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後宮の魔女〜輿入れした薬学魔法マニア妃は宮中を魔改造ならぬ魔法改造する〜  作者: 朱坂卿
第九症 野馬台の土蜘蛛遣錦使の大錦症候群と裏宮妖女の難産
35/40

#35 離宮攻め

「あなた……何でここに!?」


 私は目の前の狐之妖妃に、叫んだ。

 いや、だってしゃーがないでしょ?


 その狐之妖妃が今、長我麻呂に絡んでんだから!


「ふふふ……ならばどうする? そなたの薬学魔法とやらで此奴も救うか?」


 むっ、この人!

 私を挑発して来た!?


「言ったわね……さあ! 長我麻呂さんから離れなさい!」


 まあ我ながら、単純だけど!


 それこそ言われたからには、やってあげないことにはしゃーがないわね!


「見てなさい……玉帝有勅、神硯四方! 木精(シルフ)生木、捕妖魔! 急急如律令!」


 私は取り出した薬瓶から、薬を撒く。

 すると。


 たちどころに木が生え、それは狐之妖妃を捕らえ――


「ふふ……ははは! 何だ、舐められたものであるな!」

「くっ!? こ、これって!?」


 だけど、駄目みたいで。

 狐之妖妃は九尾を広げ、それでもって私が生やした木を薙ぎ倒した!


「そなたには失望したぞ、後宮魔女! ……まあよい。さあ、私の味わいしことなき薬を作り出してみよ! さもなくば……そなたに価値はない!」

「むう!」

「し、師匠!」


 狐之妖妃は、そう叫び。

 私に尾を向けて来たから、間一髪で躱したわ!


「狐之妖妃!」

「ふん、気安く呼ぶでない役立たず風情が! 未だに仙丹(エリキシル)も作れぬ身で、よくもそんな口を!」

「!? な、何ですって!?」


 だけど私は、聞き捨てならない言葉を聞いた。

 仙丹(エリキシル)


 ――なら、仙丹(エリキシル)があればどうかしら……?


「……やっぱり、あなただったのね! あの朴娘の時に私に思念を送って来たのも、サメールカンダイで錬金術の書を渡して来たのも!」


 私はそこで、ようやく確信を得た。

 そう、この狐之妖妃が。


 私に仙丹(エリキシル)を作るよう、唆して来た張本人!


「ははは、今更か!」

「あなた……何が目的なの!」

「ふん……愚か者め! 私は不死の薬を求める者ぞ、ならば」

「……不死身に、なることなのね!」

「ははは!」


 私の言葉に狐之妖妃は、肯定の笑いを返す。


「ああ、その通りよ……」

「なら! 何で後宮に妖魔の力送り込んで皆困らせるような真似するの! 大人しく不死の薬作らせていればいいでしょうが!」

「ははは、分からぬ奴め! そなたが不死の薬を作り上げるまで待つなど、如何な永き時を生きる私とて気が滅入ることよ!」


 な!

 何よお、人に不死の薬作るよう焚き付けておいてその言い草は!


「待たされるはもはや飽きた……しかし! そなたの薬に打ち勝つ力を我が僕を通し手に入れた、これは大いなる一歩よ! さあ……私に、薬を!」

「くっ……」

「し、師匠!」


 狐之妖妃に更に煽られる私だけど……困ったわ。

 こいつを倒せる薬なんて思い浮かばない!


 あーもう、どうすりゃいいのよ!


「ふん……手詰まりとはつくづく腰抜けめが! まあよい……さあ、そこの遣錦使! 言伝はしっかりと頼むぞ。」

「は……はい!」


 だけど狐之妖妃は。

 つまらなさそうにそう言うと、飛び上がって天井を突き破り消えてしまった。


 ◆◇


「まったく……狐之妖妃は何故この離宮(lígōng)などに?」

「分からぬが……とにかく待機せよとの、他ならぬ陛下のお言葉ぞ?」

「うむ……」


 その次の日。

 兵たちが陛下のご命令で向かったのは、最近できた離宮。


 何故陛下が、こんな所を守れと言ったかと言えば。

 話は、前の日に遡るわ。


 ◆◇


「何と……狐之妖妃――これまでの妖魔の頭目が、長我麻呂に!?」

「はっ、陛下……」


 前の日――狐之妖妃が長我麻呂を襲った夜。


 その長我麻呂の部屋にて。


 わざわざ叩き起こされてくれた陛下も、後宮魔女の格好の私と相見えているわ。


「くうう! き、狐之妖妃とやらが、私に言ったことが……」

「!? な、何!?」


 長我麻呂はそこで、そう言って来たわ。

 それって。


 ――さあ、そこの遣錦使! 言伝はしっかりと頼むぞ。


 狐之妖妃がああ言ってたこと?


