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第6話 「試練、承ります。」

事件が終息して一休み。商売を始めたり情報を集めたりし始めたのは良かったのですが・・・。

アーシェラのターンです。(ちょっとだけルミのターンでもあります)

「暖かい毛織物、毛皮はいかがですかー」


師匠(ルチア)に言われたとおり、声を上げて売り子をしてみる。

商品価格を少し高めに設定しているせいか、売上はぽつぽつと、といった感じで爆発的な売り上げにはなっていない。

秋も深まりもうすぐ冬の気配がする市場には、収穫祭を前に少しだけ浮かれた空気が漂っている。

シンジたちの露天は寒風が吹きぬける風通しの良い場所にあり、少しだけ寒さが目立つのだが、シンジがVRMMOのとあるイベントでインテリアとしてGETしていた達磨ストーブを露天脇に設置したおかげでそんな立地であってもけっこう暖かい。

燃料はなぜか魔力らしく、魔力が沢山有り余っているシンジ達には燃費のかからない良い暖房器具になっている。


「おっ。寒い場所でもストーブ設置とはありがたい。」


収穫祭もあいまって市場を行く人々の数も多い。そしてその人々は寒さが目立ち始めたこの季節、自然と暖かい場所に集まってくる。

シンジ達の商品は物は売れていないが、繁盛した露天の様相を呈していた。


「そういえば神殿に新しい神官さんが来たらしいのお。かなり美人と言っておったな。わしも一度は拝みに行かねば」


「はっはっは、おやっさんも好きですな。新しい迷宮も近所に見つかったようだし、シュバリクももっとにぎやかになると良いですけどね」


「うむ。ただ、野菜ばかりの迷宮らしくてな。肉が取れる迷宮も発生してほしいものだ。毎日野菜スープでは力が出ない」


「ははっ是非そうなるといいですね」


炉辺会議はいろいろな情報をもたらしてくれる。


「シンジ。神殿に美人の神官ですってよ。一度見に行ったら良いんじゃない? コネにもなるし、あそこはあたしらに恩義を貰っているから特別なご・ほ・う・びがあるかもよ?」


「ミカエラもだんだんオヤジちっくになって・・・あいたた。つねらないで。 そうだね。一度は様子を見に行ってみようか」


物も売れないのに人が集まりすぎたこともあって、露天を早めにたたんだシンジ達は神殿に向かうことにした。

街角暖房、達磨ストーブの撤去は皆に非常に惜しまれていた。また来いよ、と炉辺会議の面々。商品も買ってねと主張することは忘れなかった。


神殿にぞろぞろと4人でやって来たシンジ達。神殿はものすごい人でごった返していた。


「こんにちわー。盛況ですねぇ。」


シンジは人ごみの中心、参拝の人々にあわただしく対応しているムスムを見つけ声を掛けた。


「いらっしゃいませ、シンジさん。今は収穫祭の後に来る冬の星祭神事が近いのでいろいろ立て込んでいるのですよ」


冬の星祭神事とは、クリスマスイベントのことであった。アラベスクの世界でクリスマスはあまり似合わないので無理やりとってつけたイベントだったと記憶している。中身はそのままクリスマスだったため、神殿に皆集まって参拝したり結婚したり。当時はかなりにぎやかなイベントだった。


「そうですか。もうそんな時期なんですね。ところで新しい神官さんが来たと聞いたんですけど、どちらかにいらっしゃいますか? 挨拶だけでもしておきたいと思いましたので」


噂話で聞いていた美人さんに会ってみようと声を掛けたのだった。


「エリナさんですね。今は奥でアミュレット(お守り)の聖別をやっていると思います。かなり量があるので今日は一日それにかかりきりだと思います。それにこの忙しさも今日にはいったん落ち着きますので、明日また来られてはいかがでしょうか。」


「シンジ、収穫祭期間中はあまりゆっくり出来ないから、神官さんに会うのは明日にするとして、神殿の中は今日のうちに見させてもらったらどうかしら?」


「そうだね、ミカエラ。じゃあ、ムスムさん。少しだけお参りしたら今日はいったん帰ります。ではまた」


「お気をつけて」


人々の列を見ていると祭壇の部屋に入る前で曲がって、受付のようなところでなにか受付をして、解散して行っているようだ。覗き込んでみると結婚式の申込書に名前を書き入れていたのだった。


