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中ボス魔族に転生した俺、ラストエンディング回収のため密かに勇者を手助けするはずが、ハズレ天職から超進化した『支配の魔王』で無双してしまう  作者: 藤枝止木
1章 カオスマキアの世界

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第009話 起きたら魔王になってた件


「支配の魔王……それにこの見た目の変化……これ、俺も魔王になったってことなのか……!?

 だとしたらストーリーへの影響は……? これから俺、どうすれば良いんだ……!?」


 場所はコルマール村の広場に張った天幕の中。

 絶賛混乱中の俺がぶつぶつ素で呟いていると、ラミルルが焦った様子で口を開いた。


「あ、あの、デュラン様! 顔色がひどいですし、ご様子も変です……わたし、神官様をお呼びしてきます……!」


「ま、待て! それには及ばん。どうやら俺様の天職が進化して、その影響で見た目も変わってしまったらしい。体調も悪くないし、むしろ絶好調だ」


「そ、そうなんですか!? えっと……でしたら、おめでとうございます……?」


「ワフン……?」


 ラミルルとベルは、あまり納得できていない様子で顔を見合わせた。

 そりゃそうか。いきなり肌の色が緑から薄紫に変わって、額に宝石が生えるなんて、この世界の常識でも異常だ。


「うむ、ありがとう……それで、えっと……少し時間をくれ。新たな天職について考えたい」


 俺は二人にそう言うと、ベッドに腰を下ろして思考を巡らせ始めた。


 俺はカオスマキアを誰よりもやり込んだ自信があるが、支配の魔王なんて天職は初めて見た。

 初見の天職を得て嬉しい気持ちもあるけど、「魔王」というのが非常に不吉だ……カオスマキアでは、魔王と勇者は殺し合う定めにあるからだ。

 俺が見てきた99個のエンディングでは、魔王と勇者はそのどちらか、あるいは双方が必ず命を落としていた。

 もしかしてこれ、露骨な死亡フラグなんじゃ……?


「あ、あんなに頑張って準備して、この村で死ぬ運命から逃れたのに……」


 項垂れて呟く俺に、ラミルル達が心配気な視線を向けてくる。

 というか、そもそもなんで天職が魔物使いから進化したんだ?

 俺は勇者と戦う前の段階で、すでに魔物使いの天職を限界まで鍛え、位階も種族上限に達していたはずだ。

 そうなると……心当たりは一つだ。勇者に勝利する。これが進化の条件だったんじゃないだろうか?

 

 その点も考えると、昨夜の夢で遭遇したあの強大な存在の正体も想像が付く。

 きっとあれは、暗黒神エレボロスだったのだ。そもそも、魔族に天職を授けてくれるのって暗黒神だけだし。

 そして勇者は、暗黒神と敵対する光輝神の御子だ。その勇者を倒したご褒美か何かということだろう。

 

 ——まぁ、全て推測の域を出ない話だ。

 神々の思惑は置いておいて、今は天職に付随した新たなスキルの確認が先だ。

 死亡フラグを乗り越えてラストエンディングに辿り着くには、やはり力が必要なはずだ。

 

「魔王の器(デモンズ・キャリバー)に、支配(ドミネイト)か……」


 一つ目の魔王の器(デモンズ・キャリバー)については、実は見たことがある。

 カオスマキアで何度も戦ったラスボス、魔王グラノスが持っていたスキルと同じなのだ。

 これは使用者の全能力値と耐性を激増させ、レベル上限を無くしてしまうチート級のパッシブスキルだ。

 現に、体の奥底から強大な力が湧き上がってくるのを感じる。

 

 次に二つ目の支配(ドミネイト)。天啓で得られた情報では、これは調伏(サブジュゲイト)の強化版のような魔法らしい。

 この魔法が成功すると、対象を「配下」にすることができる。

 配下は俺の位階に応じて能力値が強化され、さらに俺自身も配下の数に応じて能力値が上昇する。

 つまり俺は、配下を作れば作るほど際限なく強くなれるというわけだ。

 非常に強力な……いや、強力過ぎる魔法だ。一つ目の魔王の器(デモンズ・キャリバー)が霞むほどに。


 だが問題もある。それは魔法の対象が、魔物から人にまで拡張されてしまっている点だ。

 魔物であるヴァッカス達を配下にするのにも罪悪感があったのに、人間相手になんて使えるわけがない。

 あと名前が悪過ぎる。もし人格に強い影響を及ぼす洗脳じみた魔法だったとしたら……

 効果はとても魅力的だけど、ちょっと怖すぎて使えないな……

 

 ——キィィィン……


「ん……?」


 そう思った矢先、ラミルルとベルの足元に禍々しい魔法陣が生じた。


「え……!?」


「ワウッ!?」


「なっ……馬鹿な! 俺様は使ってないぞ!?」


 思わずベッドから立ち上がる。直感的に、それが支配(ドミネイト)のスキルによるものと分かった。

 まさか、周囲に対して無差別に発動するスキルなのか……!? ——くそっ、駄目だ! 止められない!


