互いの決心
クロエの戦いぶりにナックは舌を巻いた。
「すげぇな、クロエ。これくらいの数なら俺の出番はないって訳か。」
「ええそうよ。私を信じて。」
「どうかな、まだそんな言葉を言うのは早い時期さ。」
すると、今度はクロエがナックに銃口を向けた。
「オイ、俺は味方だ。銃口を向ける相手が違う!」
クロエは構わず引き金を引いた。銃弾はナックの真上にいたリップオフを仕留め、撃ち落とすことに成功した。
「ダイアンの時と立場が逆転したわね。」
「訂正する。君は立派なカウガールだ。」
「でもまだまだ新米だから、ヘルプをよろしくね。」
「それは任せろ。俺の優先事項だ。おっと、向こうにリップオフが8体いる。掃討するぞ!」
「アイアイサー!」
2人は息を合わせて走った。リップオフとの戦闘は困ることなく、1人4体ずつ倒すことに成功した。
「1人で4体も相手できたなんて、随分成長したな。」
「みんなの戦い方とあなたの教えが大いに参考になったわ。ありがとう。」
すると、ナックの無線に連絡が入った。
「ダイアンか。そっちはどうだ?」
「後2体消せば終わる。そっちは平気か?」
「8体いたけど、クロエと倒した。今見渡す限り、リップオフは近くにいない。」
「ならアルバート達の方に行ってくれ。俺はバージルと後から向かう。」
「了解。」
ナックは無線を切ると、すぐに内容をクロエに伝えた。2人はすぐに歩き出し、ナックは無線でアルバートと話した。
「アルバート、そっちはどうだ?」
「ケガ人がチラホラいる。でも幸い重傷者はいなそうだ。」
「わかった。今向かう。」
ナックはすぐに内容をクロエに伝え、2人は歩く速度を速めた。
「深刻なことになってなくてよかった!思ったよりも今回は大丈夫そうね。」
「確かに、思ったよりも状況は安定してる。けど油断はできないぞ。世の中何が起こるかー」
ナックの言葉を遮るように前後左右から20体以上のリップオフが現れて2人を囲った。
「・・・わからないんだから。」
「嘘でしょ?!まだこんなにいたの?」
「おそらく増援だろう。あと報復も兼ねてるな。円状に俺達を囲ってリンチする気だ。」
「どうしよう、このままじゃ両方やられちゃう!」
「君を守るのを優先すると言っただろ。ここは俺に任せろ。」
「わかったわ。隙を突いて離脱しましょう。」
「俺の後ろを頼んだよ。逃げる前に数を減らさないとな。ヤツらが動いたら引き金を引くんだ。」
「わかった。」
クロエはナックに背を向けて銃口を目の前のリップオフに向けた。リップオフ達は怯むことなくそれぞれの顔を見合わせると、2人に迫っていった。
「今だ!」
ナックの叫び声と同時にクロエは引き金を引いた。無数の弾がリップオフの頭や身体を貫き、あるモノは倒れ、またあるモノは動きを止めた。
「今だ、クロエ。走れ!」
ナックの声を聞いたクロエはとっさにナックのいる方に走り出した。クロエはナックもついてくるものだと思って走る速度を落とさなかったが、クロエが胸騒ぎを覚えて振り返った時にはナックは1人円の真ん中に立って他のリップオフに銃撃を浴びせていた。
「そんな、ナック!早くそこから逃げて!」
「俺に構うな!ここは任せて早くアルバート達と合流しろ!」
「でも・・・・」
「頼むから行ってくれ。君じゃまだこの数の相手はできない。それに俺は君が傷つくのは見たくないんだよ。」
そう言うとナックは決意のこもった目でクロエを見つめた。こんな目をして私に言うということは、ナックは意地でも決心を変えないだろう。
「わかった・・・あとで会いましょう、ナック。絶対よ!」
ナックはしっかり頷くと、クロエに背を向けた。
それと同時にクロエは走った。振り返ることも速度を落とすこともなく息が続くまで走った。脇腹が悲鳴をあげて顔が火照ってきたころ、クロエは立ち止まって呼吸を整えた。そして、無線に連絡をした。お願いだから、誰かナックを助けて。誰か応答して。
クロエの思いとは裏腹に、無線は砂嵐の音を響かせるばかりだった。いつまでたっても人の声が聞こえてこないことに、クロエは軽い絶望を覚えたが、すぐに気を引き締めて歩き出した。ナックなら大丈夫だ。ダイアンに比べれば戦闘力ははるかに劣るが、その辺の敵にやられたりなんかしない。私を鍛えてくれた人が死んだりなんかしない。信じるんだ。私が信じてと言ったように。
クロエは一歩一歩を踏みしめて走り出した。先程の全力疾走のおかげか、5分と経たないうちにアルバート達の姿を見つけた。今、自分にできることをやるんだ!クロエはアルバート達の作業を全力で手伝った。