「は、はい……次には。近々できたり、lígōngで待っていると……」


 lígōng――離宮?

 近々できた離宮に、狐之妖妃が?


「う……うわあああ!」

「! お、落ち着け朝献!」

「陛下、お離れください! 玉帝有勅、神硯四方! 夢幻之香使朝献夢想幸福之夢 急急如律令!」


 そこまで言うと、長我麻呂――朝献は取り乱してしまった。


 だから、私は応急処置として夢幻之香を焚き。

 長我麻呂を、眠らせた。


 ◆◇


「離宮……確かに妙ね。そこに何があるというのかしら?」

「師匠!」

「! あら……来たわね、去魔ちゃん!」


 そうして、今。

 私が自室で考えていると。


 いつも通りというべきか去魔の声が、壁越しに伝わって来た。


「では……去魔ちゃん。今夜は」

「ええ、行きましょう離宮へ!」


 私が話そうとしたら。

 去魔は分かっていますよとばかり、そう言って来たわ!


「まあ待ちなさい。離宮でもし狐之妖妃と戦いになったら、下手したら朝までにこの後宮に戻って来れないかもしれないのよ?」

「あ! そ、そう言えば……」


 うん、早とちりは止めなさい。

 そう、それなりに離れているからよ。


「だから……去魔ちゃん! あなたにはここで、また私の身代わりを演じてもらうわ。離宮には、私一人で行きます!」

「な! し、師匠! またそんな!」


 あらあら、随分ご不満な様子ね。


「何? 私じゃ、狐之妖妃相手には役不足かしら?」

「そ、そんなことは……だけど! また僕がお留守番ですか?」

「去魔ちゃん。」


 だけど私は、去魔に言って聞かせる。


 留守を守ってもらうことも大事なのよ去魔、私が今後も妃でいつづけて後宮を守り続けるにはね。


「むうう……また子供扱いされた気分です! 僕はいつもいつも」


 あらあら、まだご不満な様子。

 だけどどれだけゴネられても、しゃーがないのよ?


 だから、今はちょっとだけ我慢して欲しいわ。


 ◆◇


「ふう……もう、夜であるな。」

「ああ……このまま何も起こらねばよいが……」


 そうして、夜。

 衛兵たちは、いつにもなく離宮で神経を尖らせていた。


 ……だけど、その時。


「むう!? ……あ、熱い! あ、熱」

「な!? ど、どうしたのだ!? ……ぐああ!」


 突如衛兵たちのうち、二人が遭遇したのは!


「な、何じゃこれは……?」

「や、火傷?」


 背面から何やら当てられた攻撃により、鎧は溶け身体も焼け爛れてしまう謎の現象!


 これって、まさか……


「玉帝有勅、神硯四方! 木精(シルフ)生木、捕妖魔! 急急如律令!」

「!? な!」


 だけど、その時。


 私が離宮に駆けつけ、衛兵たちに見舞われた攻撃の出所――城壁の屋根の裏にいる土蜘蛛に薬を見舞った!


「こ、後宮魔女殿!」


 衛兵たちが、叫んだわ。

 ええ、そうよ。


 私が来たからには、もう大丈夫!

 ……と、言いたい所なんだけど。


「た、助けてくれい!」

「あ、熱い! 熱いい!」

「くっ……いつかと一緒ね!」


 私の目の前には、怪我人たちが呻いていて。


 更に、当然というべきかあの土蜘蛛にも逃げられちゃった!


「いきなりこの二つの壁とはね……でも、しゃーがないわ!」


 だけど私は、そこで気を引き締めた。

 そう、私は後宮魔女。


 宮中に蔓延る妖魔による病は、薬学魔法により治療させていただきます!


 ◆◇


「ふふ、よくぞ行ったな……さあて。我がlǐgōngにも、歓迎いたそう!」


 その頃。

 恐らく離宮の中と思われる所で、狐之妖妃は件の繭を見て高笑いしているけど。


 ん、lǐgōng?

 いやいや、lígōng――離宮の間違いでしょ?

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