第24話 「面接と覚悟」
「いやーレクスさん強すぎるよね〜。神導武器を出しただけで吹っ飛ぶなんて反則だよ」
「某の全力の速さにも余裕で対応されたからな。目が見えていなくても気配や音で場所も特定されるとなると、やはり我らにはそもそもの経験が足りてないのだろう」
「俺も一番破壊力が高い拳を腹にぶち込んでやったのにただの外装魔力で防がれたな。流石、討伐者のトップということだ。でも......いつか超えてみせる!」
レクスさんとの戦闘試験を終えた俺たちは、最後の試験である面接を受けるために待機所に戻ってきていた。
面接を始める前に戦闘試験で疲れた身体を癒すための時間が設けられており、俺とシアネスにライメイを加えた三人でソファに座りながらレクスさんとの戦闘の感想を交わしていた。
「レクスさんを目標に頑張っていけば迷うことなく討伐者として経験を積めそうだし、そう考えると僕たちがここで戦えたのは幸運かも」
「総司令という立場をお持ちのお方だからな。全ての討伐者試験を見る訳ではあるまい」
「確かにな、面接もしてくれるらしいからその時に感謝を伝えるか!次にレクスさんと会える機会があるかもわからないからな」
そんな話をしながら時間を潰していると、待機所の奥の扉から案内係の男性が現れた。
「皆様お待たせしました。戦闘訓練、お疲れ様です。これから面接を始めます。戦闘訓練と同じ順番でお呼びしますのでよろしくお願いします。では、ゲミニ様は私に付いてきてください」
「はい!」
案内係に呼ばれた小人族のゲミニが席を立ち、先行して歩く案内係の後ろを付いて行った。
「面接って何を聞かれるんだろうね。人間性とか討伐者になる心構えとかかな~」
「某としては何を問われても問題無いな。嘘を伝えること無く答えれば合格出来るはずだ」
「ここで駄目なのは見栄を張ったり経歴詐称などの嘘を話してしまうことだろうな。討伐者は依頼を受けて鉱魔獣を倒す職業だし、信用は何よりも大切だろう」
シアネスとライメイと三人で話しながらゆっくりとした時間を過ごしていると面接が終わったゲミニが戻ってきた。
本人としては戦闘試験の結果があまり良くなかったのか、待機所では沈んだ様子をしていたゲミニだったが今はしっかりと前を向いて歩くことが出来ていた。
面接で何を言われたのかわからないがレクスさんは面倒見が良さそうな良い人に見えたので今後のアドバイスとかを貰ったのかな。
そんなゲミニの様子を静かに見ていた俺の耳に次の面接対象である獣人族のニスが呼ばれた。
それからは流れのように妖族のコンタース、黒翼族のライメイ、人族と水妖精のハーフのシアネスの順に呼ばれていき、ついに俺の番になった。
「マヌス様、これから面接場所へご案内します」
「はい、よろしくお願いします」
俺は他の受験者たちと同じように案内係の後ろに付いていき、少し長い廊下を歩いていった。
廊下の途中で高そうな壺や鉱魔獣の骨など価値の高そうなものが置いてあり、転ばないようにだけ気を付けながらゆっくりとしたスピードで進んでいく。
案内係が大きな木製の扉の前で止まり、後ろにいる俺の方に振り向いた。
「ここが面接を行う場所である総司令室になります。ノックをして返事があったあとに中にお入りください。面接終了後は私が外で待機していますので行きと同じように付いてきていただければ大丈夫です。マヌス様が討伐者になれるよう応援しています」
案内係はそう言うと正面から少しズレた扉の横で待ちの姿勢を取った。
俺は指示通りに扉にノックを3回して返事を待つ。扉の奥から「入ってくれ」という声が聞こえたので「失礼します」と一言口にしてドアノブを回した。
扉の奥は執務室のようになっており、棚には沢山の本と書類が並べられていて正面の机にはレクスさんが座っているのだが何故か横にはルミナさんとアルジェントさんが立っている。
「マヌス君、ここまでの試験お疲れ様。まずは座ってくれ。横にいる者についてはその後に説明しよう」
レクスさんに促されるまま用意された椅子に背筋を伸ばして座り、次の言葉を待つ。
「今回ルミナ君とアルジェント君を同席させているのは君と交流がある000関係者という立場を加味しての判断だ。この方が合理的に君について知ることが出来ると思ってな。マヌス君への面接は変則的にはなるが私とルミナ君、アルジェント君の三名で行うことにした」
「なるほど......了解です。俺には隠すことも騙す意思もありませんのでどんな形でも問題ありません」
