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ガントレットは青空を掴む ー旅は導き、世は助けー  作者: いさな
第一章 導きのエルフと自由の栞

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第21話 「黒翼のライメイ」

「よし、全員いるな。ではこれから討伐者にとって一番求められるといっても過言ではない、君たちが鉱魔獣と相対する力はあるかを確認する戦闘試験を開始する!」


 俺たちはレクスさんに連れられて結界魔術であろう薄い光の膜で囲まれた戦闘試験会場に来ていた。会場は俺たちが動けるスペースを囲むように少し傾斜のある観覧席が用意されており、000の関係者であろう人がまばらに座っているのが見える。


 俺がいつも修行しているギアタウンの修練所よりも、3倍ほどの広さがあるであろう会場の中心でレクスさんは腕を組みながら仁王立ちをして試験開始の宣言をする。


「まずは、俺の魔力に反応出来なかったやつからにするか。小人族の君、名前と神導武器を申告して俺の所へ来い。他の者は戦闘に巻き込まれないように端に寄っておけ」


 レクスさんに呼ばれた身長が低い緑髪の青年は、自分以外が奥の方に移動したことで取り残されたことが不安なのかきょろきょろとしていた。


 最初に戦うのは若干気の毒だな。だが、小柄な青年は意を決したのか一度空気を吐き出し自分の頬を叩いて気合を入れ、レクスさんを正面に捉える。


「流石に討伐者を目指すだけあるな。不安な気持ちもあるだろうに切り替えるのが早い」


「身長が小さいからレクスさんの圧力が僕たちよりも大きく感じるだろうしね~。マヌスくらい身長があれば少しはマシそうだけどそれでも40cmくらい差はありそう」


 俺とシアネスが話していると、小柄な受験者は決心が付いたのか試験を始めるために声を上げる。


「小人族のゲミニです!神導武器は双剣を授かりました。よろしくお願いします」


「よし、ゲミニ君だな!受付で聞いたとは思うが改めて説明しよう。この戦闘試験では君たちが討伐者になるために必要な力を有しているかを採点する。判断基準は神導武器の扱い、魔法を用いた戦闘の可否、アドリブ力だな。最初は俺も君たちに合わせた戦闘をしていき、段々とギアを上げていくから速攻で負けて力を見られないということは無いから安心してくれ!――では、いつでもかかってこい」


 レクスさんはそう言葉を区切ると相手の出方を伺うようにそのまま腕を組んだ体勢で待っている。


 その言葉を受けて、ゲミニが双剣の乱打で何度も攻撃を仕掛けるがレクスさんはその場から動かずに身に纏った魔力で強度を上げた腕だけで弾いていく。


 全力の攻撃を何度も与えたのに相手の全く効いた様子が無いことに心が折れたのか、ゲミニはその場で腰を地面に落とした。


「ふむ、ゲミニ君。君は魔法を使えるかね?」


「はぁはぁ......いえ、レクスさんに傷を付けられるようなものは使えません」


「そうか、ではここで模擬戦は終了だ。他の受験者のいる場所に行くといい」


 ゲミニはこのままでは駄目だと思ったのか口を開きかけたが、その気持ちをぐっと押し込んだように口を閉じてこちらへ歩いてきて端でうずくまった。


「獣人族のニスだ。神導武器は鞭」


「妖族のコンタースです。神導武器は扇です」


 それから珍しい神導武器を持つ二人がレクスさんと模擬戦をしたがゲミニと同じく一歩も動かせずに終わった。


 ゲミニと同じく全ての体力を使い切ったのか息を切らしながらこちらへと返ってくる。


 ただ、俺はこの二人から神導武器を使いこなせていない雰囲気を感じた。後一年修行を積めばもっと良い結果を残せそうな気もする。俺と同じ、珍しい神導武器を授かった者同士折れないで続けて欲しいな。


「あとは......俺の圧を耐えた三人か。まずはそこの和装の君からにしよう。」


 俺たちとは少し離れた位置で壁に寄りかかっていた黒髪の青年が呼ばれる。


 これまでの受験者と同じくレクスさんの前まで歩いていくが、その姿は堂々としており先ほどまでの戦闘を見てもなお負けるつもりは無いことが伺える。


「黒翼族のライメイという。神導武器は刀だ。胸をお借りしよう、雷刀『機動』」


 神導武器を装着するキーワードを口にしたライメイの手には一瞬の黒い光とともに漆黒の片刃剣が握られていた。


(あれが刀ってやつか......初めて見たな)


