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第2話 過去



「昨日ぶりですわね!お姉様!!」


今日も妹のリアが私の屋敷へ来ました。

とっても笑顔なので、帰れとも言いにくく、そのまま通してしまいました.......。


そして今は、


「スレン殿下!お初にお目にかかります!」


「リーシェの妹のエルトリア嬢でしたか。初めまして」


「り、リーシェ??お姉様のこと、リーシェとお呼びになっているのですか?」


「夫婦になるのですから、愛称で呼ぶのは当たり前ですよ。」


「ず、ずるい.............。」




なぜ、こうなったのでしょうか。


スレンとリアはすぐに仲良くなったようで、たくさんお話されています。

私はというと、リアに好かれているのか、嫌われているかも分からないので見ているだけですが...。


リアとスレンが楽しそうに話しているのを見ていると、不意にリアと目が合いました。その目は、今までに見たこともないほど、冷ややかなものでした。




―――――――――





「わたくし、スレン殿下と2人きりで話したいですわ!」


彼女は急に、口を開いた。正直、僕は嫌だったか、リーシェから許可を出したため、僕とエルトリア嬢は隣の部屋に移動することになった。



「ふぅ、やっと2人になれましたわね。」


彼女は意味ありげにこちらに目をやる。


「2人じゃないと都合の良くないことが?」


「それはもう、都合が悪すぎますわ」


彼女は僕と2人きりになって、一体何を企んでいるのだろう。彼女をしばらく睨んでいると、彼女は囁くように、口を開いた。


「偽造と誘惑」


何の話だろうか。


「リトリシエお姉様の能力ですわ。」


「リトリシエの能力?」


「スレン殿下は魔力持ちでしょう?魔力を持っている人は、聖力からの干渉は受け付けませんの。」


「魔力?何の話だ。」


「貴方の人の思考を読む能力も魔力。そういった、聖力とは違う能力の事なのです。」


魔力.......?聞いた事のない単語だった。

それに、僕の能力を知っていて、しかもその能力が、リトリシエにもあっただと.......?


「何が目的だ?」


「嫌ですわ。わたくしはただ、リトリシエに復讐したいのです。それに協力して頂きたいのです。」


何を言っているんだ.......?復讐.........?


「君の姉じゃないのか.......?」


「姉ですわ。でもね、わたくし、許せないのです。わたくしが慕っているクラウシアと、中身を入れ替わるなんて。言語道断だと思いませんこと?それに、他にもあるのですが...。」


このことも知っているのか...。

彼女は、どこまで知っているのだろうか。

一見、何も考えていない、箱入り令嬢にしか見えない。それなのに今僕の目の前にいる彼女は思考がどこまでも深く、まるで、何年も先を見据えているようだった。


「スレン殿下、わたくしに協力してくださらない?」


「内容によるとしか言いようがないな。」


「そうですわね.....。では、わたくしの生い立ちから話しますわ!長くなりますが、よろしくて?」


「構わない。」


そうして、彼女は淡々と話し始めた。




◇◇◇◇



「彼女が今日からエルトリアの姉になるリトリシエだ。」


どうして、急に養子をとったのだろう。リトリシエと呼ばれた人は15歳くらいの女性でした。彼女からは、微かですが、聖力を感じます。


私は幼い頃から書物を読むのが好きで、なんとなく、聖力について知っています。


この世には、聖なる力である「聖力」、魔法の様な力である「魔力」の2種類が存在します。魔力は持って生まれる人は少なく、あまり知られていません。


私は魔力持ちです。能力は「他己分析」。

他人のステータスを可視化できます。

聖力や魔力の有無だけでなく、名前やその人の功績など、見たい情報はほとんど見れます。簡単に言えば、人物に関する辞書を持っているような感じです。


だから、一目見て気がつきました。



リトリシエ。この女は敵。




彼女が養子になってから半年。リトリシエの婚約が決まりました。実際なら、実の娘である私の婚約が最優先のはずです。なのに、なぜ彼女が1番なのか。なぜ誰も指摘しないのか。そして、何故、最近私が、この家には存在していないかのように扱われるのか。それが、彼女の能力に直結していたのです。


誘惑。相手の思考を惑わすことができる。


偽造。実際には存在しない事柄を捏造できる。


両方とも精神干渉の能力なのです。聖力は基本は加護。精神干渉の類いの能力持ちは異例。この世に数人存在するかどうかと言うレベルなのです。そして、このような能力を持った聖女のことを、魔女、や、堕天使なんて言い方をするそうです。過去にも何人か発見されたそうですが、誰もがろくな考えを持っていなかったそう。

つまり、彼女は、何かを企んでいる。そう考えるのが手っ取り早い。それに、そうでなければ、このサーヴェルト侯爵の養子になるなんて考えないわ。


とにかく、最も疑うべきはこの婚約。


そう思い、私は彼女について調べていきました。


そして、2ヶ月後。彼女の狙いは、ディオルド公子、スレン殿下と現王国聖女、クラウシア様だと言うことが分かりました。


クラウシア様とリトリシエは昔同じ孤児院で育ち、同じ時期に神殿に行った。そしてリトリシエは誰よりも、聖女の地位を望んだ。そして、国の聖女という地位を得ることが出来たら、昔一目惚れした公子、スレン殿下と結ばれると思っていたそう。なのに、その聖女という地位をクラウシア様に取られ、それに嫉妬している、という具合でしょう。だから、無理やり地位を確立し、スレン殿下と婚約して、せめて彼からは愛されたいと思っているのでしょう。


