第31話 占い師メイメイ2
メイメイさんの答えに呆然としていると、ギィッと音を立ててスタジオのドアが開き、鈴ねーが中に入ってきた。
「皓くん!お待たせ!一人で寂しくなかった?お姉ちゃんと会いたくなかった?って、えぇっ!?メイメイさん!?どうしてもう来てるんですか!?」
「ヤッホー!久しぶり、リンネちゃん!今日のメインゲストが皓くんだって聞いて、ワクワクして早く来ちゃった!そういうわけでリンネちゃんがいない間、皓くんを堪能させてもらいました!リンネちゃんの弟、マジで可愛いね!」
「もうっ!!メイメイさんでも許しませんよ!私の皓くんにベタベタ触らないでください!皓くんは私の弟なんですから!」
「ふーん。じゃあ私はリンネちゃんをもらっちゃおうかな!そしたら自動的に皓くんも私のものになるし!」
「何を言ってるんですか!もうッ!!」
お互いに揉め合いながらも、それほど仲が悪く無さそうな二人。
そんな二人を横で眺めていると、またギィと音を立ててドアが開き、僕をここに案内した後少し席を外していた橘さんが戻ってきた。
「あら、メイメイさんもう来ていたんですか。撮影が始まる前に来るなんて珍しいですね」
「そうなんですか?」
「ええ、普段は撮影時間にギリギリ合わせて来ますから。何の話をしていたのですか?」
「僕がメイメイさんの配信にゲストとして出ることになった、という話をしていました」
「ああ、そうでしたか。メイメイさんの紹介をしながら説明しようと思っていたのですが、手間が省けましたね。助かります。……それより皓くん、コンディションはどうですか?緊張されていませんか?」
「あ、はい!……ええと、ちょっと緊張してるかもしれないです。へへ」
緊張なんてするものか。そんなものを感じる歳はとうの昔に過ぎている。というかさっきメイメイさんに激しい挨拶をされたことで、ちょっとはあったかもしれない緊張感すら綺麗さっぱり吹き飛んでしまった。
だが、ここで平気だと言うより、緊張していると言った方がカワイイポイントを稼げると思ったから、こう答えたに過ぎない。
しかし、出会ってまだ日の浅い橘さんがそんな僕の考えに気づくはずもなく。
橘さんは声を一段と優しくしながら僕に視線を合わせた。
「ああ、やっぱりそうですよね。緊張をほぐすために甘いものでもどうですか?」
「甘いものですか?」
「ええ、もうすぐ撮影に入りますから飴はダメですけど、チョコレートはいいですよ。どうですか?」
「チョコレート!いただきます!!」
勢いよく答えながら手を差し出すと、橘さんがポケットからチョコレートを出して、「どうぞ」と僕の手のひらに乗せてくれた。
フフッ。ちょっと可愛い子ぶっただけで、早くもこうやって美味しいお菓子をもらえるだなんて。やっぱり可愛い子ぶっておいて大正解だったな!ハハハ!
そんなことを考えながら甘いチョコレートを口の中で溶かし味わっていると、いつの間にか揉めるのをやめた鈴ねーとメイメイさんが僕たちの方へ近づいてきた。
「あ、橘さん戻ったんですね」
「橘さんズルイ~!皓くんばかり贔屓するなんて!私にもおやつちょうだい!」
「ええ、ちょうど戻ったところです。それとメイメイさんはダメです。最近少し丸くなっちゃって、社長からも管理に注意するようにと言われたばっかりでしょう?」
「それはそうだけどぉ~~。私もチョコ食べたいよぉ~~。皓くん、チョコ残ってない?」
「ええと、すみません。もうないです」
そもそも橘さんからもらったチョコレートは一口サイズのものだったし。
すでに綺麗に食べ尽くしてしまっていた。
「そんなぁ~!メイメイ悲しい~!!シクシク!」
「メイメイさん、嘘泣きなのは分かってますよ。それより皓くん、今回の配信でお話しする内容は覚えていますか?」
よくあることのようで慣れた様子でメイメイさんをスルーして話題を変える橘さん。
「はい!前回の配信の後、僕は特に何の問題もなく元気に過ごしているということと、今まで心配してくれてありがとうございますってこと。そしてスターライズに所属して、これからもダンジョン配信活動を続けていくということ。あと、イチゴがテイミングモンスターとして仲間になったということ。この三つですよね?」
「正解です。そのお話が終わった後は雑談配信をしますから、話したいことを話せばオーケーです。配信中に何か分からないことがあれば、一緒に配信するお二人に聞いてください。なのでメイメイさん、リンネさん。お二人もしっかり皓くんをフォローしてくださいね」
「はい!」
「任せてください!」
「任せて!可愛い可愛いウチの皓くんのためなら、メイメイ、お姉ちゃんとして頑張るよ!」
「ちょっと待ってください、メイメイさん!皓くんは私の弟ですし、私が皓のお姉ちゃんなんです!横取りしないでください!」
「えー。いいでしょ~?減るもんじゃないし~」
そう言いながら、鈴ねーを煽るように再び僕をぎゅっと抱きついてくるメイメイさん。
それに対して当然のごとく、鈴ねーがタコのように頬を真っ赤に染め、メイメイさんから僕を引き離そうと飛びついてきた。
「ダメです!減ります!早く私の皓くんを返してください!」
「う、うぅッ。鈴ねー?そっちに引っ張らないでぇぇ〜。首が絞まるよ!?」
「えーッ。リンネちゃんのケチ~!もうちょっとだけ皓くんの可愛さを堪能させてよ~。っていうか皓くんも言ってるでしょ?私を引っ張らないでってさ!」
「メイメイさん?ちょっと、メイメイさんも手を離してください!首が絞まりますから……!!」
「ほら!メイメイさんこそ手を離してください!皓くんが嫌がってるじゃないですか!」
ああ!もうっ!!二人とも僕を離して!首が絞まる!こんなの僕が望んだチヤホヤじゃないぃぃぃッ!!!




