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第33話 メイメイの新人占いコーナー2

「皓くん!こっちおいで!」

「早く早く!」

「う、うん!鈴ねー!」


 鈴ねーとメイメイさんの呼びかけに、僕は不慣れな状況に怯えたふりをしながら、おずおずとカメラの前へと足を進めた。


 二人のいるテーブルへ向かいながら、わざと自分の足につまずいて転びそうなふりをした僕は、テーブルに着くと同時に「よくできました~」と言いながら僕を抱いて頭を撫で回してくる鈴ねーを、恥ずかしそうに押しながらカメラに向かって頭を下げた。


「は、初めまして!あ、こんにちは……ですかね?ええと、こ、皓、です!よ、よろしくお願いします!」


[おっ、こんばんは!]

[よく来たね!また会えて嬉しいよ!]

[ハァハァ!ケモミミショタキターーーー!!]

[皓くん、前回の配信の後、大丈夫だった?]


「ええと、僕もまた会えて嬉しいです!それと僕は全然元気でした!心配してくれてありがとうございます!」

「皓くん、ご挨拶もしっかりできて偉いね~!」

「もう、鈴ねー、やめてよぉ……。みんな見てるんだからぁ」


 何より進行の邪魔だからそろそろ離れてほしいところだが、配信を意識して普段より控えめに抵抗したせいだろうか。鈴ねーは全然手を離す気がなさそうに見えた。

 それどころか、それを見て面白いと思ったのか「私も混ぜて混ぜて!」とメイメイさんまで僕を抱きしめてきた。


 これ、どうすりゃいいんだよ。


 二人にぎゅうぎゅうと抱きしめられながら頭を抱えていると、僕が困っているのを見かねたのだろうか。カメラの外で出番を待っていたイチゴがトトトッと全速力で駆けつけ、鈴ねーとメイメイさんの頭を蹴り飛ばした。


「キュッ!キュイーー!!」


 さっきあんな目に遭ったばかりだというのにまだ懲りてないのかと言わんばかりに、そのまま僕の頭の上に陣取ってフンスフンスと二人へ説教を始めるイチゴ。

 鈴ねーとメイメイさんはイチゴに頭を蹴られた衝撃で我に返ったらしく、ハッ!とカメラを見つめた後、コホン!と咳払いをして席に着き、何事もなかったかのようにすました顔を作った。


「コホン!はい!そういうわけで本日のメインゲスト、皓くんです!みんな歓迎してね!」

「大歓迎してね!」


[いや、リンネちゃんは知ってたけど、メイメイも相当弟くんのこと好きなんだな]

[まさか開始早々に理性を失うとは。リンネもメイメイもヤバいだろ。いや、この場合皓くんの可愛さが凶悪すぎるのか?]

[てかその頭に乗っかってる白いリス?フェレット?何それ?ペット?]

[これはリンネが今まで俺たちに皓くんのケモミミ姿を見せようとしなかったのも納得だわ。弟くんを自慢したい気持ちと同じくらい、可愛い弟くんを独り占めしたかったんだろうな。ケモミミの弟くんが配信に出たら絶対にバズるし。実際バズったし]


 へぇー、なるほど。鈴ねー、前回の配信で事前に打ち合わせていた流れと違う方向へ進んだとは思っていたけれど、そういうことだったのか。


 僕はじーーっと疑いの眼差しで鈴ねーを見つめた。

 鈴ねーはそんな僕の視線から目を逸らしながら、強引に話題を切り替えた。


「あっ!やっぱりみんな気になってるよね、この子!実は皓くんの頭の上にいるこの白い子、以前隠し部屋で皓くんが捕まえたシロイタチのイチゴちゃんっていうんだけど、なんとこの度、この子も皓くんのテイミングモンスターとしてウチの事務所に所属することになりました!!パチパチパチ!!」


[話題を逸らすためにサラッと重大発表言いやがったな?]

[まあまあ、リンネは元々こういう奴だから。みんな大目に見てやろうぜ。今日は弟くんもいることだし]

[そうだな。ひとまず今は流してやるとするか。てか、じゃあ皓くんのスキルは何なの?獣人化?テイミング?もしかして両方持ってる系?]