私は昔から、聖女であるクラウシア様をお慕いしておりました。私が初めてお忍びで城下町に出たとき、彼女と出会いました。私は身分を隠していましたが、そんなことは関係なく接してくれた彼女はとても優しく、すぐに彼女に惹かれました。彼女が何故、聖女と言われているのか、すぐに分かりました。


そんな聖女であるクラウシア様を狙うだなんて、私としては信じられないことでした。どうしても阻止したい。そう思っていました。


――それなのに。



◇◇◇



「聖女様!!!」

「今日も美しいですわ!!」


建国祭に来たクラウシア様は、リトリシエでした。

彼女を分析したら、昔のように「加護」とは出ず、「偽造、誘惑」と出たのです。


私はとある昔の書物にあった、禁呪である、「入れ替わり」というものを思い出しました。彼女はそれを使ったのでしょう。王国聖女となり、その上スレン殿下から愛情を向けられているクラウシア様に嫉妬して。

クラウシア様は、リトリシエが欲しかったもの全てを持って行ってしまったのです。



皆に手を振る彼女の仕草はまさに聖女クラウシアそのものでした。その仕草、その笑顔に、私は怒りが隠せませんでした。


その顔はお前のものじゃないのに。その地位も、その優しい聖力も、全部、全部、お前のものじゃないのに。


本当に、全てが憎たらしい。


私はその夜、私は王城に忍び込み、彼女の部屋に行きました。何か策がある訳ではありません。でも、私はどうしても許せなかったのです。今日、街で皆から優しい声をかけられている人の中身が、あんな女だなんて。それに、彼女が私の家に来てから、私はご飯もまともに与えられず、まるでリトリシエが実の娘で、私が養子のような生活になりました。それだけでなく、クラウシア様に.....。そう思うと、気が気で居られなくなったのです。一体、何人の人生をめちゃくちゃにしたら気が済むのでしょうか。

私は窓から、リトリシエの部屋に入りました。



「あら、エルトリア嬢。そんなところからいらして、どうしたのです?」


彼女はクラウシア様の顔で私に笑いかけました。


腹が立つ。


この女は、クラウシア様を、この国を、どれだけめちゃくちゃにしたいのだろう。


私は覚悟を決めて、息を吸いました。


「リトリシエ。お前は何がしたいの?」


私がそう言うと、彼女は顔を歪ませました。


「へぇ、貴方、どうしてその事を知っているのかしら。」


「言うわけないじゃない。」


「そう.......。でもね、私の秘密を知ってしまった人を生かしておくつもりは無いの。」


彼女はそう言うと、私の顎に手を触れました。


「どうやって死にたい?」


背中に悪寒が走りました。

人って、こんなに冷たい目をすることが出来るんだ。

そんなことを思っている場合ではないはずなのに、現実から目を背けなければいけないような状況でした。

それほどまでに、自分は無力なのだと実感させられました。


ガタッ


その時、部屋の隅から物音が聞こえました。


「誰かいるのかしら。」


彼女が部屋の隅へ行くと、そこから顔を覗かせたのは、リトリシエ、つまり、クラウシア様でした。


「あら、貴方も聞いてしまったの。じゃあ始末ね。」


彼女は平然とそう呟きます。彼女は人の心が無いのだなと思いました。


「リトリシエ様はなぜ.......。」


「あのねぇ、クラウシア様?私は貴方の地位と、スレン様が欲しいの。なのに、私の姿になったくせに、まだ私からスレン様を奪おうというの?あぁ、私は貴方のことずっと監視していたから、隠さなくてもいいのよ?とにかく、本当に邪魔なの。だから今殺してしまうわ。安心してちょうだい。サーヴェルト侯爵には娘は1人も居なかったと上書きしといてあげるから。」


そう言うと、彼女はクラウシア様の胸に短剣を突き刺しました。クラウシア様は小さな悲鳴をあげると、地面に崩れ落ちました。


「クラウシア様!!!」


私は叫びながらクラウシア様の傍に駆け寄ろうとしました。そのとき、私の胸に熱い感触がありました。

胸元を見ると、真っ白なドレスが赤く染まっていました。



あぁ、私も、この女に殺されたのだ。





薄れていく意識の中で、暖かい何かを感じました。


―――クラウシア様の聖力だ。


私は何故か直感でそう感じました。


『エルトリアさん。私の全てを捧げます。死に戻り、のようなものです。貴方にも辛い思いをさせてしまうかも知れません。ですがどうか。この国を救ってくださいませんか。』


そんな声が聞こえたと思ったら、目が覚めました。

起き上がると、そこは私の部屋で、胸に傷もありません。死に戻り.......。


私はすぐに屋敷を飛び出しました。



―――クラウシア様に合わなければ。





少し長くなってしまいましたが、読んで頂きありがとうございます!

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