「星祭の結婚ラッシュの申し込み・・・ね。」


聞いたところによれば、この世界での結婚式は非常に簡単に終わるものが殆どだそうだ。神殿で祝福を貰って、IDカードに夫婦であることを魔力で追記してもらう儀式らしい。裕福な者であればパーティなどを開きお披露目をしたり、神官をわざわざ呼び出して盛大な結婚式を屋敷で執り行ったりする場合もあるらしい。結婚式は神殿にお布施が必要になるが、冬の星祭神事のこの時期は少し割引されるので、結婚式のラッシュになるということだった。


「結婚ねぇ・・・シンジはあの頃、だれかと結婚してたの?」


「うーん。あの頃も結婚はしなかったなぁ。結婚自体はうらやましいと言うよりメンドクサイ感じだったよ。そういうミカエラは?」


「あたしもしてないなぁ。養子はやたら居たように記憶してるんだけど。280年もエルフやってると養子縁組の話が尽きなくて、ね」


「シンジ様は未婚・・・ルミにもチャンスが!?」


「これこれ、奴隷はん。結婚は誰でもできるけど資金は誰が出すん? 割引でも一組当たり銀貨100枚はかかるで」


「そうだった・・・(しょぼん)雀の涙のあたしのお小遣い・・・って! 今の手持ちは銀貨100枚!! これは・・・いけるっ!!」


「「「いくなぁ!!」」」


全員でルミに総ツッコミ。バカばっかりやってる一行は神殿を後にした。その姿を見ているもう一人の獣人の姿に気がつくことも無く。


「・・・シンジは未婚なんだニャ・・・おいらにもチャンスがあるといいニャ。明日もう一度来てみるニャ」



・・・

・・・・・・



翌日。朝から神殿にやってきたのはシンジとルミ。ルチアは露天の番へ、ミカエラは宿に繋いである動物の世話をしに行ってくれている。

ムスムの言ったとおり今日はだいぶすいているようだ。結婚式申し込みラッシュが終わったのだろう。


「いらっしゃいませ。シンジさんにルミさん。今日は落ち着いていますからゆっくりしていってください。そうだ、ご紹介しますよ、エリナさん! お話していたお客様がおいでになりました。執務室にお通ししますから着替えてお越しください」


ムスムに執務室に案内され、香りの良い紅茶を振舞われる。安い報酬で神殿の危機を救ったのだからとシュバリクの神殿で手に入る精一杯の高級なお茶を淹れて厚遇してくれているようだ。

香りを楽しんでいるとムスムと一緒に綺麗なブロンドをベールにしまい込んだ女性がやってきた。おでこちゃんである。そしてなにより・・・超美人だった。


「おはようございます、エリナと申します。アンキアの神殿から臨時に派遣されてきました。ムスムからお話は伺っております。その節はバビロン教団にご協力頂き、ありがとうございました」


礼儀正しくお礼をしてくる。となりからムスムがフォローしてくる。


「エリナさんはアンキア大神殿の大神官なのです。今回捕縛したリッチの浄化のためにお越しいただいていまして、次の安息日に浄化をしてくださる予定になっています。バラムもこれで浮かばれるといいのですが」


リッチを浄化できる能力、ということはエリナはかなりレベルが高い神官のようだ。おそらく【エクソシズム】あたりを行使するのだろう。


「ムスムが申し上げた以外にも、実はもうひとつシュバリクに用事がありまして。アンキア大神殿での星祭準備期間の就寝中に神託を受けたのです。神がおっしゃるには”獣人の巫女がハーフエルフの青年の助けを必要としている。あなたがシュバリクへ行き二人を引き合わせ協力させてやりなさい”ということでした。獣人の巫女にはまだ会えておりませんが、ハーフエルフの青年はきっとあなたのことなのでしょう。神殿でももう何年もあなた以外にハーフエルフの方を見掛けた人は居ないそうですから。」


