果たせた再会
作業が終わって集まった4人はこれからの身の振り方を相談した。アルバートはクロエの話と自分の意見をまとめた。
「クロエの言ってることを優先したら、俺達はナックの方に行くべきだよな。」
マリーが不安がった。
「でも、さっきから無線が繋がらないわ。」
「私はさっき繋がらなかったのは一時的なものだと思ってたけど、今もってことは・・・・」
最悪の予想を口に出そうとしたクロエをエリザベートが遮った。
「そういうのは口に出さないで。もうわかってるでしょ?ナックはニッポンの戦地から帰ってこれたし、ダイアンと同じくらい強い。だから安心してここで待ってる方がいいと思うの。」
「エリザベート・・・・」
クロエは自分にたてた誓いを思い出した。
ナックを信じるとはこういう事だ。彼を信じているなら私は待たなければならない。
「あなたの言う通りね。私、ここで待つわ。」
クロエはナックの帰還を心から神に祈った。どうか無事でいて、ナック!
その頃、クロエの想いとは裏腹にナックは苦戦を強いられていた。リップオフは残すところあと5体になったが、今までの自分の攻撃で倒れなかったということは相当タフであることが推測され、おまけに自分の得意分野である銃の弾が全て尽きてしまった。白兵戦は苦手ではないが、今まで銃で闘っていたため、満足に立ち回れる気がしない。
いや、落ち着け。ナックはそう自分に言い聞かせると深く呼吸をした。今までの戦闘経験を思い出せ。これくらいのピンチは幾度となく切り開いて来た筈じゃないか。今回もいつも通りやればいいだけだ。
ナックはファインディングポーズをとると、一瞬でコンディションをベストの状態に整えて自分の側にいたリップオフに回し蹴りを喰らわせた。
「久しぶりにしては上出来だな。」
もう迷うことはない。ナックは2体目のリップオフにストレートを決めて一蹴し、殴りかかってきた3体目のパンチを避けてかかと落としで首を落とした。そして、4体目の顔にひざ蹴りを入れ、残った5体目の首にチョップを打ち込んでノックアウトさせた。
「これでクロエと合流できる。」
ナックは背中を向けてその場を離れようと歩き出した。すると、ものの数秒でチョップを決められたリップオフが起き上がり、ナックに飛びかかろうとした。すると、何かが飛んできてリップオフの首に刺さった。よく見てみると、ナイフが首を貫通しているのがわかった。
「言っただろ、泣きついても知らねーぞって。」
ナックはナイフを投げた犯人を見つけると顔をしかめた。
「お前には助けられたくなかったんだけどな、ダイアン。」
ダイアンはナックを一瞥すると、何も見なかったような素振りで辺りを警戒した。
「そう思うなら自分の力不足を嘆けよ。クロエに一人前ぶるのはまだ早いって言ってたけど、それはお前にも当てはまるってだけだろ。」
ナックはひきつった笑顔を浮かべてダイアンから目を背けた。それを無視してダイアンは他の仲間との合流を促した。
「まぁいい。残りのメンバーと合流するぞ。」
「・・・と言うわけで、俺はこうしてみんなに会えたってことだ。」
クロエ達がナックを待ち始めて数分後、ナックはダイアンとバージルと共に姿を見せた。驚くメンバーを宥めてナックは合流の経緯を説明した。説明が終わるや否、クロエはナックに抱きついた。
「心配してたのよ。よかった、無事でいて・・・よかった、また会えて。」
ナックは顔が赤くなるのを悟られまいとぎこちなく身体を動かして目線をクロエから少し背けた。
「別に、これくらいの修羅場は潜ってきたからそんなに心配しなくても平気だよ。でも、まぁ・・・ありがとう。」
ナックとクロエとは対照にダイアンは淡白に帰還を促した。
「ナックの言う通りだ。感動の再会は終わりにして、ここを離れるぞ。」
それを聞いた掃討班メンバーは返事をし、ナックはクロエから身を引いて車がある方角に足を向けた。
「了解。」
掃討班メンバーは帰路をたどって無事に本部に帰ることができた。。本部に戻ると、クロエはダイアンの後を追ってトレーニング室に入り、ダイアンに声をかけた。不機嫌そうな口調にダイアンは不思議に思いながらも返事をした。
「どうした?やけに機嫌が悪いな?」
「ナックに対するあなたの言動が気に入らなかったの。ちょっと言い過ぎなんじゃないの?」
「アイツにはいつもあんな感じだから気にするな。」
「そういう訳じゃなくて、いつもナックのことをどう思ってるかが聞きたいの。あなたはナックを信用してないの?」
それを聞いたダイアンは笑った。
「逆だよ。アイツが大事だからあんな風にするんだ。アイツは俺ほどじゃねぇが、腕はかなりのモノだし、俺以上に仲間思いだ。そんなヤツはみすみす死なせていいもんじゃない。邪険にすればアイツは俺に一泡吹かせようとしてもっと頑張って生き残ろうとするだろ。いわば愛情の裏返しだよ。」
クロエはいたたまれない気持ちになって、トレーニング室を後にした。
「じゃあね、ダイアン。また後で。」
ダイアンは少し首を傾げながらも手を軽く振った。
「もう行くのか。じゃ、またな。」
クロエは紅潮している顔を隠すために必死でうつむき、早足で歩いた。それを見かけたナックは怪訝になりながら、クロエと入れ違いでトレーニング室に入った。