レクスさんの決定には少し驚いたが面接官が増えたことで損を被るわけでも無い。逆に知り合いが居て安心する気持ちもあるくらいだ。
「理解してくれて助かるよ。――では、これから面接試験を開始する。まずは私から質問させて貰おう。マヌス君の討伐者としての目標は何かね?」
「俺の目標は自由を手に入れることです」
「自由、か。もう少し具体的に聞いても?」
「もちろんです。この世界は鉱魔獣という脅威に晒されながら人々が生きています。鉱魔獣に対する力を持たなければ安心して国外に出ることも出来ず、誰かを守りたいと思っても手を伸ばすことは出来ません。己の意志を通すために自由を俺は求めています」
レクスさんは「なるほど」と口にして更に質問を続けた。
「自由というのは責任が生じるというのは理解しているか?」
「もちろん理解しています。自由と我が儘を履き違えてはいません。俺が求める自由は自分の意志で歩むべき道を選択することだと考えています。それ故に、大切なルールや正当な指示に抗うことはありません。何故なら、それは討伐者として動くのであれば必要なことで討伐者という道を選択した俺の責任だからです。」
俺の答えを聞いてレクスさんは軽く頷いたあと、次の質問に入る。
「ありがとう、よくわかった。俺からは最後の質問だ。討伐者が一番に優先することは何かわかるかな?」
「鉱魔獣を絶対に殺すことです。討伐者は鉱魔獣を倒し、素材を国に下ろして研究を進めて最終的には世界から鉱魔獣の脅威を滅することが討伐者のいる意義です」
「素晴らしい、正解だ。この後はルミナ君に質問を譲ろう」
レクスさんに振られたルミナさんは少し考える素振りを見せたあとに、あっと思いついたように手のひらを合わせて笑顔で俺に問いかける。
「ん~......そうだねぇ、マヌス君は私とずっと一緒にいてくれるかい......?」
「もちろんです!ルミナさんとはこれからもずっと一緒ですよ」
そんな俺たちの様子を見て、レクスさんは疲れたように額に手を置き溜息をついた。
「ルミナ君、そういうことでは無くて討伐者に関係あることを質問してくれるかな......」
「あ、な~んだ......総司令最初からそう言ってください......」
ルミナさんはいたずらが成功したように軽く笑ったあと、言葉を続けた。
「じゃあ、ひとつだけ質問するね~......マヌス君、ここまでの努力とこれからの未来に後悔は無いかい?」
ルミナさんの問いに答えるために少しだけ考える。
始まりはガントレットという武器を授かり、どうやって修行したら良いのかもわからない状態だった。だが、両親に肯定され、ルミナさんと出会い、氷龍の煌めきに教えてもらい、モーチラスさんが先の楽しみをくれた。
そして、さっきその成果をレクスさんに証明することができた。
未来のことはわからないがきっと後悔することは無いだろう。
「大丈夫です。俺はもう後ろを向きません!」
「それなら良かったよ......総司令、私からは以上です」
「そうか、なら最後にアルジェント君」
アルジェントさんは一歩前に出てお辞儀をしたあと、口を開く。
「マヌス君、ここまでお疲れ様です。私から聞きたいことは依頼に行く前にあなたは何をするか、どんな意識で依頼を受けるかを聞かせてください」
「俺が依頼を受けるときはまず討伐対象の確認をします。知識としてわかっているのであれば必要な道具を用意し、もし知らない鉱魔獣であれば図書館や討伐者の先輩に聞いてわかるまでは受けないでしょう。意識としては自分よりも依頼者のことを考えて依頼を受けるようにします。依頼を出す人は困っているはずですから」
俺の答えを聞いたアルジェントさんは納得したかのように軽く頷いた。
「それは誰かから聞いたんですか?」
「俺の討伐者としての知識はB級討伐者であるルーカスさんに教えてもらったものです。心構えや必要な知識、失敗しないために大切なことを習いました」
「......良い師匠に出会えてよかったですね。総司令、以上で私からの質問は終わります」
笑顔になったアルジェントさんはレクスさんへ面接の終了を伝えた。
「マヌス君、君のことはよく理解できた。以上で面接試験は終了とする!君が誰もが憧れる討伐者になれることを期待しているよ」
「お時間をいただき、ありがとうございました」
俺は席を立ちしっかりと頭を下げたあと、扉を開けて外に出る。
後は結果を聞くだけだ!
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