なにやら事件に巻き込まれそうな匂い。「めんどくさいなー」という気持ちの同意を求めてルミの顔を見ると、ルミの目が輝いていた。やる気満々らしい。なぜだ。


「実はわたしは獣人の巫女なのです。さあシンジ様。助けてください!」


「な、わけないだろ、ルミ。かまってほしかったの?」


「はい! すぐにでも頭をなでてください!!」(尻尾盛大にふりふり)


尻尾の振りが全開なルミ。寂しかったのだろう。最近商売とかにかかりきりで構ってやれなかったからなあ。。。


「じゃあ、宿でいっぱいなでてあげるから、いまは我慢しようか?」


あ、さらに超尻尾振ってる。うん。宿に着いたら丹精こめてブラッシングしたり撫で回したりしてやろう。


「あ、あのー。。。続きをお話してもよろしいでしょうか?」


「あ、ああ、すいません。ちょっと内輪ネタに走ってしまいました。 こちらも実はお願いしたい件があるので、そちらのお話の後、お願いをさせていただきます。」


「承知しました。それで、神託の続きなんですが、あなたが協力すべき獣人の人は先日の戦闘で一緒に戦った方のようなのです。(不浄と共に戦いし青年と巫女)と神託を受けておりますので・・・シンジ殿の記憶にありませんか?」


エリナさんの話に反応してルミの目がまたランランと輝いているけど、とりあえず見なかったことにする。


「あのときは・・・他の獣人とすると猫ちゃんが居たような気がする。アーシェラ・・・だったかな?」


猪突猛進、までは行かないけど思い切り前衛系のキャラだった気がする。シンジの印象としても巫女、という風情ではなかったと思っている。


「獣人は二人、アーシェラさんとこちらのルミさんがご一緒に戦ったのですね。ムスムさん。あとでアーシェラさんという方を探してください。お願いいたします。さて、とりあえずアーシェラさんが見つかるまではあなた方への報酬の内容をお聞きしましょう」


「はい。先日の戦いの報酬ということでこちらの神殿の蔵書を拝見させていただきたいとお願いしていたので、さっそく拝見させて頂いても宜しいでしょうか?」


「禁書のあたりはもちろんお見せできませんが、その他のものであればご覧頂いて結構ですよ。ところで、どのような本をお探しなのですか?」


「伝承とか、歴史に関するものを探しています。とある探し物がありまして。そのヒントがないかと探しているのです」


過去数百年にプレイヤーの足跡でもあれば、帰る手段の手がかりがあるかもしれない・・・


「そうですか。歴史伝承であれば少しはバリエーションがあったはずです。アーシェラさんを待つ間に、主任神官用の書斎にご案内しますから、そこでご覧になっていてください。本は係りのものに持たせます。」


すこしだけ雑然とした書斎に通されたシンジたち。図書の係りの神官が持ち込まれた本の山から分厚い歴史書をひっぱり出す。


「こちらの史書のシリーズは過去500年のこの国の歴史を綴ったものだそうです。発行されたのは先代の国王フェルナンド12世の治世で、40年前になります。」


『アルタード王国記 紀元87-590』


「このアルタード王国というのは・・・?」


「はい。アンキアを中心とした10都市の連合王国です。経済的な結びつきと軍事的な同盟です。盟主=王はアンキア王です。現在はクラウド1世の治世になっています。アンキア、シャナディ、ホタニア、セリューク、トルハラ、トルタン、チャガハン、クファン、シュバリク、ルクメンが参加しています。参加都市が東に集中しているので東部連合王国と呼ばれることもありますね。」


(都市攻城戦の名残かな。。。大手同盟がCvC(キャラバンvsキャラバン)で多都市を一括防衛とか良く聞いた話だし)


「なるほど。西方面の田舎者でして、そのへんは良く知りませんでした。東部連合王国は実質的な支配とか、政治関与とかそういったこともあるのですか?」


「史書をご覧になれば分かりますが、各都市は平等に近い同盟で結ばれているようです。アンキアだけが戦の号令役として機能することがあるようですが、基本的な統治は各都市の支配者に委ねられているようです。ただ、最近はその関係もギクシャクしているような節が見受けられます。行商をされるときは気を付けられたほうが良いでしょう。」


