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第5話  ヒロインはトラブルに巻き込まれやすい③


 配置につき、シエフからの連絡を待つ。

 今、私は拠点の近くの森に潜伏している。


 ……よくもまぁ、こんな物を作ったな。


 前方に見える拠点に目を向ける。

 街へと続く街道上に設けられており、関所と言った方が近いだろうか。

 だが、関所としては堅牢な作りをしている。


 ……こんな壁で囲って、何と戦うつもりなんだ? 


 拠点を囲うようにして、石材と木材による二重の壁が設置されており、戦争でもするつもりなのかと思える。

 この辺には、危険な魔獣は生息しているが街道に出てくることは滅多にない。

 せいぜい街道を通る物資を狙って盗賊が現れるくらいだろう。


 ……ふふっ、壊しがいがあるな。


 もっと貧相な拠点を想像していたので、好都合だった。

 すると、頭の中に通信音が鳴る。


「……やっと来たようだな」


 シエフからの連絡が来たようだ。

 空中にディスプレイを展開し、通信を繋げる。

 画面にシエフを含めた3人の顔が表示された。


『あー。テステス。こちらはシエフ。全員聞こえているかのう?』


『こちらカノン。聞こえている』


『はーい! ソーちゃんも聞こえているよー!』


「こっちも問題ない。キルシュさんの救出は終わったのか?」


『うむ。先ほど何の問題もなく完了したぞ。キルシュも睡眠薬でぐっすりと眠らせれれているだけで、外傷はないから安心するがよい』


 シエフの言葉に皆が安堵の表情を浮かべる。


「キルシュさんが捕まっていた場所の犯人どもは、殲滅済みだな?」


『もちろんじゃ。1人残らず、あの世に行ってもらった』


「わかった。では、第二段階の開始だな?」


『うむ』


 シエフの言葉を受け、虚空から大鎌を取り出す。

 これで思う存分、暴れることができる。


『改めて作戦を確認するが、わらわの合図と共に、同時に拠点を襲撃。そして1人残らず殲滅。その後は、事前に連絡した場所に集合し、わらわのゲートで本部へと向かう。これで良いな』


