未来の変え方 (1/2)
「……ごめん、琴子」
そう謝ると、彼女は責めるように言った。
「ホントよ。春香さんの親戚の子だなんて。やっぱり嘘だったんじゃない……」
声が震えている。目に涙を溜めながら――それでも彼女は気丈に平静を保とうと、笑顔を浮かべていた。
「ごめん。俺はただ……お前を巻き込みたくなかったんだよ」
「分かってる。もう聞いたよ。普通は隠すよね。わたしだって教えないと思うし。こんなことになってたら――」
琴子が視線をちらっと流す。
その先にいるのはノインだ。おそらく彼女から事情を知ったのだろう。
だが、そうではない。秀一が彼女を巻き込みたくなかったのは、なにも事件だけのことではなかった。
かぶりを振って、秀一は言った。
「違う。そういう意味じゃないんだよ、琴子」
「そういう意味じゃないって、どういうこと――?」
琴子が疑問符を浮かべると、秀一は白状した。
「俺には昔から夢がある。海外に行って、研究生活に明け暮れて……将来は科学者ライフ。やがて富と名声を集めて、おまけに綺麗な女もはべらせる。そんな目標だ」
「……は?……」
その突拍子もない打ち明け話に、琴子がぽかんと口を開ける。
彼はそのままの口調ですらすらと続けた。
「だから、俺は誰とも仲良くなるつもりがなかった。自分の人生だけで手一杯に忙しいからだ。それに……俺に人生があるように、他人にも人生がある。その人生は、そいつ自身が好きに生きるべきもんだ。他人がどうこう関わるべきじゃない。つまり、深く関わらない方がそいつ自身のためにになるって論法であり、俺の揺るがない持論だ」
「それはそうかもしれないけど……こんな時になにが言いたいのよ、あんたは?」
「つまり、巻き込みたくないっていうのは、そういう意味だってことさ。俺は……お前にもできるだけ関わって欲しくなかったんだ。俺はどうせ来年には海外。日本に戻ることも考えてないからな。それならいっそ最初から一人でいたほうがいい。そう思った。でも……その結果が、どうやらこのひどい有様らしい。ダメだってことだ。今の考えのままじゃ――」
「……秀一……?」
彼は目を閉じると、深く息を吸って、吐いた。
なにやら緊張しているようにも見える。
「ほとんど……ヤケクソなんだろうな。俺は今、こんなバカな真似は絶対にしないって思ってるのに――未来は依然として変わっていない。それは依然として、過去に未練を残しているからなんだろう」
「未練って、どんな――?」
「……お前のことだよ、琴子」
「へ?」
面食らったように、彼女が目を丸くする。
秀一は、眼鏡の奥で、意を決したように目を見開くと、まっすぐと彼女を見つめて告白した。
「ここでハッキリ伝えておく。俺は、お前が好きなんだ」




