第29話 「鋼鉄の小鬼討伐戦」
俺とルミナさんは国の外へ出て少し移動したところにある始まりの草原と呼ばれている危険地帯に来ていた。
危険地帯とされている場所は主に鉱魔獣の生息が確認されている地域のことを指しており、戦う力を持たない一般人は近寄ることを禁止されている。
もし、人がいるとすればそれは討伐者か何かしらの理由があって住んでる場所を追い出された浮浪者くらいなもんだ。
「初めて来ましたけど、何も手が入っていないだけあって自然溢れる場所ですね。ここに鉱魔獣が居なければ心も休まるんですけど......」
「もし鉱魔獣が居なかったらここも開拓されてただろうから無理な望みだよね~......まぁ、ぼちぼち探しに行こうか~......」
危険地帯を示す柵と扉を抜けて、俺たちは始まりの草原へ足を踏み入れた。
魔力操作の応用で細かい粒子状の魔力を薄く散らばせることで敵の位置を把握する。俺の感知範囲は周囲50m程なのでそこまで広くは無いがこれをやっておけば突然の接敵や背後から不意を突かれることも無い。
その状態のままゆっくりと前に進んでいくと、感知に引っかかったものがあった。
「ストップ、何か居ます。一匹だけですがアイアンゴブリンの情報と一致する背丈のやつが」
「人型の鉱魔獣はこの辺りにはアイアンゴブリンしかいないから当たりだろうね......じゃあ、色々準備して始めちゃいな」
ルミナさんに頷いて返答したあと、担いでいたバックを下ろして軽く息を吐いて精神統一する。
「ふー......原初のガントレット『機動』鎖の騎士鎧『蒸装』」
俺の身体に漆黒のガントレットと純白の鎧が装着された。その魔力に反応したのか感知していた対象がこちらへとゆっくり近づいてくる。
草むらをかき分けて表れたのは右手が鉄で覆われた子供くらいの背丈を持つ醜悪な小鬼だった。
「ギャッギャッギャ!」
「あれがアイアンゴブリンか......ニヤニヤと小馬鹿にするように笑っていて殺意を覚えますね」
「本当にムカつく顔してるよね~......右手に鉄だからマヌス君と殴り合いで勝てると思ってるのかも......」
なんだと?あんなやつに俺はなめられてるってことか?
凄いムカついてきたな。全力でやるか。
「ルミナさん少し離れていてください。【過集中】【浸透破】【ボディーインパクト】」
俺は精度を上げるためにアーツの発動を口に出してから全力でアイアンゴブリンに向かっていく。
アイアンゴブリンはその姿にカウンターを決めようと右拳を打とうと突き出してきたが、過集中状態の俺には避けるのは容易い。
拳を避けてアイアンゴブリンの後ろに周り、その場でガントレットを振り抜く準備を整える。
ギチギチと音を鳴らしながら蓄えた力を放出するために高めた魔力を拳へと移動させた。
俺が目の前から消えたように見えたであろうアイアンゴブリンが音に導かれて、背後にいる俺に気づいて振り返った時には俺の拳はすでに膨れた腹に向かって振り抜かれていた。
「ギャッ......ガヒ!?」
「弾けて死ね!」
浸透破によって伝わった波の魔力がボディーインパクトによって内部で増幅を繰り返し、衝撃がアイアンゴブリンの身体を破壊した。
パンッという音の後に残っていたのは周囲に散らばる肉片と鉄で覆われた右手だけだった。
「おーマヌス君も魔力操作が上手くなったね~......しっかりと右手を残しておけるなんて......」
「事前にアイアンゴブリンの鉄で覆われている部位はお金になるって知ってましたからね!とりあえずこの調子で何匹か倒しますか」
「だね~次は集団戦をしてみたいね......」
無事初戦を終えた俺は次のアイアンゴブリンを探すために魔力を広げていく。
それからは一匹でいるはぐれゴブリンを何匹か倒しながら進んでいるとやっと3匹で固まっている反応を見つけることができた。
「ルミナさん、いました。今回は3匹で固まっています」
「よし、じゃあそれを討伐して帰ろうか......油断はしないようにね~......」
感知した場所に向かっていきながら鎖の騎士鎧に土属性魔力を流していく。
「ガァ?」 「ガッガ!」 「ギャヒ!?」
「まずは......一匹!」
最初に俺に気づいたアイアンゴブリンを殺すために土魔法を発動する。地面に手をついて魔力を足元まで到達させてから鉄の支柱を生成した。
跳躍した俺はカチあげられて空中に浮いたアイアンゴブリンの足を掴んで地面に叩きつけた。
異常を感知した残りのアイアンゴブリンは空中を見上げているがすでにそこに俺はいない。
【硬質化】 【螺旋操作】 【外部放出】
俺は背後からアイアンゴブリンたちの頭を硬質化したガントレットで掴んで螺旋魔力を流し込む。
「「ガ......ァアアアア!!!」」
全身を切り裂くように回転する螺旋魔力は一瞬でアイアンゴブリンたちの身体をズタボロにしていき、抵抗する隙を与えることも無く生命活動を停止させた。
手のなかで力なく揺れる身体を晒しているゴブリンを地面へと投げ捨ててルミナさんのいる方へ振り向く。
「ふん......!これで終わりっと。やっぱりただ凶暴なだけの小鬼だったら問題は無かったかな」
「だね~......価値のある部位も残ってるし次はまた違う鉱魔獣を倒しに行ってもいいかもね~......」
「ですね!これがブロンズバードとかだと空中戦になるだろうし、色々対策は考えていかないといけないからしっかりと事前に調べながらですかね」
ルミナさんと話しながら買取に出せそうな部位の回収を終えた俺は周囲に鉱魔獣がいないことを確認しておく。
「これ以上狩るとしたらもう少し奥に行かなきゃいけないから今日はここまでですかね」
「だね、お疲れ様~......危険地帯を抜けるまで油断は駄目だけど帰ったらゆっくりしようね~......」
俺たちは始まりの草原を抜けるまで警戒を続けながら、依頼の感想を話して000へと戻っていくのであった。
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