地方で私服を肥やした者たちの反乱とか増長とかそういったことが発生しつつある、ということかな・・・権力者にプレイヤーが居たりしそうだけど、あまり関わり合いになりたくない人種かもしれないな・・・


「権力にかかわることはしたくないので、そのぐらいのことがわかれば身の振り方はなんとかなりそうです。。。あとは探し物のほうを探して見ます。貸していただいた本をじっくり読みたいのでしばらくお部屋をお借りします。」


「では、ごゆっくり。アーシェラさんが見えたら呼びに参ります」


挨拶をすると係りの神官は神殿のほうへ戻っていった。


シンジは史書をゆっくりと読む。帰還の手がかりになりそうなこと、自身の記憶に無い空白期間の事象の把握。それを意識しながら史書を読み進める。


史書の始めのほうはCvC(キャラバンバーサスキャラバン)のような形で各国で定期的に戦争が勃発し続けていたことが記されていた。この時期はまだプレイヤーが普通にプレイをしていた時期なのかもしれない。


紀元100年頃から戦争の間隔が開き始め、200年頃にはほぼ終息していたことが書かれている。戦争の終息はそれぞれの王のすばらしい人徳のおかげ、と美化が多少入って美談にされているのは歴史書の常なのだろう。


その後も小規模ではあるが戦がいくつか勃発しており、起こした都市国家の王が「狂王」という表現で記載されている。

ひとつの国の例だと、ある日ものすごい強者が国に現れ軍ごと王を打ち倒し、その国を乗っ取った。そしてその王は国外への攻勢を是とし国を動かし、各国へ戦争を仕掛けていったとある。

かなり強い国家だったようだが、数年後に突如として狂王が姿を消し、そのまま国家が瓦解、今残るオアシス国家群の発生の元になったらしい。

オアシス国家群は様々な民族の集まりだ。それぞれは仲良くしてはいるのだが、文化の違いで都市を分けざるを得ず、豊かなオアシスの恩恵に支えられて小さくてもそれぞれの都市が存続できる国になっているそうだ。


「狂王か・・・史書にあるだけで3人。この本だけだと通り一遍なことしか書かれてないから、もうすこし詳しいものを探さないとな・・・ここに無ければ実際の舞台になったオアシス国家群に行って史書を探してみるのも良いかも知れない」


シンジが一息ついた頃、丁度書斎のドアを開けてエリナとアーシェラ、それにルミが入ってきた。


「お待たせしました。アーシェラさんがお越しになりましたので、いっしょに祭壇のほうへお越しいただけますか?」


白いドレス風の神官衣に着替えたエリナさんに連れられ、3人は祭壇へ赴く。


「こんにちわだニャ、シンジ。神官さんに呼ばれてやってきたけど、ニャにがあるのかニャ?」


「さあ? 僕もよくわからないんだ。ルミはなにか聞いた?」


「えと、シンジ様。獣人の巫女の話があったと思うのですが」


「そうなんだけど。何をやらされるのか、とか聞いたかなと。」


小声で会話しながらエリナの後をついていくと祭壇に到着した。こちらを振り向いたエリナが宣言する。


「皆様。まずは神託をお伝えいたしますので、祭壇で神降ろしをいたしましょう。」


エリナが祭壇に上がり、祈りを捧げる。白い神官衣は神降ろしのための衣装らしい。しばらく待つとエリナが立ち上がりこちらを見て話し始めた。


「君主に使える獣の柱たる女神バーストが告げる! 汝、アーシェラは獣人(けものびと)の神の使徒として巫女のジョブに就くために試練を与える。電脳神(デウス・エクス・マキナ)シンジに助力を請い、試練を乗り越えよ」


