はその声に顔を上げ、会釈で答える。
話しかけてしまったものは仕方がない、とダングルスも声をかけた。
「こんちわー。プレイヤーの方……っすかね?」
「こんにちは。そうですよ。皆さんはPKとかじゃないですよね?初期装備ですし……パーティのバランス悪くありませんか?」
女性はケイディア達の装備を見てそう言った。ゆっくりと上品な喋り方で、どこか清涼感のある声色だ。現在、クローベルは杖を装備している。杖を装備すると魔力が上昇し、MPの回復量に、ほんのわずかだが補正がかかるためだ。
「弓と銃に魔法使い2人……。縛りプレイですか?」
「いや、縛っては無いんすよ。偶然こうなっちゃっただけで」
「あらあら」
女性はうふふと笑い、持っていた木の実をしまうと、ゆっくりとした動作で立ち上がる。少しウェーブのかかった滑らかな金髪は、異国のお嬢様といった雰囲気だ。白いフードつきのローブから覗く装備は、近接職の初期装備のように見えた。
「申し遅れました。わたくし、クラリネと申します。以後お見知りおきを」
「ああ、どうも。俺はダングルス。一応このパーティのリーダーをしている」
「ケイディアです。えーと……よろしく」
「クローベルです。……キャラネームで自己紹介慣れないなあ」
「ベルちゃんもネトゲ続けてたらそのうち慣れるよー。私はサリミラー。ガンナーだよー」
「あ、サリ、ジョブ構成を話すのは控えたほうがいいぞ。生命線だからな」
「まあお前のは見りゃわかるけどな……」
ケイディア達は口々に自己紹介を終わらせる。
ジョブに関してはプレイヤーの生命線であり、初対面で聞き出したりするのは、あまりよろしくないらしい。
「ええ、よろしくね。……皆さんは何かクエストを受けて来られたのかしら?」
「はい。俺たちは討伐の依頼を。クラリネさんもですか?」
「いえ、わたくしはお散歩です」
ただのレベル上げですけれど、とクラリネは微笑む。
「そういえば、少し登ったところに遺跡がありましたね。あの遺跡ですか?」
「お、多分それだ。近いっすか?」
「ええ。わたくしは見ての通りソロなので、入るのは遠慮しましたけれど」
クラリネはここから見える山道を指差し、その道を進めば目的地にたどり着けることを教えてくれる。よしっ!と気合いを入れて屈んでいたサリミラが立ち上がった。
「じゃああと少し頑張ろー!」
「そうだな。それじゃ俺たちは行きますね」
「ええ。……あっ、そういえば、回復系のスキル持っている方はいらっしゃるのかしら?」
「あ、私が持ってますよ。白魔法」
「あら残念。辻ヒールでスキルレベルを上げるチャンスだと思いましたのに」
回復スキルは空撃ちも可能だが、回復させたほうが経験値の入りが良い。だが、体力は全快しているので気持ちだけ受け取っておく。
それではまたどこかで、とケイディア達とは別方向へ歩いていくクラリネを見送り、彼らは再び歩き出した。
「不思議な感じの人だったねー。高貴な産まれ!って感じだったー」
「あれもロールプレイなのかな?お嬢様キャラって何使って戦うんだろ?」
「イメージは魔法だけどな。防具は近接っぽかったけど」
「いや、俺はあえてお嬢様に大鎌とか持たせたいね」
そこからの道中は『お嬢様キャラに似合う武器』という話題で盛り上がったのだった。
第一村人発見!というタイトルにしようと思ったらすでにカマセーヌ様と遭遇していました。無念。
クラリネさんの口調はロールプレイですが、丁寧な話し方はもともとです。