「ああ」

『問題ない』

『いいよー!』


 皆それぞれ返事をする。


『うむ。あ、それと拠点の殲滅はなるべく早く終わらせるようにな? あまり遊び過ぎても、ここはまだ前哨戦。本番はこの後じゃからな』


 そんなことは、言われなくてもわかっている。


『では、始めるとするかのう』


 木陰から出て、目の前の拠点を見据える。


『さぁ、しょーたいむじゃ!』


 そしてシエフの合図と共に、拠点へと赴いた。

 どうか、この襲撃が虐殺ではなく戦いになりますように。


 ◇◇◇


「まずは、邪魔な建物を破壊させてもらおう」


 拠点への街道を歩きながら、左手に魔力を込める。

 この魔法は、生物に対しては無力だ。

 だが、対象範囲内のあらゆる物を崩壊させることができる。

 鉄だろうと石だろうと何でもだ。


「ん? おい! 貴様! そこで何をしている!」


 門番が街道の灯りに照らされながら歩み寄る私に気づいた。

 即座に手をかざして、私を制止しようとする。


「夜に街道を通ることは禁じられている! すぐさま立ち去れ!」


「ふふっ、ちょっとした観光だ」


「観光だと? ……ん? ――貴様! その右手に持つ武器はなんだ!」


 やっと私の武器に気がついたようで、門番の男が剣を抜いた。


「ん? これか? これは見た通り鎌だよ」


「ふざけているのか! すぐに武器をしまって立ち去れ! でないと貴様を捕縛する!」


「捕縛? ははっ! ぬるいな!」


「何だと!」


 2人の門番が武器に魔力を込め始める。


 ……ほんと。間抜けな奴らだな。


 さっさと攻撃して、制圧すればいいものを。

 そうすれば、多少は長く生きられたのにな。


「そこはすぐにでも仕掛けるのが鉄則だぞ。覚えておくがいい。……と言っても、もう使うことはないだろうがな……」


「貴様を何を――」


「だから、それがダメだと言っているんだよ」


 地面を蹴り、男に急接近する。

 そして右手の大鎌で男を横なぎする。


「――ガハッ!」


 男の胴と下半身が分かたれる。


「アルヴ――」


「貴様も仲間の名前を呼ぶ暇があるなら、距離をとれ」


「あ――」


 もう一人の男の背後に回り込む。

 そして、その首を刎ね飛ばす。

 自分に何が起きたかもわからずに男の首が宙を舞った。


「――さて、魔力も十分に溜まったな」


 左手に溜め込んだ魔力は、今にも溢れ出そうであった。

 魔女との戦闘で使用した時とは魔力量が桁違いだ。


「この要塞なら、このくらいは必要だからな」


 左手を閉ざされた頑強な門へと向ける。


「さあ、すべてを粉砕せよ……『カイナ』」


 そして唱えた。

 すべてを粉砕する魔法を。


 その瞬間。

 拠点の半分が砕け散った。

 門も。塀も。建物も。

 すべてが、粉々に砕け散る。


「ははっ! これで見通しが良くなった。さて、せめてウォーミングアップくらいにはなってくれたまえよ?」


 ◇◇◇


 拠点に入っていくと、男や女どもが皆、砕け散った建物を前にして呆然と立ち尽くしていた。

 自分の身に何が起きたか理解できていないのだろう。


「な、何が起こったんだ!?」


「そんなの俺が知るか!? 突然、何もかも――」


「おい! どうし――ヒィ!?」


 隣で真っ二つになった男を見て怯えている男に、話しかける。


「こんばんは。調子はどうかね?」


「だ、誰だ! お前が――」


「不正解だ」


 男の首を刎ねる。


「襲撃犯に話しかけてどうする。そこは斬りかからないとな」


「て、敵襲ーー!!」


 ようやく理解した者が現れたようだな。


 ……ふふっ、それでいい。


 状況を理解した者たちが武器を持って、集まってくる。


「戦闘可能な者は、全員武器を持て! 非戦闘員は、動けぬ者を救助しながらこの拠点から退避しろ!」


 その中で一人の男が周囲に指示を出していた。

 この大剣を担いだ男が、この拠点の責任者なのだろうか。

 だが、相手をする前にやることがある。


「残念だが、誰も逃がすわけにはいかないでな」


「……!? 貴様は何を言って――」


 大鎌に魔力を込める。


「――魔法!? 全員! あの女を止めろぉ!!!」


 大剣を持った男の掛け声と共に、皆が私に攻撃を仕掛けた。

 ある者は、魔法で。

 ある者は、魔法で強化した武器で。

 ある者は、弓で。


 ……ははっ! ぬるいな!


 魔力を込め続けている大鎌で周囲を薙ぎ払う。


「クソッ!」


 薙ぎ払いで発生した強風に、攻撃を仕掛けて来た者たちが吹き飛ばされる。

 そして同時に大鎌に蓄えていた魔力を解放した。


「すべてを縛り付けろ!……『アンテノラ』!」


 解放された魔力は冷気となって、拠点全体へと広がっていく。


「全員、気をつけろ!! どんな魔法かわから――なに!?」


 周囲に注意を促していた男が急に片膝をついた。

 いや、片膝をつかざるを得ない。


「あ、足が動かん!?」


「ギリア隊長! 動けません!」


「こ、こっちもダメです!!」


「な、何が起こっていると言うんだ!?」


 周囲の光景にギリアと呼ばれた男の顔が驚愕に染まっていく。


 ……無理もないだろう。


 周囲にいる者――いや、この拠点にいる者すべてが、動けなくなっているのだから。


「どうかね? 私の魔法は? 素晴らしいだろ?」


「このっ……!?」


 男が大剣を地面に突き刺して、必死に立ち上がろうとする。

 しかし、膝を上げることができていない。


「はぁぁぁーー!!」


 今度は魔力を込めて立ち上がろうとする。

 だが、それはこの魔法の前では意味をなさない。


「なに!? 魔力が吸われていくだと……!?」


「ははっ! 素晴らしいだろう? この魔法は、対象範囲の者を縛り付け、魔力を使用するとすべてを吸収するのだよ」


 男が歯を食いしばっている。


「ふ、ふざけるな!! 貴様の目的は何だ! ここはギルド極北の風の拠点だぞ! 襲撃などすれば、すぐにでも増援が――」


「残念だが、増援は来ない」


「何だと! 何故貴様にそんなことが――」


 男に向かって言い放つ。


「――今頃はここと同じように襲撃されているからな」


「!?」


 私の言葉に男が大きく目を見開く。

 だが、すぐにこちらを睨み殺気を向けてくる。


「……ふざけるな! 貴様――いや、貴様たちの目的は何だ!?」


「簡単なことだよ。愛する者の平穏を脅かす脅威の排除……いや、罪深き者の粛清だな」


「愛する者? 罪深き者だと? 何を言っている!」


「ふふっ。自分で犯した罪も理解できないとは滑稽だな」


「何だと!?」


 そろそろ良いだろう。

 この拠点の中で一番の実力者と思われる目の前の男は、私の魔法にあらがえなかった。

 それはつまり、この拠点には実力者はいないということ。

 だったら、もうここには用はない。

 すべてを終わりにしよう。


「まぁ、ゆっくりと考える時間はある。だから――」


 再び大鎌に魔力を込め始めた。


「貴様! 何を――な、なんだその魔力量は!?」


 男も、私が大鎌に込め始めた魔力量がこれまでと桁違いであることに気がついたようだ。

 惜しい男だ。

 もっと鍛えれば、素晴らしい魔剣士にでもなっただろうに。


「貴様たちから頂戴した魔力をお返しさせてもらうよ」


「このぉ……!!」


 男が最後の力を振り絞り立ち上がろうとする。

 しかし、男の願いは届かない。

 体は地面に縛り付けられており、拘束を解くことができない。


「では、これでさよならだ。あの世で自分の犯した罪について、ゆっくりと考えるがいい」


「よ、よせ!?」


 周囲から吸収した魔力を解き放つ。


「暴食の蛇よ、すべて喰らいつくせ……『トロメア』」


「やめ――」


 魔力が解き放たれると同時に、地面から無数の氷の大蛇が這い出る。

 そして縛り付けられた生物のすべてが、大蛇によって喰いつくされていった。


 ◇◇◇


「まぁ、魔法のウォーミングアップにはなっただろう」


 何もかも喰いつくされた周囲を見て呟いた。

 木材や石材の破片は残っているものの、生物の痕跡は何も残っていない。


「さすがにこれだけの魔力を使えば、百人程度は余裕だったな」


 ここまでの魔力を使って放ったのは初めてだったので、いい経験だった。


「さて、他も終わっているだろうから、集合場所へと向かうとするか」


 第二段階が終了しただけ。

 第三段階。最終フェーズがまだ残っている。


「ふふっ。さて私を楽しませてくれる者はいるか……楽しみだ」


 今度は、簡単に終わっては困る。

 そう思いつつ、集合場所へと向かった。



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