勝利の兆し
攻撃を受けたカーティスは後ずさり、うめき声をあげた。ナックは自分のデザートイーグルを取り出すと、左手に持って銃口をカーティスに向けた。
「悪いけど、容赦しないぜ。クロエとのデートがいつまでたっても再開できないからな。それに、今までの攻撃は間違いなく蓄積されてる。直にお前は負ける!」
ナックは2つのデザートイーグルから弾を連射した。放たれた弾は頭や胴体、足などを貫通し、カーティスは痛みに耐えれずのたうち回った。
「これで終わりだ!」
ナックはヘッドショットをカーティスの頭に撃ち込んだ。
弾はカーティスの頭を貫通し、向こう側の景色がわかる程の穴を開けた。カーティスはそのまま地面に突っ伏し、動かなくなった。ナックはクロエを呼ぶと、自分の後ろに立たせてカーティスの方へ近づき、脈をとった。
「さすがに、もう起き上がらないよ。これで大丈夫。クロエ、ダイアンを起こしに行ってくれ。」
「わかった。良かったわ、倒せて。」
クロエはすぐにダイアンの元へ走った。安全を確信したナックは少しほほえむと、改めてカーティスを見やった。
「なんだったんだコイツは?間違いなくペットのワニだったのに、急に凶暴になりやがって。」
それはナックだけでなく、カーティスが凶暴化したのを目撃した全員が思ったことだろう。実際、暴れる前のカーティスは本当に大人しく、カーティスの近くにいた全員がカーティスに近づいていた。ワニをペットにするという話題は聞いたことはあったが、いざ目の前で見たワニの従順さと、飼い主の愛には驚かずにはいられなかった。
そんなワニがどうしてこんなことになったのだろうか。ナックは一旦ため息をついて悲しみを外に追い出すと、推測を再開した。あの暴れ方といい、回復の早さといい、リップオフに通ずるものがある。でも、普段相手にしてる奴よりもいささか渋どかった気がする。それに傷つけられるたびにコイツは身体や運動能力のレベルが上がっていった。・・・ひょっとしてコイツは!
最悪な仮定が頭をよぎったナック青い顔をしてカーティスを見つめた。カーティスは頭の傷を再生させるとゆっくり目を開けて鎌首をもたげて脚に力を込めた。ナックは阻止しようと引き金を引いたが、カチカチと乾いた音が響くだけだった。
「弾切れか!」
ナックは自分のデザートイーグルを慌てて取り出すと、引き金を引いて弾をカーティスに撃ち込んだ。しかし、弾は豆粒のように跳ね返った。
「マジかよ、デザートイーグルでこんなじゃコイツは殺せない!」
ナックの攻撃を物ともしないカーティスは、クロエに狙いをつけると、地面を蹴って飛びかかった。
ナックは急いでクロエのいる方へ走った。
数分前、走っていたクロエはナックの銃声を聞いて動きを止めた。振り返ると、ナックが倒した筈のカーティスに銃を放ったのだ。もし、コイツに捕まったら勝ち目はない。防衛本能が全力で警鐘を鳴らし、クロエに戦闘準備をするよう命じた。
クロエはナイフを取り出すと、いつでも振り回せるようにした。こんな武器で倒せる訳はないが、丸腰よりはマシだ。何もせずに怯えるよりはマシだ。早くダイアンを起こさないと、ダイアンまでやられる!クロエは改めて全力疾走をしてダイアンの方へ向かっていった。すると、後ろからナックの叫び声が聞こえた。振り返ると、ナックがこちらに走っていた。クロエは叫んでナックに尋ねた。
「ナック、何があったの?」
「警戒しろ!今、カーティスがそっちに飛んだぞ!」
「えっ?!」
予想外の発言に、クロエは上を中心に辺りを警戒したがワニらしき影も形も見えなかった。一体、どこに消えたの!?天を仰いで不満をぶつけたその時、磨きぬかれたナイフの様に鋭い歯の山が目の前に広がった。
「そんな・・・」
警戒していた場所から、数秒見ていた所から現れた敵に驚きを隠せず、絶望の声が漏れる。
もう、何もできない。鱗のようにギラついた歯が、クロエに迫っていった。その時だった。
「そんなこと、させるか!」
ナックはそう叫ぶとクロエを安全な方へ突き飛ばして身代わりとなった。カーティスの鋭くとがった歯が容赦なくナックの足に食い込み、皮膚と肉の裂ける音が響いた。
「うぁああああっ!」
ナックの阿鼻叫喚の悲鳴を聞いたクロエはすぐに立ち上がり、カーティス目掛けてナイフを振るった。
「ナックから離れろ!」
クロエの一撃はカーティスの目に命中し、カーティスは口を離した。クロエはすぐナックに駆け寄り、治療しようとしたがナックは手を横に振った。
「今はダイアンが先だ。ここにいたら2人共やられる。」
「わかってる。でもあなたの方が危ないし、命の恩人なのよ!」
クロエはカーティスを睨むと、ナイフの切っ先を向けた。
「ナックには指一本触れさせない!刺し違える覚悟で、お前を倒す!」
すると、聞き慣れた声がその行動を即座に否定した。
「そんなこと、させねぇよ。」
その直後に何かが貫通する音が辺りに響いた。
クロエは自分達を助けた人の姿を見つけて名を叫んだ。
「ダイアン!!」
ダイアンは少しよろめきながらも、2人の方に歩きながら言った。
「待たせたな。次で本当に終わる。」




