素早いヘルプ
2人は20体ほどのリップオフと交戦しているアルバート達を見つけた。苦戦と言うほど戦況は緊迫してないが、放っておけば怪我を負う可能性がある。一番そうなる可能性があるのはマリーだ。
ダイアンはマリーの方に走ると、顔をクロエの方に向けた。
「俺はマリーを援護する。お前は後の2人を頼む!」
クロエは頷くと、アルバートの方へ走り出した。
ダイアンはマリーの一番近くにいたリップオフにデザートイーグルを2発浴びせて倒すと、マリーの手を引いて自分の背後に立たせた。
「ありがとう、ダイアン。助かったわ。」
「お前は後ろのヤツをやってくれ。」
「わかった。そんなにいないから、すぐ終わらせるわ。」
ダイアンは剣の柄に手をかけて腰を落とすと、連続の居合い斬りでリップオフを8体斬り刻んだ。手ごたえを感じたダイアンはマリーに声をかけた。
「終わったぞ。そっちは平気か?」
「もう倒したの?!流石ね。こっちは大丈夫よ。」
「なら3人を見て来る。」
ダイアンはアルバート達の加勢に向かうべく、ウォッチハンターからワイヤーを出して軽やかに飛んで行った。マリーはその姿を見送ると、残り2体となったリップオフに銃弾を4発浴びせた。1発目は外れ、3発目は効果が薄かったが、倒すことに成功した。マリーはダイアンのいる方へ行こうと、ダイアンが倒したリップオフの近くを通った。すると、倒れていたリップオフが5体動き出し、マリーを取り囲んだ。マリーは高確率の敗北を察して叫んだ。
「ウソ、まだこんなに生きてるの?!誰か助けて!」
一方、ダイアンはアルバート達の元に駆けつけ、リップオフの相手をしていた。殆どが銃を使い、コンビで戦ったこともあってか、リップオフの数は少しずつ確実に減っていった。
4人の心に少し余裕ができ、ダイアンのアイコンタクトで一斉に銃を撃とうとした途端、マリーの悲鳴が聞こえた。4人が見ると、5体のリップオフに囲まれているマリーの姿が見えた。
「まだ生きてんのか?!」
アルバートはダイアンに救助を提案した。
「ここは俺達に任せて、早くマリーの元に向かってやれ。」
ダイアンはその言葉を聞くや否や、ワイヤーを使って宙を舞うように向かった。マリーは抵抗しようと銃の引き金を引いたが、弾切れになっていた。リロードする時間はない。ナイフを持っているが、マリーはどちらかといえば銃の扱いの方が上だ。マリーは間合いを詰められ、とうとう見渡す限りリップオフしか見えなくなってしまった。
体が震え始め、目の前にある死に恐怖を覚えた。
マリーは悲鳴をあげて目をつぶり、体をできるだけ縮めた。リップオフはそれをあざ笑うようにマリーに飛びかった。しかし、間一髪で到着したダイアンがマリーを両手で抱えて空中に逃げた。風を切る音と突如感じた温もりにマリーは目を開け、助かったことに喜びを感じた。
「ダイアンありがとう!来てくれて!」
「倒せたと思ったんだけどな。すぐ全滅させるからチャラにしてくれ。」
ダイアンは下にいるリップオフを睨むと、ウォッチハンターからワイヤーを出して下りようとした。すると、リップオフは地面にめり込む勢いで腰を落とすと、空中にいる2人に向かって飛びかかった。予想外の行動をとられたダイアンは目を見開いて動揺した。
「は?こんなの聞いてねぇぞ!」
マリーは震えながらダイアンに抱きついた。
「どうしよう!このままじゃどっちも死んじゃう!」
ダイアンは必死で頭を動かして助かる方法を考えた。そして、作戦を思いついた。
「作戦を考えた。荒くなるが、勘弁してくれ。」
「どんなの?荒くなるってどういうこと?」
「こういうこと。」
