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ガントレットは青空を掴む ー旅は導き、世は助けー  作者: いさな
第一章 導きのエルフと自由の栞

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第23話 「マヌスの成果」

「人族のマヌスです!神導武器はガントレット、全力で戦い絶対に合格します。原初のガントレット『機動』!!!」


 胸の中心からあふれ出した眩い光球が、線に変わり俺の腕を縛り上げるように巻き付いた。

 次の瞬間、光は冷たさを感じさせる漆黒へと変色し、硬質な金属音を響かせながら指先から徐々に大きな籠手を形成していく。黒鉄に覆われた籠手が両腕に装着されたのを確認した俺は真正面で拳を叩き合わせると、光の残滓を払うかのように大きな火花が散った。


「最後の受験者のマヌス君はガントレットか。本当に今回の試験はわくわくさせてくれるな!さぁ、まずは俺を動かしてみせろ!」


 これまでと同じようにレクスさんは腕を組んで俺の出方を伺うようにその場で留まっている。


 レクスさんを目の前にすることで理解できた。ただ立っているだけのはずなのに感じる圧を、その強さを。


 修行をする前の俺であれば足を一歩踏み出すこともできずに逃げ出していたかもしれない。


 でも、今の俺には二年間、右も左もわからなかった俺を導いてくれた皆から受け取った力がある!


 身体の前で合わせていたガントレットを解き、ひとつ深呼吸をしてから崩魔拳術の構えを取った。


 戦闘に移行するために必要な魔力を体内で練っていると、観客席から声が聞こえてくる。


「マヌス君頑張って~......私は君の努力を知っているからね。全力を出せば大丈夫さ~......!」


(見てくれてるんだね、ルミナさん)


 耳に届いたルミナさんの声が俺のなかにあった微かな緊張を解してくれる。俺は声の方向を見ること無く、届くかもわからない宣言をする。


「ルミナさん、見ていてください!修行の成果を!」


 幻聴かもしれない。だけど、確かに俺の耳には安心したように笑う音が聞こえてきた。


「レクスさん、胸をお借りします。【土属性エンチャント】・【肉体強化】」


 俺は崩魔拳術アーツである土属性エンチャントを使用し、ガントレットの大きさを倍以上に膨張させる。さらに、土の質量により増えた重量を支えるため魔力操作を用いて肉体を強化させた。


 そのまま俺は地面を踏みしめ、全力で振りかぶった土の拳でレクスさんに殴りかかった。


「魔力操作がしっかり出来ているのは高評価だが、ただの重い攻撃なら俺の防御は破れないぞ!」


 レクスさんは俺の攻撃に合わせて自身の拳を打ち合わせようとする。もちろん、これだけでは意味が無いのは俺もわかっている。


 レクスさんの拳が土の拳に触れた瞬間、俺はわざと土属性エンチャントを解除して土の拳を消散させる。

 力を込めて殴っていたレクスさんは攻撃の対象が突然消えたことでほんの少しだけ前に体勢を崩した。


「うお......!」


(――作り出した一瞬の隙を逃すな!!)


 右足を軸に身体を回転させ、遠心力を乗せてもう一度殴りかかる。舞い上がった土埃つちぼこりを突き抜けた原初のガントレットには土の内側で練っていた螺旋を描く魔力が渦巻いている。


 螺旋操作と魔力形成により一点突破の力を有したドリルのような形状の拳をレクスさんの腹に突き刺した。


「『螺旋一貫らせんいっかん』!!」


 俺の回転突きはレクスさんの外装魔力と反発し合い、ギャリギャリという不快な音を鳴らしながら火花を発していた。


 拮抗した状態が続けばいずれ俺の攻撃はレクスさんに届き、内部を破壊できる!


「これは......まずいな!地獄の扉を築く大槌ヘル・ポルタ・マレウス『機動』!」


螺旋一貫らせんいっかん』の凶悪さを察知したのかレクスさんはシアネスと同じように神導武器を出した余波で俺のことを吹き飛ばした。


 その攻撃が来ることを先ほど見ていた俺は機動キーワードの途中で螺旋魔力を散らして、余波と一緒にわざとうしろに跳んだ。


 それでも凄まじい力が身体を襲ってきたが何とか地面に足をつけることが出来た。砂埃を上げながらも地面に力を逃がしながら踏みとどまることに成功する。


「直感で危険を感じることなんて少なくなってきたんだが、あれはなんだ?マヌス君」


「崩魔拳術という武術の技です。螺旋ドリルが奥まで刺されば回転エネルギーが内部で爆発するというものなんですが、やっぱり防がれましたね」


「君は俺を殺す気なのかな?」


「これはレクスさんを信用してたから出来たことです。レクスさんと対面したときに俺には勝てないと断言できるほどの強さを感じました。だからこそ、俺が持てる全てをぶつけてもレクスさんには届かないだろうと考えての行動です」


 興奮で少し口角が上がっている自覚がある俺のことを見つめてレクスさんは呆れたように首を振ってから俺と同じく表情を笑顔に変える。


「その心意気、良し!どんなときにも全力で、相手が鉱魔獣であれば絶対に仕留める。その気持ちを失わなければマヌス君は討伐者として大成できるだろう!で、あれば次は防御力を測ろうか」


 レクスさんは赤黒い溶岩を彷彿とさせる見た目の地獄の扉を築く大槌ヘル・ポルタ・マレウスを両手で握り、攻撃の意思を示す。


 流石にこのまま大槌を受けるのは原初のガントレットでは無理かな。


 ――だったら!


