親子の真実
今度はアイリスが涙目になって必死にダイアンを止めた。
「待って、待ちなさい!ダイアン!!」
アイリスの制止を聞かず、ダイアンは戻ってくることはなかった。
「あの子の言う通りよ。私には叩く権利はないわ。」
肩を落として椅子に座りこむアンネをリビングにいるメンバー全員が取り囲み、励ましたり質問したりした。
最初にアルバートが困惑した顔で話しかけた。
「ダイアンにあんなに怒るなんて珍しいですね。どうしたんですか?よほどダイアンを愛しているんですね。」
バージルが優しく話しかけた。
「危なかったけど、ダイアンが帰ってきてよかったじゃないですか。すぐ戻ってきますよ。」
いつも凛々しい長官のしおれた姿を見てマリーが呟いた。
「こんなアイリスさん、初めて見ました。大丈夫ですよ、ダイアンの頭が冷えるまで待ちましょう。」
クロエはアイリスの背中をさすった。
「そう気を落とさないで下さい。」
アイリスは優しく全員に微笑んだ。
「みんな、ありがとう─って、ヴィンディッシュ、まだ寝てないと駄目よ!」
アイリスが驚いて見ている先にはエリザベートとクリスに支えられて椅子に座ろうとしてるヴィンディッシュの姿だった。
ヴィンディッシュは少しぎこちない笑みを浮かべて答えた。
「ダイアンが、帰ってきたと聞いたので・・・」
アイリスはため息をついた。
「生憎、ダイアンは気分を害してここにはいないわ。」
ナックがしびれを切らして軽くまくし立てた。
「アイリスさん、話して下さい!!お2人に何があったのかを。俺達はそれを知る必要があります!」
アイリスは再びため息をついた。
「・・もう隠せないわね。まず、私が夫、ダイアンの父親と出会った時からね。私は若い頃、CIAの諜報員だったの。夫と出会ったのは潜入先の会社のパーティーでだった。日本人にしては社交的で、良く気の利く行動をとっていたから、印象は良かったわ。私がCIAだということがその会社にバレてピンチに陥った時、彼は私を助けてくれたの。そして、CIAを続けて構わないから結婚してニッポンで暮らそうと言ったの。
心から幸せを感じたわ。ダイアンが生まれるまでは。あの子が生まれた時、私と夫はダイアンの育て方でけんかしたの。夫は武士の家系に生まれたから強く、凛々しく育てないととしかずっと言わなかったから、離婚届を出して、ダイアンを連れてアメリカに帰ったの。実家で3年程育てていたんだけど、いきなり夫が来てダイアンを返すよう言ってきたわ。このままじゃ家に跡取りがいなくなってしまう、再婚する気はないから返して欲しいとのことだったの。そんなことなら再婚した方が手っ取り早いと思ったし、そんな理由で自分の子を手放したくなかったから、夫を相手に裁判を起こしたの。でも、夫の強い財力と権力の前に、ズタズタにされたわ。親権を奪われ、ダイアンを取られた私は、取り替えそうと夫の元へ何度も行ったけど、いつも門前払いを受けたわ。あの子があんな風にいうのも無理ないわ。母親らしいことを何一つ出来なかったし、あの子が私を恋しがってる時に、そばにいてやれなかったもの。」
話し終わるとアイリスは言うことはない、とでも言うように黙った。