ダイアンは両手に力を込めると、マリーを空高く放り投げた。その後すぐにダイアンはワイヤーを巻き取ると、地上に降り立った。マリーはダイアンの行動の訳がわからずに叫んだ、
「えっ・・・ウソ!どういうこと?!」
「数秒の辛抱だ!耐えろ!」
ダイアンはまだ空中にいるリップオフのうちの一体にワイヤーを放った。ワイヤーはリップオフの体に命中し、リップオフは重力に逆らえずに無理矢理地上に落とされる羽目になった。ダイアンはワイヤーを抜くと、剣の柄に手をかけて構え、今度こそリップオフの首を落とすことに成功した。いきなり仲間を葬られたリップオフは地面に降り、ダイアンに飛びかかった。
ダイアンは怯むどころか、刃を向けて突進していった。今度こそ、息の根を止めなければならない。その想いが恐怖を払いのけ、急所に的確な攻撃を与えることに成功させた。4体のリップオフはダイアンの斬撃の洗礼を受け、動かぬモノとなった。
「作戦成功だな。」
ダイアンは上を見上げて、マリーが落ちてくる方に走ると、両手を広げてマリーを抱きとめた。
「言っただろ?荒くなるけど許してくれって。」
「びっくりさせないでよ・・・」
マリーはダイアンの胸元に顔を埋めた。ダイアンは一瞬マリーの頭を優しく撫でると、素早く引き離した。
「それをやるのは後だ。俺は他のメンバーの方に行かなくちゃいけない。」
その言葉を待っていたかのように、無線にナックからの連絡が入った。
「今すぐ来てくれ!エリザベートが大変なんだ!」
「何だと?すぐ行く!」
ダイアンはゆっくりマリーを下ろすと、すぐその場を離れようとしたが、マリーが慌てて腕を掴んで止めた。
「待って!私も行く!」
ダイアンは素早く首を横に振った。
「アルバート達と一緒に車の中にいろ!ここは予想を上回る戦場だ、来れば危険が倍増する!車のキーを渡すから、クロエに届けてくれ。」
ダイアンは車のキーを渡すと、マリーの背中を軽く抱いた。
「退路を確保すんのも重要な役割だ。もし俺が行ってエリザベートを助けられても、リップオフに囲まれてちゃ意味ねえ。そうならないように、頼んだぞ。」
「うん・・・」
マリーはキーを握りしめると、クロエのいる方へ足を進めた。ダイアンはその姿を一瞥すると、エリザベートとナックのいる方へ走り出した。しばらくすると、ダイアンはナックの姿を見つけた。しかし、エリザベートの姿はナックの近くにはなかった。
「ナック!エリザベートはどうした?!」
「下だ!どかすのを手伝ってくれ!」
ダイアンは怪訝に思って下の方を見ると、ナックの近くに大きな瓦礫があり、その近くにエリザベートと思われる女性が横たわっていた。下半身を挟まれたのだろう、身動きがとれない状態だった。
「エリザベートがこうなってどれくらいになる?」
「3分程だ。幸い、瓦礫の下敷きになっているだけだが、瓦礫がかなり重くてどかせない。」
ダイアンは瓦礫をひとしきり触ってみたが、持ち手となるような脆い部分はなく、木の枝一本も挟む隙間もない大きなコンクリートがエリザベートの足を圧迫していた。
「どかせないんなら、壊すしかないな。」
ナックは怪訝に思って尋ねた。
「どうやるんだ?武器は使えないぞ。下手したらエリザベートを傷つける可能性がある。」
「今ヒントを言ってくれたじゃないか。拳しかないだろ。」
ダイアンは真上に跳ぶと、両手を握りしめて思い切り引いた。そして、魚を狙うカワセミのように、エリザベートの上のコンクリートを睨むと、落ちる時にかかる重力に身を委ね、地面に着く瞬間に山突きを放った。中央を中心に、コンクリートに深いヒビが入り、コンクリートのかけらが崩れて瓦解していった。ダイアンは地面に下りると、瓦礫を払いのけながらエリザベートの側に立った。
「エリザベート!大丈夫か?!」




