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American Dianthus  作者: nacchan725
距離の違い
65/70

慎重なカウボーイ

「ただいまー!」

クロエは誰に言うわけでもなく叫ぶと、ソファの背もたれに全身を委ねて座り込んだ。クロエの声を聞きつけたダイアンがリビングに現れて出迎えた。

「お帰り。デートの割には早く帰ってき過ぎじゃないか?まだ4時にもなってないぞ。」

クロエはダラダラと首を横に振った。

「十分楽しんだから平気よ。ダイアンは今日どうだった?」

ルーティンを行なっていただけという自分の生活の殺風景さにダイアンは一瞬言葉につかえながらもとりあえず報告した。

「どうって・・・ひたすら体調を整えてたよ。今日はリップオフの襲撃はなかったからな。3時間後に夕食の支度ができるから、ダイニングに来い。」

「わかった。」

クロエは自分の部屋に向かった。姿が見えなくなると、ダイアンはナックに話しかけた。

「今日クロエとデートしてたんだよな?手ごたえはどうだった?」

ナックは力なくボソりと口にした。

「わからない。」

今日は絶対成功したとナックは本当に信じたかった。クロエをコイツに盗られるわけにはいかない。今は彼女以外の女性には何の魅力も感じていない。絶対にダイアンなんかのモノにはさせない。すると、ダイアンが眉間にシワを寄せて睨みつけてきた。

「なんで俺を睨む?いつまでここにいさせるんだ、部屋に戻らせてもらうぞ。」

思いが顔に出てしまったらしく、ナックは慌てて表情をほぐし、ポーカーフェイスを作った。何から何までカッコつけて好かないヤツめ。

「別に拘束してるわけじゃないし、好きにしろよ。」

ナックがリビングを出ようとすると、ダイアンの無線に連絡がリップオフ襲撃の連絡が入った。

内容を聞き取ったナックはダイアンに掃討班メンバーを招集ことを伝えながらリビングを早足で去った。

「今のは全部聞いた。みんなを呼んでくる!」

ダイアンは即座に頷いた。

「俺は戦闘準備ができてるから、車を出してくる。」

2人はすぐ散会して自分のすべき事を果たした。

全員が集まると、ダイアンはざっと目を通しただけですぐ車に乗るよう指示した。全員の乗車を確認すると、ダイアンはすぐにアクセルを踏み込んで車を発進させ、車内でこれから向かう場所の状況を伝えた。

「今回のヤツらは数が多いらしい。散り散りになれば数の差に負けて誰かがやられるかもしれない、だから今回は全員で固まって動くぞ。」

「了解!」

現場に着くと、掃討班メンバーは車から降りてダイアンを中心に全員でリップオフが集まっている方に走っていった。警察はまだ充分に来ていないらしく、恐怖を露わにして逃げ惑う人々があちこちに見えた。リップオフの数を調べる為にダイアンが双眼鏡で覗くと、少なくとも20体以上のリップオフの姿を見つけた。

「戦闘に自信が無いヤツはパニックになってる人間の救助を優先してくれ。今回はあまりにも数が多いから、下手に動いたら死人が出ると思う。」

マリーは救助を専念することを伝えた。

「じゃあ私はそっちにするわ。」

アルバートとエリザベートも続いた。

「俺もそうする。」

「私も救助を優先する。」

ダイアンは2人に向かって強く頷いた。

「3人とも、頼んだぞ。」

各メンバーは散開して行動を開始した。

ダイアン、ナック、クロエ、バージルの4人はリップオフが集中している箇所へ走っていった。

「先陣は俺が取る!」

ダイアンはそう叫ぶと、走る速度を速めてリップオフの間合いに入り、勢いに任せて素早くナイフに手をかけてリップオフの首元に太刀筋を入れた。それを皮切りに、ダイアンは近くにいるリップオフを次々と斬りつけていった。

バージルが感心して呟いた。

「相変わらず大胆だな、ダイアンは。」

対照的にナックは軽くぼやいた。

「俺達はアイツに近づいてくるリップオフを倒せばいいんじゃないか?そうすれば、あの暴れ馬が勝手に掃除してくれるんだ。」

「ナックの言う通りね。ダイアンも敵を倒しやすくなるわ。」

クロエ達は銃を軽く点検して照準をダイアンの遠くにいるリップオフに合わせた。

「1、2、撃て!」

ナックの号令に合わせてクロエとバージルは引き金を引いた。数多の銃弾が寸分の狂いもなくリップオフの身体を撃ち抜き、多くのリップオフを地にひれ伏させた。それを見たダイアンは舌を巻いて賞賛した。

「やるなお前ら。今ので10体以上死んだぞ。」

「俺らも参加する。お前はひたすらナイフを振り回しときゃいい。」

「後で泣きついてもしらねーぞ。」

するとナックはいきなり目つきを鋭くさせて銃口をダイアンに向けた。ダイアンは目を見開いて両手を肩まで引き上げた。

「ジョークだ、そんなムキになるなよ。」

ナックはダイアンの弁明を無視して引き金を引いた。ダイアンは銃口を必死に見切って避け、銃弾はダイアンの背後にいたリップオフに命中した。

「リップオフが俺の真後ろを狙っていたのか。よく気づいたな。」

「言っただろ、お前は暴れときゃいいって。」

口にするのは照れくさかったので、ダイアンは心の中でナックに拍手を送った。

「そっちはお前の判断に任せた。」

ナックは即座に頷いた。

「任せとけ。」

その言葉を最後に、ダイアンとナックはお互いに背中を向けてそれぞれの方向に走り出した。

クロエはナックの後を追いながら、改めて彼に尊敬の念を抱いた。ナックは日常生活では少し頼りない・・・いや、正直頼りないと言うよりはダイアンと比べると魅力が欠けるけど、こういう正念場ではかなり頼もしい男の人だ。こんな人に私は好かれていたのか。私はこの人の力になりたい。

すると、ナックが前方を指差して叫んだ。

「前方にリップオフが3体いる。警戒しろ!」

「私が倒す!ナックは見てて。」

クロエはまず狙いを1番前にいるリップオフの脚に定め、コンディションを整えて撃った。弾はリップオフの脚を貫通し、撃たれたリップオフは他の2体もろとも将棋倒しになった。下敷きになったリップオフは他の2体を押しのけて起き上がろうと顔を上げたところ、クロエは再度引き金を引いて葬った。そしてナックから教わった銃の使い方を忠実に活かして残ったリップオフを倒してしまった。


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