「刀とはまた珍しい武器を使うな。よし、いつでも来ていいぞ」


「参る!」


 ライメイの模擬戦が始まった。


 始めはこれまでの受験者と同じようにレクスさんに斬りかかり、攻撃を繰り返すが魔力で強化された腕一本で弾かれていた。


 少しの間、そのまま攻撃していたライメイだが意味が無いことを悟ったのだろう。少し距離を取って魔力を練り始める。


「このままではレクス殿に傷の一つも負わせることは出来なそうだ。ここからは本気で行かせていただこう」


 その言葉を合図に溜め込んだ魔力を放出し、黒い刀に纏わせる。黒刀はバチバチという音を立て、黒刀の刃の先から新たな紫の魔力で出来た刃が形成された。


 更に、ライメイの背中から魔力の黒い翼が生え、何度かはためかせる。


 その姿に感心したように頷いたレクスさんは足を大きく開き、拳を構えた。


「ほぉ......これは俺も少し気合を入れるか」


「やっとその気にさせることが出来たな。レクス殿をがっかりさせないようにするので是非受け止めて欲しい。改めて......参る!!!」


 ライメイは身体を前に倒したかと思うと、勢いをそのままに凄まじい速度でレクスさんに斬りかかった。


 正面から刀と拳がぶつかり合い、お互いの力が拮抗したかのように火花を散らした。


 翼で浮いたライメイはその状態のまま何度もレクスさんに刀を振るうがその攻撃は強靭な肉体に阻まれて肉までは届いていない。


「これでも届かぬか......!!――ならば!」


 ライメイは刀を弾かれた反動で後方に飛びながら、詠唱を始める。


『紫電の光よ、闇と混じり瞬着の枷となれ!紫暗のダークスタック!』


 ライメイの腕から放たれた闇の魔力は俺が瞬きをしている間にレクスさんの顔に纏わりついて目を覆い、視界を奪った。


「ふっっつ!!」


 魔法が届いたことを確認したライメイは今まで以上の速度で突っ込んでいき、背後を取るとレクスさんへ全力で刀を振り下ろす。


 見ている誰もが(これは当たるっ!)と確信したとき、視界が奪われているはずのレクスさんが口を開いた。


「素晴らしい発想だ。だが、まだ甘いな!」


 レクスさんは身体を横にずらし、振り向いて拳を打ち込む構えを取る。


 その先には刀を空振った無防備なライメイがいた。


「プロの討伐者はな、音も気配も殺気も全て消す。そこまで出来ないと俺には不意打ちは通用しないぞ!」


 レクスさんはその言葉とともにライメイの腹に拳を叩きこんだ。


「ぐはっ!!」


 その衝撃に耐えることが出来なかったライメイは少し身体を浮かした後、その場に倒れこんだ。


「俺に攻撃は届かなかったが、今日の試験で初めて反撃をさせられたな。中々良い攻撃だったぞ。誰か、壁まで運んでやれ!」


 腹に受けた衝撃がまだ抜けていないのだろう。俺たちは動けないライメイを支えるために早足で駆け寄った。


 倒れたライメイの両腕を掴み、俺とシアネスが左右からライメイを支えて安全な場所まで運んだ。


「おい、大丈夫か?凄い戦いだったな!」


「あんな速さで戦えるなんてびっくりしたよ~刀もかっこよかったね!」


 俺たちは支えながらレクスさんに健闘したライメイを褒め称える。


 俺たちの声が届くほどには痛みが引いたのかライメイが俺たちに言葉を返す。


「肩を貸してもらってかたじけない。なんとか食らいついたが俺には少し動かすだけしかできなかった......」


 俺たちがライメイを床に下ろした後、その姿を眺めているとライメイは拳を握って悔しさを露わにしていた。

 少しの間感情を抑えるように耐えた後、俺たちに顔を向けて口を開く。


「君たちもあの圧に耐えられたということは相応の力があるのだろう。君たちの全力をレクス殿にぶつけてきてくれ」


 真剣な表情のライメイに応えるように俺たちは互いの目を見て頷いたあと、ライメイに拳を向ける。


「おう、任せとけ!この日のためにした修行の成果をレクスさんにぶち込んでやるよ!」


「僕も結構頑張ってきたからね。ライメイに見せて恥ずかしくない戦いをすることを誓うよ」


 自信満々の俺たちの様子に安心してくれたのか、ライメイは口角を少し上げて俺たちと拳を合わせた。


 少し離れた位置にいたレクスさんが注意を引くために手を何回か叩く。


「よし、もう大丈夫そうだな。次は青髪の君だ!」


「あ、呼ばれたから行ってくるよ~。マヌスもライメイも見ていてね!」


 そう言って手をひらひらさせながらシアネスはレクスさんの元へ歩いていった。


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