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中ボス魔族に転生した俺、ラストエンディング回収のため密かに勇者を手助けするはずが、ハズレ天職から超進化した『支配の魔王』で無双してしまう  作者: 藤枝止木
2章 支配と強欲

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第028話 コルマール村強化計画


 エゼキエル襲撃の翌日。俺は主だった面々を村長宅の居間に召集した。


「皆、急な呼びかけにも関わらずよく集まってくれた」


 俺の声にみんなが頷く。

 魔族側からは、俺の他にラミルル、ツバキ、筆頭騎士のトリュッグ卿、そしてベルが参加している。

 人族側からは、ミネットとソフィー、コルマール村のロイク村長が来てくれている。


 加えて今日は、俺の占領下にある他の村の担当騎士と村長達にも来てもらった。

 ちょくちょく視察には行っていたので初対面ではないが、村長達は突然の召集に不安げな様子だ。


 そしてさらにもう一名。領都モンフォルムを治めていた子爵の令息、アドニス氏にも参加してもらった。

 彼は領都の窮状をこの村に伝えた後、過労でずっと寝込んでいたが、昨日の段階でようやく回復した。今は非常に居心地が悪そうにしているが……

 

「ところでミネット。アンジェリカはまだ寝込んでいるのか? 昨日はかなり参っていたようだったが……」


 俺の問いかけに、ミネットは気楽な様子で肩をすくめた。


「そうだにゃ。うんうん唸ったままベッドから出てこねーにゃ。ま、どーせ腹でも減ったら出てくるにゃよ」


「そうか……ソフィー。お前も休んでいていいのだぞ」


 少し顔色が悪いように見えたのでそう言うと、彼女は気丈に笑い返してくれた。


「いえ、もう大丈夫です。かの聖騎士様と、私の信仰は異なるものだと整理できましたので……それに、ミネットだけに会議を任せるのは少し不安ですから」


「にゃはは! さっすがソフィー。ウチのことをよく分かってるにゃ。よし、後はおみゃーに任せたにゃ!」


 二人のやりとりにちらほらと笑い声が上がり、その場の空気が少し軽くなった。助かる。


「ふふっ……では、始めるとするか。この場には昨日の出来事を知らぬ者もいる。まずはそれについて話すとしよう」


 俺は、五聖将エゼキエルがコルマール村を村人ごと滅ぼそうとし、俺とツバキとでそれを阻止したことを話した。

 そこへさらにロイク村長が補足を入れ、コルマール村が俺の統治を積極的に受け入れる姿勢であることも付け加えてくれた。

 話を聞いたトリュッグ卿以外の騎士達は感嘆の声を上げていたが、他の村の村長達は頭を抱えてしまっていた。


「聞いての通り、俺の占領下にある村は人族からも狙われかねん状況となった。だが安心するといい。領民であるお前達はこの俺様が守る。

 そしてそのためにも、まずは各村の防衛力を強化したい。具体的には、村の外側を現在よりも強固な防壁で覆い、内部の建物も頑丈なものに造り替えるのだ」


 ざわり。と、みんながどよめく。全員、それができたら苦労はしないと言いたげな表情だ。


「案ずるな。普通は莫大な労力と時間を要するが、これも俺様がなんとかする。後ほど、この村で早速試そう。

 次に物流や経済面だな。村で生産した余剰の作物などを売り、村で生産できないものを仕入れるための取引先が必要だ。

 交流がここの面々だけで閉じてしまっては、息も詰まるだろうしな……そこで貴殿だ、アドニス殿。いやアドニス子爵」


「——私か……」


 俺の声に、貴公子然とした彼は唸るように答えた。

 彼の父は領都モンフォルムを治めていた子爵で、俺の占領下にある村々の領主でもあった。

