謎多きリーダー
ナックの物騒な発言に、クロエは戸惑いつつも質問した。
「アイツって、ダイアンのこと?」
「ああ。最近来たにしても素性が分からなすぎる。リーダーぶらないし、仲間思いだけど、どこか一線をひいてるんだよな。」
「ダイアンはここに来てどれくらいなの?」
「まだ1ヶ月だ。」
思わずクロエは声を裏返らせた。
「1ヶ月?!それでリーダーって、スピード出世にしても早すぎるわ!!」
「どんなコネがあるかと思ったけど、アンネさんしかそういう繋がりがないようだったな。それに、あの強さは異常だよ。掃討班最強だ。俺と他の掃討班メンバーが全員相手にしても、アイツは倒せなかった。」
クロエは裏返った声のまま、今度は目を見開いた。
「ダイアンは、ここに入る前から強かったんだ。ダイアンが強いのはわかったけど、なんで掃討班メンバー全員で相手をしたの?」
「アイツを掃討班メンバーとして迎えた時、アイツの強さがどれくらいのものかみんなで知りたくなったんだ。俺は確実にアイツは今まで見てきた中で強いと思ったし、自分1人で倒せるかどうか不安になった。それで残りのメンバー全員で相手にしたけど、全く歯が立たなかったんだ。 アイツについて分かることは、めちゃくちゃ強いということだけさ。そもそも、基本的な素性から怪しいしな。どんな風に育ったのかも、男か女かも。」
「ダイアンは男じゃないの?!」
「男らしくも、女らしくも見える顔だちじゃないか?性別がどっちかは断言できないけど。」
「私─」
クロエの発言を遮ってダイアンが少しトゲのある口調で割って入った。いきなり現れたうわさのタネの本人に、ナックとクロエは声を震わせて叫んだ。
「黙って聞いてりゃ、人のことをボロクソ言ってくれるじゃないか?」
「ダイアン!!」
ダイアンは2人の驚きをよそに淡々と述べた。
「俺が何者かなんて、どうでもいいだろ?それよりも、俺はナックがそんな風に考えてることに驚きだな。ただヘラヘラした軽い奴だと思ってたけど。」
「本人を目の前にしてそれを言うのか?」
「自分だって言ってたくせに。被害者ぶるなよ。」
素性を明かすことを頑なに拒むダイアンにナックは業を煮やして口調を荒げた。
「お前が黙ってるからだろ!俺たちはただ、お前のことを知りたいだけだ。」
「俺は言いたくない。素性はどうでもいいって言ってるだろ。リーダーに向かってその態度は何だよ!」
クロエは2人の剣幕に気圧されつつもなんとか声を張り上げた。
「2人共止めてよ!」
「クロエの言う通りよ。今すぐ止めなさい!」
アイリスがクロエの叫び声と、ダイアンとナックの怒号を聞きつけて2人を一喝した。
「母さん!」
「アイリスさん!」
「新しい家族に見せるものじゃないでしょう?恥を知りなさい!」
2人はアイリスに怒られて気勢を削がれ、最初にダイアンが謝った。
「そうだったな。・・済まない、クロエ。」
次にナックが力なく笑って謝罪の言葉を口にした。
「初日にこれは早すぎたな。ごめんよ。」
クロエは笑顔を浮かべて首を横に振った。
「気にしないで。治まったみたいだし。」
アイリスはため息をついてダイアンとナックを交互に見つめて言った。
「2人共今日は休みなさい。これは命令よ。」
2人は同時に返事をした。
「了解。」
ダイアンとナックを見送ったクロエはアイリスに質問した。
「パパとママのお墓参りをしたいんですけど、墓地はどこですか?」
「案内するわ。私も参加していいかしら?」
クロエは笑顔で頷いた。
「もちろん!!」