「氷鏡鱗のガントレット『機動』!」


 キーワードを合図に両手に装着されている原初のガントレットが光に包まれ、右手は青に左手は白の光に変化していく。


 右拳の先から歯車を半分にしたような爪が。左腕には鏡鱗で出来た盾が形成された。


 レクスさんは困惑したような疑念を感じるような表情で俺に問いかける。


「まだ鉱魔獣を狩って無いのに神導武器が変化した?まさか、討伐者になっていないのに鉱魔獣を狩っているわけでは無いだろうね?」


 確かに、普通なら鉱魔獣を狩ることで経験を積み神導武器が変化していくのだから疑われるのも仕方ない。


 だから、俺と絆を結んでくれた皆のためにもここではっきりと答えよう。


「そんなことはしていません。この神導武器は俺の固有スキルの効果で新しく神様から授かったものです。そして、そのきっかけは俺と俺のことを支え、助けてくれた恩人たちとの絆です。この言葉に噓偽りは一切ありません!」


 俺は堂々と胸を張って隠すことはひとつも無いことを伝える。


 まだ半信半疑に感じているであろうレクスさんは観客席に目を移し、目的の人物を探して話しかける。


「ルミナ君、君がマヌス君の修行を見ていたのだったな。この言葉に嘘は無いか?」


「総司令、マヌス君は真実だけを言ってるよ......私はマヌス君が神導武器を変化させる場面もステータスも確認しているからね~......どうか信じてあげてね」


 真剣な顔で問いに答えるルミナさんを見て納得してくれたのか頷いたあと、レクスさんは俺に向けて頭を下げてきた。


「マヌス君、疑ってしまいすまなかった」


「レ、レクスさん!?頭を上げてください!俺が特殊な固有スキルを持っていることを説明してないから誤解するのは当たり前ですから!」


「いや、000の総司令であるからこそ俺は常に討伐者の味方で無ければいけない。前科があるなどで疑わしい者を追求することは時に必要だが、この場で口にするべきでは無かった。君と君のために努力を共にした人をコケにするような発言を撤回させていただきたい」


 俺としては疑うのは当たり前だとは思うが、レクスさんには立場というものがあるのだろう。


 ここで謝罪を拒み続けるのはレクスさんにも失礼だな。


「わかりました、謝罪を受け取ります。ただ、負い目を感じて残りの試験で手を抜くなんてことは止めてくださいね」


「ありがとう、もちろん総司令として全力で試験を行おう!」


 そう言ってレクスさんは一歩後ろに下がり、目で戦闘の再開を促す。


 俺も同じように下がり、一度頷いたあとに鏡鱗の盾を構えた。


「マヌス君、君がこの攻撃を耐えることが出来たのなら戦闘試験は終了としよう。―行くぞ!」


 レクスさんが地獄の扉を築く大槌ヘル・ポルタ・マレウスを持ち上げ、俺に向かって振り下ろした。


 俺は左腕を前に突き出し、盾で受け止める。盾の上からとてつもない衝撃が襲ってきたことで俺はその場で膝をついてしまう。


「どうした!このままでは潰れてしまうぞ!」


「まだだぁああ!!【氷属性エンチャント】!」


 大槌を止めた盾の下から氷柱を生成して支えを作り、これ以上の力が身体に伝わるのを防ぐ。

 魔力を全力で練り上げながら徐々にヒビが入る氷柱を更なる氷で補強することで、支えが無くなることを回避する。魔力を氷へ変換させながらレクスさんからの重圧に耐え忍び、少しずつ身体を起こすことで膝をつく前の体勢まで戻ってきた。


 俺は「ここだ!!」と声を張り上げ、無理やり左腕を外へ振り抜いたのと同時に支えにしていた氷を反転させて大槌のヘッドを跳ね返した。


 氷が割れる音が会場に響き渡り、同時に俺の盾も負荷に耐えられずに砕け散る。


 体力も魔力も使い切ったことで腕を振り抜いた状態から動けず、レクスさんの表情は確認することはできない。


 静寂に包まれた会場でレクスさんの判定を待っていると、俺の頭の上にごつごつとした手が置かれた。


「――おめでとう、よく俺の一撃を防いだ。マヌス君戦闘試験終了だ!」


「よっしゃぁああああ!!!」


 レクスさんの声を聞いて力が抜けた俺は地面に大の字で寝転がった。

【作者からお願い】


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