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キルロイド  作者: 武嶌剛
第二章 約束
16/51

夜の攻防 (1/3)

 オフィスビルに挟まれた街の大きな公園。


 ノインは一人になって、そこのベンチに腰を下ろしていた。あたりに人はいない。夜になっても流れ続ける噴水のことを、ただじっと見つめ続けている。例の住処に戻る様子もないようだ。


「しめたわ……。ここならロケーションもバッチシね」


 春香は周囲を見渡して、戦略的な見解をそう口にした。確かに、彼女の言う通り――この公園は不意打ちにはもってこいの場所であった。


 街灯は少なく、だだっ広い敷地は全体的にうす暗い。彼女の座るベンチの後方はちょっとした茂みの暗闇になっていて、死角からもうまく回り込むことができるだろう。


 さらに彼女は淡々と続けた。


「事前に話していた手筈通り……秀一くんが正面から囮になって、私が裏から拘束する。プランは臨機応変に。準備はいいかしら――」


 だが、秀一は立ち止まった。

 ある一つの違和感を覚えていたからだ。


「ねえ、春香さん……。あいつ。本当に俺のことを殺そうとしてるのかな」


 配置につこうとしていた春香が、ぴたりと立ち止まる。

 すると、彼女はなんだか怒ったように眉根を釣り上げた。


「秀一くん。昨日のことなのに、もう忘れちゃったのかしら。殺されかけたばかりでしょ、貴方……?」

「それは確かにそうなんだけど……でも、あいつの今日の様子を見てると、なんだか腑に落ちなくて。俺を探してる素振りもなかったし――」


 こういう疑念が秀一にはあった。

 もしも彼女が殺人兵器だというなら、もっと自分を殺すことに躍起になっていてもおかしくないのではないだろうか――と。


 仕留めそこなった獲物――普通の殺し屋であれば悔しがるべきことのはずなのに、今日の彼女の行動を振り返ると、そんな様子はとくになかった。彼女はただ、寂しそうに街をさまよっているだけだった。


 だが、春香はそのように考えなかった。


「そんなことで油断しちゃだめよ。普通に考えてみなさい。昨日の今日では貴方が警戒してると思って、時期を見計らってるだけかもしれないでしょう」

「それは……そうかもしれないけど――」

「ついでに言えば、今の状況だって、もしかしたら私たちをわざと追跡させて誘っているって可能性もゼロではないのよ」


 その言葉に、秀一はハッとさせられた。

 つい昨晩、自分はまったく同じ手口で、まんまと罠にかけられたばかりだったからだ。


(……バカだな、俺は。まったく反省を活かせてないじゃないか……)


 胸中で毒づく秀一。

 春香は告げた。


「大丈夫よ。今日の追跡はバレてない。そんなヘマをするほどまでに私は欠陥品ではないから」

「あとは……やるだけってことか――」

「そういうこと。いつもの日常に戻りたいならね」


 秀一はしばらくうつむいてから、こう尋ねてみた。


「……アイツを、春香さんみたいにしてあげることは、できないのかな」


 その言葉に、彼女はゆっくりと見返してきた。


「残念だけど……無理ね。原則、開発機関の専用設備に戻らない限り、キルロイドに登録された命令は操作できない。そんなコロコロ命令を変更できたら、ターゲットや第三者に悪用された時に危険でしょう? それは私も彼女も……同じことよ」

「……わかったよ……」

「心配しないで。きっとうまくいくわ。なにしろ私がいるんだからね――」


 そう肩を叩いて――彼女は、目つきを鋭く変えて、長い髪を後ろに縛り上げると、闇の中へと姿をくらませていった。


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