 しかしその子爵はヴァルグルに殺されてしまった。順当にいけばアドニス氏が子爵の地位を受け継ぐはずだ。


 父親の方は領民に重税を課す悪徳貴族だったが、息子のアドニス氏は聖王国では珍しいくらいに清廉な人物だ。

 父の統治に疑問を持ち、このコルマール村にも度々視察に訪れ、税の軽減などを子爵に具申していたそうだ。残念ながら結果は伴わなかったようだが……


「私としては、まずは当家の領地と領民を奪われたことへの恨み言を言いたいところだが……父のこれまでの所業に加え、領民がそれを受け入れてしまっているのではな……

 貴殿が私に何を望んでいるかは察しがつく。しかしその前に、デュラン殿。私には貴殿のことが理解できない。それが気がかりだ」


「ふむ……俺様と貴殿は魔族と人族だ。それは当然のことだろう」


「いや、貴殿が魔族だとしてもだ。まず、私は療養しながらこの村を観察していたが、魔族の占領下とは思えないほどに穏やかだった。こんなことは普通ありえない。

 貴殿の悪評も、勇者アンジェリカ殿からしか聞かなかったしな。まぁ、彼女の話はいちゃもんのような内容だったが……

 さらに五聖将エゼキエルがもたらした情報によると、勇者殿らによる領都解放も事実らしい。

 であれば、そこのミネット殿とソフィー殿は私にとっての英雄だが、貴殿にとっては主君の仇のはず。なぜ処罰しないのだ?

 いくらなんでも人族に甘すぎる……貴殿には、何か別の狙いがあるのではないか……?」


 ギクッ。アドニス氏、めちゃくちゃ鋭いぞ。しかし、勇者達への処遇については返答を用意してある。


「な、なるほど。当然の疑問だな……子爵は弓姫(きゅうき)デリアの名は知っているか?」


「うむ、聞いている。勇者達と共に血濡れ巨人を討ったダークエルフだそうだな。私自身は会っていないので、本当に存在するのか半信半疑なのだが……」


「俺様も会ってはいないが、相当の手練れという話だ。その点、俺様は勇者達の力量はよく知っている。ヴァルグル閣下の武勇もな。

 だからこそ分かる。勇者達に閣下を倒すほどの力はないと。そうだな?」


 俺の視線に、ミネットとソフィーが分かっているとばかりに頷く。


「ま、そうだにゃ。正直、殆どデリアが一人で倒したようなもんだにゃ。にゃのに手柄はいらにゃいとか言ってたけどにゃ」


「はい。あの方はとにかく目立つことを嫌っていました。ヴァルグルを倒した後はすぐにどこかへ去ってしまいましたし……」


「とのことだ。よって俺様は、このデリアこそが閣下の憎き仇であると考える。奴の正体や狙いは不明だが、見つけ出したら必ずこの手で抹殺してくれよう……!」


 ニヤリと笑う俺に、村長達やアドニス氏が後ずさる。

 その時、ツバキとラミルルの小声の会話が聞こえてきた。


「ラミルル殿。その弓姫(きゅうき)デリアというのはもしかして……?」


 ツバキが視線で俺を指し、ラミルルが目を見開く。


「え……!? はい、そうなんですが……その、よく分かりましたね……?」


「うむ。主(あるじ)様が珍しく強い言葉で非難したのに、そのデリアとやらを憎悪してない感じだったでござるからな」


「そうですか……デュラン様のことをよく分かっていらっしゃるんですね……」


「いやいや、たまたまにござるよ」


 そういえばツバキにはデリアの件は話していなかった。彼女、結構鋭いな。


「話を続けよう。勇者達もヴァルグル様殺しを幇助(ほうじょ)したわけだが……彼女達は成人前な上、村周辺の魔物を狩って俺様の統治を助けた功績もある。

 罰を与えるとすれば、まぁ村からの追放あたりが妥当か。それも、今のごたついた時期でなくてもよいだろう」


 俺はそう締めくくったが、アドニス氏だけでなく騎士達も納得できていないような表情だ。さ、流石にちょっと言い訳が苦しかったかな……?

