凍らせた想い
クロエは伯母夫婦の家に着くと、伯父のブライアンに出迎えの抱擁をされた。
「クロエじゃないか!?私を覚えてるかい?」
クロエはしばらくブライアンの身体に身を埋めると、目を見てしっかりと頷いた。
「覚えてるわ、伯父さん。この家も。」
クロエは数年ぶりに訪れた家の内観を見回した。
よかった、特に変わったところはない。昔のログハウス風の家のままだ。クロエの様子をみたブライアンは懐かしそうに目を細めた。
「お前はよく木でできたロフトでくつろぐのが趣味だったな。今日からはいつでもくつろげるぞ。」
「じゃあ今日から私の部屋にしていい?私のために部屋を用意するのは大変でしょ。」
アンネがため息交じりに言った。
「それはいいけど、片付けを手伝っておくれ。最近整理してなかったと思うからガラクタだらけよ。」
ブライアンとクロエは即座に頷いた。
「僕も手伝うよ。」
「わかったわ。」
3人はロフトを片付けたあと、ロフトのデザインと夕飯の買い物に出かけた。ブライアンとクロエがロフトを飾りつけている際に、アンネがクロエのリクエストでピラフを作った。夕食を食べながら3人は会話を弾ませた。
「クロエ、あなたは人に恵まれたわね。あなたの面倒を見てくれたダイアンって人、彼は本当に良い人ね。」
クロエは即座に首を縦に強く振った。
「うん!ダイアンはとっても優しくて、とってもかっこよくて、とっても強い人なんだよ。」
ブライアンがやや呆れ気味に口を開いた。
「そんな絵に描いたような男がいたのか?そんなヤツが本当にいれば、どの女もイチコロじゃないか。」
アンネがブライアンに向かって口を開いた。
「今日、私は本人と会ったけど、本当に彫刻のように美しい顔をしていたわ。クロエ曰く、彼は日本人とのハーフみたいね。私がクロエだったら、あそこにいつまでもいたいって思っちゃう。」
それからアンネはクロエに向かって少しからかう口調で話しかけた。
「ひょっとして、ダイアンのことを好きになっちゃったりしてない?」
クロエは慌てて首を横に振った。
「本当にダイアンを好きになったなら、伯母さん達のところには来ないわ。」
と言うよりも、クロエは正解を言われてドキッとした。伯母さんの言う通り、私はダイアンの足手まといにならないよう本部を去った。ダイアンの言う通り、最近のリップオフは彼でも倒すのがやっとなくらいに強くなってきている。大好きな人の重荷にはなりたくない。というか、大好きな人を見てるのがこれ以上は辛い。ダイアンはまるでおとぎ話の中の王子様のように全てに魅力的な力がある。
ダイアンは最近、私を気にかけてくれる態度が慎重になってきた気がする。もしかして彼も私をそういう風に見ているからかな?
「どうした、クロエ?」
食事の手を止めた姪に異変があるのかと心配したブライアンが声をかけた。その声でクロエは理性を取り戻した。ダイアンへの想いを断ち切るためにここに来たはずだ。ダイアンへの想いを捨て去らなければ、彼の為にもならない。今日を境に、ダイアンのことは忘れよう。クロエは首を横に振って答えた。
「大丈夫よ、伯父さん。ただ考え事をしてただけ。」
この夜を境にクロエはダイアンに対する想いを凍結させた。しかし、それはすぐに溶かされることをクロエは知る由もなかった。




