【閑話休題】 シュバリクの夕暮れ
今回は番外。ミカエラとののんびりデートのお話です。
シュバリク。この街は白銀山脈からの雪解け水が地下から沸くことでオアシスとなった街である。
湧き水が昔から信仰のひとつとされ、人々が集ったことが街の始まりであるが、現在は度重なる戦争や、国の興亡などを経て大きな街に進化している。信仰されていた湧き水の祠もいつしか大きな宗教に飲み込まれ、その痕跡をのこすだけだ。
現在はバビロン教が最大勢力であるが、このような土着の宗教の名残が残っていることも魅力のひとつだ。
泉の傍を歩くと祭りの屋台が準備を始めているのが見える。
秋から冬にかけてのこの時期、秋の収穫祭が開かれるのだ。振舞われるのは遊牧の民が良く立ち寄るここシュバリクならでは、羊の料理だ。オアシスでは魚も取れるため魚も食卓に上がるが、宗教的な色が強い羊の料理のほうが、味とボリュームもあいまって人気が高い。焼肉、それから煮込んだスープ。屋台で食べるその味はまた格別だ。
「このあたりは遊牧民の居留地も兼ねているのね。遊牧の家畜たちは湿気を嫌うから砂漠に近い草原で暮らすことが殆どだそうよ。羊とかヤクとか。毛が取れる動物は特にその傾向が強いんですって」
「さすがにミカエラはいろいろ知ってるなぁ。僕は羊といえばジンギスカンくらいしか思い浮かばないよ・・・」
「この世界で暮らして280年だもの。でもまだまだ知らないこともありそうで旅をするのは楽しみなの。たとえばジンギスカン、といわれてもあたしは知らなかったり、ね。」
シンジとミカエラは二人並んで準備中の屋台を見て回っていた。同じエルフ同士、そして恋人に見えなくも無いようで、屋台の人たちから好き勝手な掛け声があった。シンジは軽く流していたが・・・
「おっ熱々だね? まだ祭りには早いよ、ご両人!」
「あんまりからかわないでよ、仲間ってだけだよ」
「祭の時にはうちにこいよ! カップル割引とかするからさ!」
「あーはいはい、そのときはお願いしますね~」
「・・・むぅ」
「ん? どうしたの? ミカエラ。ひょっとしてなにか悩み事でも?」
「むぅ~。少しはこう、その気でも見せてくれたり、照れたりしても良いものを・・・」
「???」
若干すね気味のミカエラとさっぱり分かっていないシンジ。シンジの意思はまだまだお友達のそれに近い。もとよりシンジは童貞=年齢という有様、どうやったら甘い雰囲気とかそういった関係になるのか見当も付かないでいたりする。もっと言えばそのあたりに疎い朴念仁ということなのだろうが。
「うん。まぁ、気にしないで。さあさあ、ここから先は城壁広場ですって。見張りのための頂上の道の一部が公園のようになっていて景色が良いそうよ。ちょっと登ってみましょう」
「ああ。ゲーム中はあまりそういうことも無かったからね。どんな景色なんだろうね」
気を取り直したミカエラに先導され、シンジは街壁に登る階段を登っていった。急傾斜の階段は街壁をジグザグに据え付けられていて登るのも一苦労。そして、登りきった二人の目に飛び込んできたのは街壁のはるか向こうに広がる砂漠の夕暮れだった。冬は特に乾季でもあるため、遠くまで雲も無く見通すことが出来る。
「うわ。これは綺麗な風景だ・・・頑張って急な階段を登った甲斐があるね」
関心しきりのシンジに、夕日に照らされ少々赤いような顔を夕日へ向けたままミカエラが囁いた。
「シンジ。カモフラージュを解いた状態でゆっくり話さない? 姿を偽ったままだとお互い距離も遠いままだし、なにより一度シンジの真の姿をみてみたいもの」
シンジのほうを見てミカエラが小さく笑う。
夕日は橙色に色づき、砂漠の地平線に沈んでいく。半分になり・・・さらに赤さを増し・・・沈み、周囲が夜の闇へと暮れていく。
遠くに砂嵐の残滓を見届け、ミカエラがシンジのほうを振り向いた。目が潤んでおり・・・景色に感動しているようにも見えた。
「こういうのを絶景というのかしらね・・・シンジはちょっとロマンチックになったりしなかった?」
そのまま目をつぶりさらに接近するミカエラ。良い雰囲気・・・なのだろう、普通なら。
「そう・・だね。でも自分、今、まさに蛇に睨まれたカエル状態であります・・・」
シンジから見るとミカエラの立っている場所からさらに後ろ。階段から半分だけ身を乗り出し、ジト目でこちらを見てくるルミとルチアが居たりした。屋台の準備をほっといて帰ってこないシンジとミカエラを探しにきたのだろう。”仕事をサボってなにをいちゃついていやがりますか。”そんな視線×2。
「あらっ。残念、時間切れね。結構楽しかったわ、シンジとのデート。今度はもっとあんなこととかこんなこととかしましょうね。生まれたままの姿、でね」
「ミ、ミカエラ! 言い方っ! 言い方っ!! あらぬ誤解がっ!!」
わざと聞こえる声で言うミカエラ。案の定、反応する二人。
「シ、シンジ様っ!?」ゴゴゴゴ・・・
「ウチは・・・ウチにもたまにおいしい物を奢ってくれるとかのサービスしてくれはればそれでええで?」
ルミはなぜか怒っている風だし、ルチアはしょうがないなー、という雰囲気。
そして気恥ずかしさのため逃亡を図ろうとしたシンジは3人娘にがっちり捕まえられ、夕飯を取るために宿へ引っ張られていった。
確実にシンジの奢りになるのは間違いないだろう。
合掌。
かなりシンジに対して好意を持っている様子のミカエラさん。からかいなのかはたまた。。。
ルミのベタ惚れぶりはデフォと言うことでお願いいたします。
別の番外で語られることがあるかもしれませんね。