「あ、はい。それはですね。ちゃんと両方持ってます。はい」


 そう言いながら、本名の欄を指先で隠しつつ皆に見えるようハンターカードを見せる僕。

 以前イチゴを掴んだ際に協会で更新してもらったおかげで、僕のハンターカードのスキル欄には【獣人化(F)】と【テイミング(F)】の文字が書かれていた。

 それを見た皆の反応は一つだった。


「えぇッ!?獣人化スキル、Fランクだったの!?!?」

「えっ。マジで?嘘でしょ!?」


 今まで特に見せる機会がなかったせいでこの場で初めて知る鈴ねーと、初見なのが当然のメイメイさんが声を揃えて叫んだ。そしてコメントウィンドウにも信じられないというコメントが殺到した。


[え???何これ。獣人化F???なんてあり得るのか??]

[おいおい。テイミングならともかく、獣人化がFとかどう考えてもおかしいだろ。イレギュラースライムと隠し部屋のボスをソロで撃破したんだぞ]

[というかリンネ、皓くんの姉ちゃんのくせに今知ったのかよwwwwwww]

[本人が明かさない限り普通は個人情報として秘密にするのが筋だし、そこまでおかしな話でもないだろ]

[いや、俺の推測だと弟くんのケモミミ姿に夢中になりすぎて確認するのを忘れてただけだと思うぞ]

[確かにwwwwwwww]

[あり得る。てか協会仕事しろ]

[それな。協会、ちゃんと仕事しろ!]

[マジそれ]


 そこから雪崩のように続く、信じられないというコメントの数々。中には協会を非難する書き込みや、果てにはハンターカードそのものが不良品ではないかと疑い出す者まで現れる始末。

 そしてそれは鈴ねーも同意見だったようで、鈴ねーが眉を寄せて僕に問いかけてきた。


「ええと、皓くん。言いにくいんだけど……このハンターカード、不良品じゃない?記載ミスとかそういうのあるじゃない」

「いや、それは違うよ」

「だっておかしいじゃない!皓くんのあのスキルがFランクなわけないよ!あんなに可愛くて強いのに!」


 いや、可愛いかどうかはランクに関係ないだろ。


 まあ、それはそれとして。


 僕は苦笑いを浮かべながら首を横に振った。

 残念ながらハンターカードには間違いなどなく、ハンター協会が僕の獣人化スキルをFランクだと判断したのにも相応の理由があったからだ。


 僕も獣人化がFランク判定だったのが疑問で、初めは協会の職員に聞いていた。

 それに対する職員の回答は、そのスキルが最終的に成長し得る最大のキャパシティを基準としてランクが自動的に算出されるため、ランクの決定に関して人間側でどうこう口を挟む余地はない、ということだった。

 僕が考えるにそれはつまり、獣人化というスキルは、僕が完全に九尾の狐としての力を発揮した状態を天井としてランク付けされている、ということで、そう考えると、納得できる評価と言える。


 確かに僕が本来九尾の狐として持っていた力に比べると、今の僕が扱える力なんて無に等しいレベルだからな。


 スキル名は協会の職員がスキルの発現を見て直接命名するくせに、ランクの判定だけはオートで下されるというのは妙な話だとは思うけれど。

 それも現代人が持つスキルの応用の一環だと考えれば、理解できない話でもない。


 メイメイさんのように占い師めいたスキルを持つ人もいるくらいだからな。


 だから僕はみんなの声に流されて協会に異議を申すつもりはない。なのでひとまずこの話題を穏便に済ませることにした。


「えへへっ!皆さん、心配してくれてありがとうございます。でも、ええと……ランクが低いってことは、それだけ上に伸びる余地があるってことですから!頑張ってもっと高いランクに上がれるように努力してみようと思います!」

「きゃあぁっ!私の皓くんが健気すぎるよぉぉ!」

「偉いねぇ~!」


[えっ、何この子。偉い]

[偉い偉い]

[よし、兄ちゃんがお小遣いあげちゃうぞ。スパチャ受け取れ!]

[私もお小遣いあげる!ほら!]


 そうしてファンのみんなのハンター協会への不満はどこかへ吹き飛び、今度はコメントウィンドウが僕への褒め言葉とスパチャで埋め尽くされていった。


 僕は僕をチヤホヤしてくれる鈴ねーとメイメイさんの撫で撫で攻撃に照れくさい微笑みを浮かべながら、頭の片隅でこう考えた。


 この配信のスパチャの取り分どうなってたっけ?と。




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