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American Dianthus  作者: nacchan725
気になる人は魅力の権化
30/70

草の根を嗅ぎ分けても

クリスは人気のない倉庫に身を隠していた。彼はJRS本部から脱出した後、人気のないところを求めてずっと歩き回っていた。やっと見つけた倉庫は繁華街から数十キロも離れており、監視カメラがあったものの、一つしかなく、おまけに老朽化していた為、壊すのに時間はかからなかった。クリスは入り口に4体、倉庫内に3体のリップオフを生み出して巡回するように命令した。ようやく安息の地を見つけたクリスは、乱雑に積み上げられたゴミ山の椅子に腰掛けて、保障された安全と、勝利の愉悦に、喜びのあまり身を震わしていた。誰もが羨む力を手に入れて、最強と謳われる敵を戦闘不能にさせて、心を折ったのだ。当分立ち上がれないだろう。少し、腹が減ってきたな。繁華街で食糧調達でもするか。

クリスが椅子から飛び降りて着地した瞬間、入り口から銃声が4回聞こえた。

「まさか、もうバレたのか?」

クリスが慌てて入り口へ走ると、4体のリップオフが全滅していた。検死のため体をまさぐっていると、体に穴が空いているのを全部の個体から発見した。死因はさっきの銃声といい、熟練に至近距離で撃たれたものだろう。リップオフの近くに薬莢が落ちてたので、クリスは拾って調べた。そこで犯行に使われた銃の威力がそんなに高くないことに気づいた。形状からしてマグナム弾だろうと推測できる。殺傷能力の高くない銃でもこうして敵を殺せる人物を、クリスは2人知っていた。1人は─クリスの思考は3発の銃声によって停止せざるを得なくなった。倉庫内に駆け込むと、3体のリップオフの亡骸を発見した。

「1人はナック。元米軍のヒーロースナイパーなら、このくらいザルだろ。もう1人は──」

銃を使うところはあまり見なかったが、使わざるを得なかった時に撃ちまくっていたあの正確さはあまりにも現実離れしていたので、変な笑みがこぼれたのを覚えている。クリスは自分が座っていた椅子に腰掛けている敵の方を向いて話しかけた。

「来るのは当然か。お前が俺の駒を全滅させたんだろう?ダイアン。」

「ご名答。」

ダイアンは目を鷹のようにギラつかせながら、引き金を引こうとした。クリスは冷静にダイアンの銃の構造を述べた。

「通常、拳銃の弾はだいたい10発だよな。リップオフを全滅させるために7発使ったんだ。たった3発で俺が殺せるとでも?」

今度はダイアンが淡々と述べた。

「心配しなくても、すぐあの世に送るよ。それに、3発には意味がある。俺と、母さんと、ヴィンディッシュの痛みの分だ!」

「ほざけ!残り3発で、そんな下らない予言で俺が倒せるか!」

ダイアンはクリスの荒ぶった口調を軽くあしらった。

「そうじゃなきゃ、ここにいねえよ。この辺りで人気が全く無い所なんてここくらいしかねぇからな。俺の言葉を“予言”だなんて言うなんて、ほんとは俺に殺されることを怖がってるんじゃねぇのか?」

クリスはため息交じりに答えた。

「アドレナリン過剰分泌者の言動の何を恐れる必要がある?患者はおとなしく、医者のメスを受け入れろ。」

「どうかな。俺の銃弾がお前に食い込むのが先か、お前が俺をかっさばくのが先か、その行く末は・・・」

「その行く末は─」

もう、何もわからない。2人はそれぞれの防衛本能に身を委ね、どちらからともなく言葉を口にした。

「神のみぞ知る。」

言い終わったと同時に、2人は目の前の敵の懐に飛び込み、攻撃を浴びせる。だが、2人の速さ、考えは同じだったようで、拳と拳が交わり、互いの肩口に衝撃が走る。常人離れした動きにクリスは引きつった笑みを隠さずにダイアンを茶化した。

「負傷者とは思えないパンチの威力だな。それ以上は止めとけ。医者の言うことは聞いておいた方が身のためだ。」

ダイアンも負けじとフランクな口調で話した。

「そっちこそ、元同じメンバーとは思えない程、敵意剥き出しじゃないか。いや、お前はもともと別の組織の人間か?」

「敵に情報を渡す程、愚かなことはない。知りたきゃ自分で調べろ。」

「正論だな。悪かったよ、すぐに引き上げるから、とっととこの世(ここ)からいなくなってくれないかな!!」

ダイアンはスライディンクし、素早くマグナムを先程殴ったクリスの肩口と大腿骨にに撃ち込んだ。弾はどちらも貫通し、肉を切り裂く音が倉庫内に響き渡った。リップオフ化して治りが早いとはいえ、さすがにクリスも顔をしかめた。ダイアンは勝利を確信し、止めをさそうと心臓に銃口を突きつけた。

「遺言くらいは聞いてやるよ。」

クリスは笑みを浮かべた。

「サイレンサーをとらなくていいのか?」

ダイアンは一瞬、目を見開いた。

クリスはダイアンの反応を無視して話を続けた。

「銃声に違和感があったんで、不思議に思ってたが、撃たれたことで謎が解けた。恨み節を喚いてる割にはかなり計画的に準備しているな。」

「お見通しって訳か。なら、お望み通りに、あの世へ送ってやるよ。」

ダイアンはサイレンサーを外すと、指を引き金にかけた。

「本当に、最期に残す言葉は?」

「先に死出の旅を迎えよう。」

ダイアンは引き金を引いた。銃弾が、クリスの心臓目掛けて迷いなく発射された。

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