「!! おいら、巫女が天職だったニャ!? 分かりました! 頑張ってシンジと一緒に巫女になるように頑張るニャ!!」


「汝、ルミは奴隷なるも同じく獣人(けものびと)の神の使徒として騎士のジョブに就くために試練を与える。アーシェラを守り、試練を乗り越えよ」


「わ、わたしも試練が・・・でも天職は騎士なのですか。分かりました。精一杯努めさせていただきます」


電脳神(デウス・エクス・マキナ)よ。迷える二人の獣を導き試練を乗り越えさせ給え。試練を越えし暁には貴殿が知りたき欠片が見つかることだろう。」


「・・・承知した。せいぜい頑張りましょう」


「では試練である! この地より西に出し迷宮の最下層。その地に囚われしか弱きものを助けよ。それぞれ巫女らしく、騎士らしく。得られる助力はすべて得るが良い。囚われし者はこの者である。今より10日の内に達成するがよい。」


空中に突如発生した1枚の羊皮紙。そこには羊の獣人の姿が描かれていた。ほぼ写真。画力すごいな。まじで。むしろ写真なのかもしれないけど。

神託を終えるとエリナが祭壇に設けられた椅子に疲れ果てた体でもたれかかる。神降ろしはかなりの体力を消耗するようだ。


「救出クエスト、ということか。西の迷宮といえば、1階層のBOSSだけ倒したあの野菜迷宮だな。。。期限もあるしさくっと準備してさくっと終わらせますかね!! たぶん5層くらいで終点だと思うし」


一人で元気良く言い放つシンジ。周りの3人は若干引き気味のようで・・・


「「「電脳神(デウス・エクス・マキナ)ってニャに?/なんですか?/なんなのでしょう?」」」


突っ込みどころってやっぱりそこですよねー。しかも何故か神→自分に対して敬語チックに話しかけられてたし。かんべんしてよー。獣の女神さん!


「ぼ、僕はハーフエルフだし、かなりのクエストをやって来てるんだ。以前に女神様のクエストも受けたことがあるし、神から貰ったあだ名みたいなものだったと思う! 多分! 僕、昔の記憶あいまいだし!!」


勢いでごまかした。もともと記憶があまり無いことにしていればとぼけるのも楽になるかも?だし。やっぱり神人への転生イベントはこなさないほうが良かったか・・・しかも選んだ神人もちょっと中二ちっく・・・うぐぐ、恥ずかしい・・・。


「そうですか。さぞ多くのクエストをこなされたのでしょう。神託で試練への支援名指しというのは珍しいのです。」


感心した様子のエリナ。普通神人にはならないからそのとおりですね・・・


神託も終わって、何はともあれクエストクリアのための準備を開始。今回のクエストはアーシェラを巫女に、ルミを騎士に。ふさわしい行動を取らせることっぽい。先行しがちなアーシェラとルミなので、ふさわしいポジションへ抑え込むのは一苦労しそうだ。ルチアとミカエラにも手伝ってもらって、アーシェラは後衛の、ルミは先頭でタンクの役割をしてもらわなくてはならない。当然、装備もそれに合わせて変更しなくてはならないだろう。


「まずは装備の変更と戦い方のブリーフィングだね。装備品は僕のコレクションから提供しよう。巫女服もあるし、スーツアーマーもある。手直しもさほどかからないと思う」


「シンジ様。わたしは出来れば金属鎧は避けたいのですが」


「おいらも金属鎧じゃない巫女服はなんとなくスースーして心もとなくなりそうなんだニャ・・・」


「ルミはタンク役だから敵の攻撃を受け続けないと職業特性が生きないし、アーシェラのほうは金属鎧を着ると魔力回路を阻害しちゃって魔法スキルが使えないよ? なんとか頑張れないかな。」


ルミとアーシェラを説得しながらミカエラとルチアに合流するためにまずは市場に向かう。ロングソードでパリィと言い張れば騎士のほうは鎧なしでもいいかもしれないけど、巫女のほうは金属鎧の時点でもう絶望だ。・・・困った。

