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シュレッダー  作者: 弌黑流人


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第四話 エンド1

 四階の暗闇の中、佐伯が懐中電灯をかざすと、シュレッダーのダストボックスから赤黒い液体で濡れた無数の紙の帯が溢れ出していた。


 それらはまるで生き物の触手のように床を蠢き、まっすぐに佐伯へ向かって這ってくる。


「くっ……!」


 逃げようとしたが、濡れた紙の帯が足首に力強く絡みついた。紙とは思えないほど重く、冷たく、皮膚にベタリと張り付いて離れない。


 シュレッダーの本体が激しく振動し、投入口からじわじわと「それ」が現れた。

 全身が赤く染まった紙切れで構成された、人の形をした異形。顔に巻き付いた紙くずには、五年前の失踪事件を報じる新聞記事の文字と、今夜の佐伯の巡回スケジュールが重なり合って印字されていた。


 異形は細い紙の手をゆっくりと伸ばし、擦れた声で囁いた。


『次は……お前の番だ……』


 シュレッダーの刃が逆回転を始め、強力な吸引力が佐伯の足を投入口へと引きずり込んでいく。靴底が金属刃に接触し、バリバリと削れる嫌な音が響いた。


 ――刃の回転音が目前に迫る。


 佐伯は何ひとつ抗うことができなかった。

 足首を捉えた紙の鎖はあまりにも強く、恐怖で全身の筋力が麻痺していた。身体は滑るように狭い投入口へと引きずり込まれていく。


「やめろ! 助けてくれーっ!」


 叫び声も虚しく、膝、腰、胸と順番に狭い隙間へ押し潰されながら吸い込まれていく。骨が砕ける音と肉が擦り切れる音が、激しい機械音にかき消された。


 翌朝、出勤してきた竹内が目にしたのは、無人になった四階フロアと、静かに電源が入ったままのシュレッダーだった。


 ダストボックスの中には、真っ赤に染まった紙くずと、細切りになった警備服の布切れ、そして細切れをまぬがれた「佐伯」と書かれたネームプレートが、シュレッダーから少し離れたところに落ちていた。


 翌週、新しい新人警備員が採用された。

 竹内は缶コーヒーを片手に、引きつった笑みを浮かべながら後輩に語りかける。


「いいか、四階だけは夜中に一人で行くなよ。五年前と、先週な……社員と警備員が一夜にして消えたんだ……」


 『シュレッダー』 ― Normal End ―


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