 するとそこで、筆頭騎士のトリュッグ卿が口を開いた。


「皆、これは独り言なのだが……デュラン様はアンジェリカ殿らを非常に可愛がっておられる。彼女らは二度もデュラン様に刃を向けたが、それすら軽い罪で許すほどに」


 その瞬間、その場の全員が急に納得の表情を浮かべた。ミネットとソフィーの二人はちょっと恥ずかしそうにしている。

 あ、あれ。何か変な誤解が生まれた気が……


「なるほど。貴殿の好みは人族の女か……そういうことなら全て納得できる。それで、貴殿は私に、領都モンフォルムとの橋渡しを望んでいるのだな?」


 アドニス氏が何か言い始めた。やっぱり誤解されてる……! けど、それで話が進むなら……


「そ、その通りだ。アドニス子爵ならば、こちらの商材の価値は理解しているだろう?」


 療養中、アドニス氏にはカレーやら高級フルーツやらをちょくちょく差し入れていた。

 今のコルマール村の畑には、村人が春に植えた通常の穀物に加え、この辺りでは手に入らないような香辛料や作物がたくさん実っている。

 ガイアのスキルで大量かつ高品質に促成栽培したのだ。

 ここ以外の村でも、各村の特産となるような作物が収穫を待っている段階だ。


「うむ……確かに非常に珍しく、美味なものばかりだった。あれらを我が領都に卸してくれるならば……

 了解した。貴殿の申し出を受けよう。我が領都まで王都から睨まれる危険性はあるが、この取引による利益は非常に大きいはずだ」


「よし、決まりだな。では話は一旦ここまでとし、早速この村の防衛力を強化するとしよう。皆、外に出るのだ」


 俺はその場の全員を外へ連れ出し、地面に手を付いた。


「地母神の腕(ガイア・アーム)」


 ——ゴゴゴゴゴッ!


 地面が大きく揺れ、地響きが鳴り響き、大地が隆起する。

 そしてほんの数分後。村の木製の防壁の外周に、高く頑丈な石造りの防壁が建造された。

 ガイアから借りた大規模地形操作魔法である。

 

「ひ、ひぃぃっ……! 天変地異じゃあ!」


「このような大規模魔法、手練れの魔導士が百人単位で必要なはず……それをたった一人で……!?」


「剣だけでなく魔法まで凄まじいとは……! 全く、底が知れんな……」


 それを見ていた全員が歓声を上げる。しかしまだ外身を作っただけだ。


「よし、防壁はこんなところだろう。次は建物だな」

 

 俺は次に、広々とした兵舎と、村人用の戸建て住宅を元の村の近くに建造した。

 全てレンガ造り風の、頑丈かつデザイン性も備えた建物だ。

 以前、建築系のシミュレーションゲームにハマっていたことがあって、その時の経験が生きた形だ。


「よし。後ほど上下水道なども通したいが、まずはこんなところだろう。騎士と兵士達は天幕を片付け、兵舎の方に住むといい。

 元の家がいいという村人には無理にとは言わないが……有事の際には新しい住居の方が遥かに安全だろう」


「あ、ありがとうございます! 兵達も喜びましょう!」


「儂らの家まで……! ありがとうございますじゃ。ところで、デュラン様のお住まいはどちらに……?」


 トリュッグ卿に続いたロイク村長の言葉に、俺はハッとした。そういえば考えてなかった。


「そうだな……俺様も兵舎の一室に住むとしよう」


 そう答えた瞬間、二人は信じられないとばかりに目を見開いた。


「それはいけません! それなりの建物を築き、そこに住まわれるべきです!」


「その通りですじゃ! 城館……いえ、城を建てましょうぞ!」


「え……? い、いや、そんなに大袈裟な物を建てても管理がだな……」


 そう反論すると今度はラミルルが手を上げた。


「私がお掃除します! ですから、大きさは気になさらないで下さい!」


「そ、そうか。では……このくらいか?」


 言われるがまま、兵舎より一回り大きい屋敷のような建物を作ってみると、今度はツバキからクレームが入った。


「いやいや主(あるじ)様! 目上の者が良い場所に住まないと、下の者も気が休まらないでござるよ?」


「む、それもそうか……? では——」


 そうして何度かリテイクが入った結果、馬鹿みたいにでかくて立派な城館が完成し、俺はそこに住むこととなった。


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