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第11話 清水鈴side

 

「……それでね! 幼稚園の頃の私のコンくんがどれだけ可愛かったかっていうと!」


[うわぁ……。まだ続くんかい]

[うんうん。分かった。リンネちゃん。分かったからもうやめようか]

[その話、前回の配信でも言ってたからwwwww]

[弟くん可愛いとは思うけど、流石に同じ話を何度も聞かされるとね……]

[俺らはもう慣れたよ。むしろリンネのこういうボケたところを見るためにこのチャンネル見てるし]

[オイラも~]

[あっ! 思い出した! リンネちゃんの弟って子、あのライブの子じゃない? ほら、ケモミミの]

[ケモミミって何……あっ]

[お前らケモミミショタとかマンガの見すぎ。現実を見ろよ]

[いや、ほら。これ。【切り抜きURL…】]

[えっ。マジ? これどう見てもリンネちゃんの弟くんにしか見えないんだけど]

[同意]

[というか、リンネさっきから何も喋ってないけど。もしかしてマジであの動画の子、弟くん本人?]


「……チガイマスケド?」


 ヒューヒューと出来もしない口笛を吹きながら目を逸らす、リンネ。

 どこをどう見ても嘘をついているのがバレバレなその姿に面白がった視聴者たちで、コメントがまた火を噴いた。


[目逸らしたな。はい。本人確定ー]

[いやー、リンネちゃんの弟がケモミミショタだったなんてびっくりしたわー]

[何? ケモミミショタって? 俺今来たんだけどkwsk]

[リンネの弟がこの動画に出てくるケモミミの子って話【切り抜きURL…】]

[ウヒョオオオオ――!!!!! 何これ!! この子可愛いんだけど!!!! オイラの弟にしたいんだけど!!!]

[お前ただのケモミミショタ目当てだろ]

[おう。そうだが?]

[こいつ開き直りやがった!]


 既にライブに出てくる子がリンネの弟であるコンだと確信しているような口ぶり。

 ここまで来たらいくら知らんぷりをしても意味がないと気づいたリンは、仕方なく諦めた顔で頷いた。


「ええと、はい。ソウデス。動画の子、私の弟のコンくんで合ってマス」


 そしてそんなリンネの肯定に、視聴者たちの反応が一層盛り上がった。


[うお! マジで本人かよ!]

[ケモミミショタペロペロ]

[お前テメェ……俺にもよこせ!! テヘテヘ]

[ここには変態しかいないのかよ……。俺も好きだけど。ペロペロテヘテヘ]

[お前もかよwwww]

[で、リンネちゃん俺っちちょっと気になることがあるんだけど。あのケモミミ本物? ネットで合成か否かちょっと話題になってたんだけど。どっち? リンネちゃんの弟、本当にケモミミ生えてんの?]


「ええと、一応ソウデス」


 視聴者たちの質問にしぶしぶと言いたくなさげに答えるリンネ。

 なんとかこの状況から逃げられないかと考えるが、良いアイデアは思い浮かばず。

 むしろ嫌がるその姿に、ファンたちのいたずら心が火を噴いた。


[一応って何だよwwwwwww]

[というか何でさっきから片言なの?wwwww]

[それよりリンネちゃんズルい~ どうせ一人で見たんだろ? 俺たちにも見せてよ! 俺たち友達だろ?]

[そうそう!]

[そうそう! ショタの独り占めは良くない! テヘテヘ]

[そうそう! 俺たちにもケモミミショタを堪能させろ!! テヘテヘ]

[お前らwwww]


 からかうように責めるファンたち。

 どこをどう見ても面白がっているファンたちだったが、まさか自分のファンに皓があのライブの子だと気づかれるとは思わなかったリンネは、みんなの反応に焦りまくった結果、ブチギレて顔を真っ赤にしこう叫んだ。


「べ、別に独り占めなんてしてな、ないし!あ、あと!ここ私のチャンネル!だから!私に集中してよ! これ私の配信なんだからね!」


 しばしの沈黙。

 しかしそれは本当に一瞬のことで。

 すぐにコメントウィンドウがファンたちのからかうコメントで埋め尽くされた。


[お前、それを言ったらゲストを立てるのも主の仕事だろ!wwwwwwww]

[ウケるwwww どうせあれだろ? 弟の可愛い姿を見せたくないとかそういうことだろ?wwwwww]

[あり得るwww リンネちゃん弟くん大好きだもんねwwwww]


