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ガントレットは青空を掴む ー旅は導き、世は助けー  作者: いさな
第一章 導きのエルフと自由の栞

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第6話 「涙と絆が結ぶ世界」

「ルミナさん!ルミナさんがくれた本のおかげで凄く勉強がはかどりました、ありがとうございます!」


 読んでみてわかったが、ルミナさんの固有スキル【蘇る記憶保管庫(リバイブメモリーズ)】で造ってくれた三冊の本は本当に価値のあるものだ。

 アレス父さんが昔、旅をした国で時は金なりという言葉があると教えてくれたことがあるが、ルミナさんの本が無ければ調べるだけで一週間以上は掛かっていただろう。


 その時間を大幅に短縮できるくらい三冊に秘められた情報は簡潔でわかりやすく俺に必要な情報が書かれていた。


 この素晴らしい本をくれたルミナさんには感謝してもしきれないな。


 ルミナさんは図書館に来た時と同じ手を伸ばしてダルそうな体勢で顔だけこちらに向けて微笑みながら口を開く。


「マヌス君、その様子だと必要な情報は得られたんだね~......本を渡した身としても嬉しい限りだよ......」


「ルミナさん......」


 今日知り合ったばかりの俺に、こんな素晴らしいものをくれただけでなく一緒に喜んでくれるなんて......


「ルミナさん......なんで俺にこんな良くしてくれるんですか?」


「それはね......君の心が温かくて優しいからだよ」


 ルミナさんの眠たげだけど柔らかな声が俺の耳に届いてくる。


「温かくて優しいです......か?そうなんですかね。自分じゃあまりわからないですが......」


 俺は自分を優しいと言われた経験があまりなくルミナの言葉に少し困惑してしまった。


 ただ物心ついたときからアレス父さんとミレア母さんから、「人に与えられた恩を返すのは当たり前、自分から求めては駄目。そんなマヌスの姿を見てくれる人からは優しさを与えられる」と教えられてきた。


 自分ではまだこの教えを完璧にできているとは言えないからこそ、ルミナさんからの評価に素直に答えられずにいた。


「私はね......人の魂の色が見えるの。人間性と未来の行動を読み解き、それを色に変える。凶暴な悪人だったら赤黒い色、底なしに優しく自己犠牲をもいとわない人の色は綺麗な黄緑色......」


「私の目にはあなたの魂が今まで見てきたどんな人よりも澄んでいて温かさを持つ黄緑色に見えてる......だから私はマヌス君に力を貸したんだよ~」


 初めて会った時のように目の色が緑に変わっていたルミナさんがその言葉を口にしたとき、その表情は柔らかく、こちらを祝福する女神のような微笑みを向けていた。眠たげな表情は変わらないが落ち着きをみせる笑顔が俺の胸に温かさを覚えさせる。


「マヌス君がこれから困ったときや強くなりたいと思ったときに私を頼ってくれるなら私は喜んで伸ばした手を掴むよ......覚えておいてね」


「ルミナさん、そんなこと言われたら俺......頼っちゃいますよ」


 涙で目を潤ませながら、自分の声がかすれているのがわかる。ガントレットを受け取ったときからなんとか頑張らなきゃいけないと思って気が張っていたのだろう、ルミナさんの心遣いが身に染みてくる。


「頼っていいんだよ......いきなり与えられた力が理解できずに不貞腐れるんじゃなくて自分の意志で、自分の足でここに来た。その行動ができたからこそ今のマヌス君がいるんだから」


『固有スキル:絆を結ぶ世界が発動します。』


「え......!」


 頭のなかで声が聞こえたかと思うと俺の身体が一瞬光り、心臓の場所から歯車同士が噛み合ったかのようなカチッという音が鳴る。その音をきっかけにしたかのように今までの俺には無かった力が湧いてきた。


『固有スキル:絆を結ぶ世界の効果により精霊術の欠片を獲得しました』


「これは......」


 ルミナさんに貰った本を読んでもわからないことが多かった固有スキルが発動した。俺の固有スキルは絆を深めた者の力を少し得るといった抽象的なもので正確な効果がわかっていなかった。


 だけど、これは......


「ルミナさん、今俺の固有スキルである絆を結ぶ世界が発動しました。俺の絆を結ぶ世界は絆を深めた時に力を得るものらしいです。えっと......改めてこれからよろしくお願いします!」


 仲良くなれた証明を神様にしてもらったみたいで少しくすぐったい気持ちだが、これで本当にルミナさんへの感謝の気持ちもルミナさんが俺に言ってくれた嬉しい言葉も本当のことだってわかった。


「そっか~......マヌス君は固有スキルを授かっていたんだね。私の想いがマヌス君の力になったのなら嬉しい限りだ~......でもね」


 そういうとにこやかな表情を少し真剣なものに変えてルミナさんは言葉を繋ぐ。


「勘違いはしないでね。固有スキルが無くたってマヌス君とは仲良くなれたって思ったし証明が無くたって君への言葉は嘘じゃないってことをね~」


 確かに、これから仲良くなれた指標が固有スキルの発動の有無に左右されるのは精神衛生上良くないかもしれない。

 そんな状態では人のことを信用できなくなりそうだ。


「わかりました。力を得たことは嬉しいですが、それとは別にルミナさんの言葉は胸に刻みます!」


 俺の元にある三冊の本を胸に抱えてルミナさんに向けて宣言する。


「ルミナさん......俺はこれから二年間修業をして討伐者になるつもりです。その間もその後もルミナさんに頼らせてください!」


 ルミナさんは体を起こしてこちらにしっかりと目を合わせながら答えてくれる。


「いいよ~......気軽にまたここに来てね。マヌス君と会えるだけで私の心は温かくなるんだからさ~」


 その後は少しだけルミナさんとこれからのお話をしてから図書館を出た。


 図書館を出ると外はすっかり暗くなり、空には星が見えていたが心は温かく来た時とは全く違った心境で足を家へ進めていた。


「明日から修行開始だ!まずは父さんに肉体強化の方法を教えて貰うところから始めよう」


 魔蒸気が微かに漂う夜空を見上げて、手を天に掲げる。

【作者からお願い】


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