 魔法陣は俺の意思を他所に展開を続け、黒い光を放ちながら二人を包み込み、消えた。

 直後、ベルだけでなく、ラミルルとも強い繋がりが生まれたのが分かった。

 そしてベルの額には、支配(ドミネイト)が成功した証だろう。俺の生家、ヨーヴル男爵領の猪を模(かたど)った紋章が現れていた。


「ベル、そんな……! ラミルル! お前の体のどこかに、ベルと同じ紋章が現れていないか……!? すぐに確かめるんだ!」


「え……!? も、紋章ですか……? えっと……あの、調べますので、その……」


 ラミルルは俺の剣幕に少し怯えつつ、恥じらうように両手で胸元を隠した。


「あ……す、すまん」


 俺がそう言ってラミルルに背を向けると、少しして背後から衣擦れの音がし始めた。

 そ、そうだよな。確かめるには脱ぐしかないもんな……


「あっ……あ、あの、デュラン様。見つけましたぁ……」


「本当か……!? くそ、やはり成功してしまって——」


 慌てて振り返ると、ラミルルはメイド服のボタンを開け、赤面しながら胸元をはだけていた。

 一瞬、彼女の豊かすぎる谷間に目が吸い寄せられたが、その少し上の胸元、そこに紋章が刻まれてしまっているのが見えた。

 やはりラミルルも……しかしなんて場所に……


「えっと……確認した。もう仕舞っていいぞ」


「は、はいぃ……」


 顔を背け、ラミルルが衣服を直し終わると、俺は震える声で二人に尋ねた。


「二人とも、何かこう、変化はないか……!? 例えば、俺様の命令に絶対服従してしまいたくなったり、俺様のこと異常に好きになっていたり……」


 俺はこの世界に転生してから、大半の時間を二人と過ごしてきた。

 その彼女達の人格を、俺がスキルで歪めてしまったのだとしたら……

 言い知れない恐怖と巨大な罪悪感に、胃のあたりが冷たく、重くなってくる。

 だが本人達は互いに顔を見合わせ、首を傾げている。あれ……?


「ワフン……?」

 

「えっと、どうでしょう……? わたし達は昔からデュラン様の家来ですから、ご命令には従いますし……その、元々ご主人様として、お、お慕いしていますし……

 あ、でも……さっきみたいなご命令は、その、ちょっとだけ心の準備をさせて欲しいですぅ……」


 ラミルルが大きな体を縮こまらせ、消え入るような小さな声で言う。先ほどからずっと顔が真っ赤だ。

 なんか、大丈夫そうだな……二人が変わってしまった様子はない。洗脳されてしまうという俺の予想は、幸運にも外れたのだ。


「そう、か……はぁーーー……」


 俺は巨大な安堵の息を吐きながら、崩れるようにベッドに座り直した。

 支配(ドミネイト)と言う名前の割に、どうやら人格への影響がないスキルのようだ。

 そこは本当に良かったけど、発動条件がわからないな……


 ——もしかして、俺への忠誠心とか、好感度なんかが発動条件なのか……?

 一定の条件を満たす対象が俺の前に現れると、自動的に発動してしまうとか……

 かなりはた迷惑なスキルだけど、完全に無差別というわけでもなさそうだ。そこは不幸中の幸いだな。

 あとは、なんとか発動を制御したいところだけど……


「そうだラミルル。先ほどのような命令は二度としないから安心しろ。すまなかったな」


「え……? そ、そうですか……」


 ラミルルは、ほっとしつつ残念がるような、なんとも不思議な表情になった。

 あれ、何か変なこと言ったかな……?


「デュラン様! 少しよろしいでしょうか!」


 話がひと段落したところで、天幕の外から声をかけられた。


「ああ。入って良いぞ」


 そう答えると、入ってきたのは小隊を任せている騎士だった。


「失礼致し……!?」


 しかし彼は俺の顔を見ると、驚愕の表情で固まってしまった。

 あ、そうか。彼も今の俺は初見だった。いきなり上司の顔色が緑から紫に変わったらビビるよな。


「あー、この顔のことなら気にするな。少々魔術の実験に失敗してな……それでどうした?」


「な、なんと。そうでありましたか……では報告いたします! 隣の天幕にて拘束していたヒューマンの娘が、先ほど目を覚ましました!」


「……! そうか。すぐに向かう。案内せよ」


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