「うぐっ!」


 ファンたちの言葉に図星を突かれて肩をビクつかせるリンネ。

 みんなの言う通り、リンネは皓の可愛い姿を独占したいという思いのあまり、元の計画を無視してライブを進行していたのだった。このライブを機にみんなの視線を集めて認知度を上げるつもりだった皓からしたら呆れる考えだが……これはリンネに自分の計画を隠していた皓のせいでもあるのでリンネだけの責任とは言えなかった。

 ともかく自分の本心をファンの皆にバレてしまったリンネは、結局目に涙を浮かべながらこう言うしかなかった。


「わ、分かったわよ! あ、後でちゃんとコンくんにお願いしておくから! この話は後で! 後でしよ!!」


[分かったwww 後でなwwwww]

[忘れるなよ? 忘れさせないけど(笑)]

[リンネ虐]


 話をすることを可能な限り後回しにしたいのが見え見えの反応。

 しかしそれすらも面白いと思ったみんなは、からかいはするが、今は見逃してあげることにしたようだった。

 そうやってリンネをいじる人がちょこちょこいる、普段通りの状態に戻ったコメントウィンドウ。


 そしてそんなみんなのおかげでようやく普段の様子を取り戻したリンネだったが……そんな平和は長く続かなかった。

 皓のケモミミの話が出た時からチラチラと皓を映している画面をのぞいていた視聴者の一人が、コメントウィンドウに不安を煽るようなコメントを書いたからだ。


[えっ、リンネちゃん。ちょっと弟くん側の画面がおかしいんだけど。弟くんちゃんと広場にいる?]


 そんな視聴者の質問に当たり前のようにさっきまで皓がいた場所に視線を向けるリンネ。

 しかし当然そこに皓はなく。


「えっ? コンくん? コンくんならあそこに――いない!? 配信は……繋がってるけど……えッ! あそこどこ!?」


 画面が全く見知らぬ場所を映していることに、リンネの表情が緊迫したものへと変わった。


[あ、本当だ]

[えっ、弟くんいまどこ?]

[あのさ、俺見てたんだけど……。弟くん、多分隠し通路か何かに入ったんだと思う]


「えっ? 隠し通路!?」


 視聴者からの情報に食いつくように反応するリンネ。

 そんな反応に状況の深刻さを悟った視聴者が、すぐに自分の知っている情報をコメントで書いた。


[うん。隠し通路や特殊なトラップとかにかかると、一時的にカメラ画面がフリーズすることがあるんだけど。あの場所が映る前に弟くんの画面がちょっとそうなってた]

[ヤバい! ケモミミショタくんのピンチ!! 助けに行かなきゃ!!]

[知らなかった。隠し通路に入るとカメラのトラブルが発生するのか]

[てかあのダンジョンに隠し通路なんてあったけ?]

[知らんわ! というかお前らそんな話をしてる場合じゃないだろ! 早く何とかしないと!]

[そうだ! 命が危険かもしれないんだぞ!]

[俺ダンジョン協会に救出要請出してきた。奴らのろまだからどれくらいかかるかは分からないけど……]


 ファンからの情報を通して、皓が隠し通路に入った確率が高いと知らされたリンネ。

 大好きな弟の皓が 危機に瀕しているかもしれないという事実に真っ青になった。


「どう、どうしよう! こう、コンくん! 助けに行かなきゃ! ねぇ! あの場所に入る方法知ってる人いる!?」


[どうかな……。そもそも『悲嘆の白い獣』に隠し通路があるのも初耳だしな……]

[運が良ければ後から隠し通路に入ることもあると聞いたことあるけど。本当に運任せ]

[ナムアミ]

[おい。上の奴。ふざけるなよ。ボコるぞ]

[ハッ! やってみろ!]


 イレギュラーな状況に荒ぶる視聴者たち。

 それを見ていたリンネは、今までに見せたことのない表情で視聴者に向かって叫んだ。


「みんな喧嘩は後にしてッ! さっき情報教えてくれた人ありがとう。い、一応私はこ、コンくんが消えた場所を探してみるから。みんなナビお願い!」


 そこまで言ったリンネは自分の情けなさに唇を噛み締めながら、すぐに視聴者たちのナビに従って動き始めた。


 こんなことになるなら、いくら死亡者がこれまで一人も出たことがないということで有名なダンジョンだとしても皓を一人にするんじゃなかった!

 いや、そもそも大好きな弟と配信をしたいからってワガママを言って、皓くんをダンジョンに連れて来るんじゃなかった!

 そうしてたらこんなこと起きなかったはずなのに!!


 皓くんお願い! 無事でいて!!


 リンネ、皓のお姉ちゃん清水鈴は、皓が最後にいた場所へと走っていきながら、青ざめた顔でそう祈るのだった。




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