そうこうしているうちにルチアに任せた露店にたどり着く。売れ行きは上々。というかもう売り切れてる。


「あ。シンジはん。はやくも売り切れたでー。この場で続けて商売するなら、交易品以外を扱うためにすこし街から離れて仕入れが必要やで?」


「お疲れ様、ルチア。それが、ちょっとしたクエスト支援依頼を受けちゃって、いっしょに手伝ってほしいことがあるんだ」


「うん? クエスト? ええで。手伝うと商人の神様の徳ポイントが入るし。徳がたまれば特別ボーナスの思し召しもあるっちゅうし、楽しみやな!」


いそいそと露店を片付けるルチア。商人の神様とかやっぱりいたのね・・・徳ポイントってなんだろう。


とりあえず、売上の清算はあとにしてまずはミカエラの待つ宿へ向かう。


「ただいま、ミカエラ。ちょっとクエスト支援依頼を受けちゃって。手伝ってほしいんだけど」


「なにか背負い込んできちゃったの? 手伝うのは手伝うけど。」


「わたし達獣人の女神様のクエストなのです」


「なんとなくわかったけど。いいわ、どうせ手伝わないわけに行かないんでしょうし、他に何か忙しいって訳でもないから」


「ありがとう。装備はとりあえずアーシェラだけこの普通の服に着替えてもらって、さっそく迷宮に挑もう! 誰か囚われて待ってるらしいので。。。」


「「「「了解!」」」」


とりあえず巫女のスキルが発動できる装備に換装だけしたあと、一行は見つけたばかりのあの迷宮へ向かう。階層は5層とさほど深くは無いのだが、今回のクエストは救出依頼なので隅々まで調査しないといけない。念のため探索系のスキルを短縮スキルにセットした。


「今回はいつもの戦闘フォーメーションを変更して、先頭をルミとシンジ、真ん中にルチアとアーシェラ、しんがりをあたし、というようにしようか。それぞれ役割は戦闘がタンク役と探索役。真ん中は攻撃補助と回復。しんがりはバックアタック対策と魔法支援ね。」


てきぱきとフォーメーションを決めていくミカエラ。効率を見ながら配置を決めて行ってくれるので非常に助かる。


「あとは・・・ジョブの職業特性とか教育とかはシンジにまかせるよ? あたしはその辺は良く分からないから」


シンジはスキルマスターの称号を持っている。これはすべてのスキルを習得可能であり、伝授もできる師範代という称号である。当然、騎士も巫女も伝授可能である。ジョブに付くには師匠に付き従ってスキルを覚えることから始まる。動作を覚えるとまずは0レベルとしてスキルの受け皿が出来上がる。これに対しクエストの成功や、決められた動作の決められた回数の反復などにより1レベルスキルを習得することが出来るのである。ジョブに必要なスキルを全部覚えると称号としてジョブが与えられ、晴れて職に着くことができるようになるのである。


「それじゃ、ルミは戦士系のスキルはほぼ網羅できているから、覚えていないカバーリングと、盾技術を覚えて・・・そのロングソードから手を離してっ。この盾とシミターを装備するように! それと金属鎧は嫌がってるけどスキルとして金属鎧着こなしがあるから、宿でみっちり修練するからね?」


「わかりました・・・鎧はいやですけど頑張ります・・・です・・・」


「アーシェラはまず【祈る】を覚えて。これ、聖句一覧ね。暗記できないとダメなのでがんばってね。戦闘では手当てのスキルを覚えよう。魔力をこめて相手の怪我が治るように【祈る】ことで発動するはずだから。慣れれば【祈る】を省略できるからこれも頑張ってね。それから前衛をしないように。積極的に攻撃する巫女はあまりいないので。。。」


「えっ。攻撃しちゃだめニャのか?」


戦う戦闘巫女様も居ないわけではないけど、世界観が違いすぎる。


「勘弁してクダサイ、アーシェラサン・・・」


ある意味クリアの難易度が高いのはダンジョンよりも本人達のクセ治しの方かもしれなかった。



某シューティングゲームとかいろいろ攻撃型巫女さんはいますけど。

やっぱりおしとやかにしてほしいんです。

そういう希望的観測。


思い切り戦闘タイプに傾きそうな気がしますけど。。。

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