エピソード9歳 〜トロンボーンと私〜
私、9歳になる。
4年生、新学期に放送が流れた。
「今日の昼休み、ブラスバンド部の体験が出来ます!みんな音楽室にきてねー!」
…行くしかない。なぜかそう思った。
友達を誘うわけでもなく、
1人でいそいそと音楽室へ向かった。
そして、特に理由もなく1番にコルネット(トランペットを一回り小さくしたもの)のパートへ行って体験させてもらった。
鳴らない。だけど、これがいい!!
私はコルネットを希望した。他にも4年生の希望者はたくさんいた。
さすが、花形!
そうだよね、かっこいいもんね。
と、いうことでブラスバンド部、入部。
入部1日目、顧問の高藤先生は
ずらっと並ぶコルネットパートを見て、
そして、私の前へ。
「ちょっと腕の長さ見せて。
……そうだねぇ、君、トロンボーンちょっと持ってみない?」
と、言われるがまま持ち方を教えてもらって、楽器を構えて…
「やっぱり!君はトロンボーン向いてるよ!どう?こっちにしない?」
って。内心、
『…えーーー。コルネットがよかった。』
と、思いつつなんか選ばれた気もしたので
「…はい。」
と、返事した私。
家に帰ってから、『絶対数合わせされた!!』と、子どもながらに思ってしまい。
始めは、練習に行くも、
コルネットのパートを目で追っていた日々。
トロンボーンに興味を持てず、
練習もそこそこ先輩たちと
かくれんぼして遊ぶ日々。
そして、合奏で怒られる日々。
入部して半年、夏休みの集中夏季練習の時のこと。
集中的に高藤先生に
トロンボーンパートは追い込まれた。
『みんながこの場で高いレの音が出せるまでやるぞ!!』と喝を入れられた。
はっきり憶えてる。みんなが必死で息を入れて、初めて楽器を鳴らそうとした。
私も必死に息を吸って吹いた。
初めて高い“レ”が出せた時、私は
『出来るようになることは、
面白いことなんだ!!』
と、気付いた。何より音が出せた時の爽快感がトリハダもんだった。
でも、もう夏も中盤。
その年のコンクールは、銅賞だった。
私は、初めてのコンクール、舞台に立っただけでもすごい経験だったーと、思っていたが
先輩たちは泣いていた。
一瞬、え?なんでだ?と思ったが
すぐ気が付いた。
先輩たちは、悔しかったんだと。
私はそれから、真面目に練習し始めた。
練習すれば音が出た。音が届けば高藤先生は、すごく褒めてくれた。
私は特に大きな音が出た。
そして、トロンボーンは面白かった!
…かくれんぼしてたあの時間が、少しだけもったいなく感じた。




