第1話 「導き」
『マギアエジン』と呼ばれるこの世界は魔法と蒸気機関が同時に発展している。
機械を動かすためのエネルギーなどは魔法・魔術を用いて動かす。魔を用いて稼働する蒸気機関の総称を魔蒸器具と呼んでおり、魔蒸器具は様々な発展を遂げている。
例えば、汽車や輸送貨物エレベーターといったインフラに街を明るく照らす街灯や調理器具といった日常道具。
それだけには収まらず、特殊な効果を持った武器や防具、アクセサリーにも魔蒸器具は使われているのである。
外では蒸気機関の稼働音と人々の喧騒に溢れており、魔力を含んだ蒸気が空を覆いながらもそれに負けないくらい、活気溢れる空間がそこには存在している。
ただ、そんなマギアエジンも常に平和であるかと言われればそうでは無い。
この世界に存在する国々は人を襲い、自らの糧とする鉱魔獣という外敵による危険に晒されている。
そんな鉱魔獣を討伐することを生業とする『討伐者』が自分の大切な人を、己の自由を守るために神から授かった神導武器を用いて、鉱魔獣を狩ることで笑顔が溢れるこの時間が生まれているのである。
この物語はそんな世界で時に成長しながら、時に挫折を味わいながらも、己の半身とも言えるガントレットとともに生きていく。そんな男の物語だ。
◇◆◇◆
俺はマヌス・カエリ―—宿屋を営む家族を手伝いながらこの国から出て世界中を巡る旅をしたいと願うどこにでもいる13歳だ。
「ふー、よし.......気合を入れろ.......!」
周囲の喧騒が鳴りやまないなかで緊張で大きな音を鳴らす心臓を落ち着かせるために深呼吸をした。
俺が今いるのは導の祭壇と呼ばれる場所である。
ここでは13歳になる者が集められ、これからの生涯を共にする武器とステータスを神様から授けられる。
神様から授かる特殊な武器は『神導武器』と呼ばれており、鉱魔獣を倒すことが宿命とされている人類にとって、脅威に対抗するための神様からの導きだと聞いた。
武器の種類は千差万別でオーソドックスな剣もあれば太鼓や大きな十字架など武器と呼べるか怪しいものもあるらしい。
そんな神導武器には大きな特徴がある。
それは己の力と経験により成長と進化を繰り返し形を変えていくことだ。
タイミングは諸説あるが一般的には武器の理解度や技術力が成熟したとき、または精神性が成長、又は変化したときに起こりやすいとされている。
俺がここまで気合を入れている理由は授けられた武器が自分にとって最も適した才能を持つ武器であるとされているからだ。
これからの未来を共にする相棒が使い方もわからない武器だとどう感じるだろうか。
使用者も多く、成長への道筋が描きやすい武器だと最初の一歩を踏み出す際にこれまでの人たちの経験や知識が溢れており効率良く成長できるが、そうでは無い特殊な武器だと見本も無く、自身のセンスと想像力を頼りにしながら可能性を模索するしかない。
整地された道と獣道を歩くのであれば、前者を歩きたいと思うのが普通の人が持つ感性としては多数派だと思う。もし、自分の人生は困難であるほど素晴らしいという人がいるのであればその人は相当なドMか無個性であることにコンプレックスを持っているだけだ。
そんな夢とリスクを心に背負いながら臨む『導きの儀式』は俺の心臓の音を高鳴らせ、期待と不安をごちゃまぜにした感情を生み出してくる。
導きの儀式を執り行う司祭様が俺の前に並んでいた子供に声を掛ける。
「では...前にお進みください」
「は、はい......!神よ、導きの光を我にお授けください!」
気弱そうな少年が膝をつき、祭壇の前で祈りの言葉を捧げると神々しいオーラを放つ光球が祭壇の上へ発現し、ゆっくりと少年の胸の中へと入っていった。
「うわ!す、すごい!使い方もわかる―よし......『機動』!!!」
そう叫ぶと少年の前に金属質でありながら嫋やか《しなやか》な曲線を描く弓と矢筒が現れた。
「おめでとうございます、神はあなたに弓を授けました。それがあなたの進むべき道であり希望の扉を開く鍵です。未知に怯えずに進みなさい」
「はい......!ありがとうございました!」
そう言って俺の視線から外れていく少年を見送る。少年がいなくなったことで自分の目の前が開け、大きな十字架と祭壇が目に入ってきた。
次は自分の番だということを認識した俺の心臓は、緊張からかどんどん鼓動を早くして不安な俺の心を打ちつけてくる。
「次の方、準備が出来ましたら前へお進みください」
「はい......よろしくお願いします」
どうにか落ち着こうと目を閉じて心を落ち着けていると、俺を呼ぶ司祭様の声が聞こえてくる。
強張った身体をほぐすように一歩ずつ床を踏みしめながら導きの祭壇の前へ進んでいき、祭壇の前へたどり着いた俺はその場で足を折り、跪いた。
「ふぅ......神よ、導きの光を我にお授けください」
心臓の前へ握りこんだ拳をもっていき、神様に導きを示していただくための言葉を口にし、祈りを捧げる。
すると、祭壇が光を放ち先ほどよりも少し大きい光球が現れ、こちらへ向かってくる。真っ直ぐに俺の方へ進んでいた光球が目の前で一度停止した後、胸の中心へゆっくりと入ってきた。
体内に光球が収まった瞬間、頭の中に神導武器が宿ったことで装着方法と、ステータスを授かったことを理解するための情報が流れてきた。
「――これが神導武器の使い方か!よし......『機動』!」
俺が叫ぶと心臓から全身へと熱を持った力が燃料のように循環していき、身体の内から外へエネルギーが放出される感覚とともに武器が装着された。
「え......籠手?」
俺の両手を覆う金属の塊は手を守る防具にしては二回りも大きく、黒い金属板が何枚も積み重なった外見をしている。円形の窪みが存在している甲の中心から何本ものパイプ管のようなものが張り巡らされ、外に向かって伸びていた。
無骨でありながら精密さを感じさせるような籠手が両腕にずっしりとした重さを伝えてくる。
まだ困惑から抜け出せない俺は武器の正体を知るためにステータスを開く。
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名前:マヌス・カエリ
年齢:13歳
種族:人族
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【神導武器】
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【Ⅰ進化】原初のガントレット
└ 使用者の心身の成長と経験値によって姿を変える
└ 中心の窪みに魔鉱石を入れることで特殊な蒸気を内部に発生させる
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【スキル】
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【通常】剣術Ⅰ
└ 剣を用いた行動に補正がかかる
【通常】写し身Ⅰ
└ 他者の動きを写し、真似ることで学びを得る
【固有】絆が結ぶ世界
└ 絆を深めた者の力を少しだけ得ることができる
絆を深めた先に新たな力を得る
〈追加効果:斧術の可能性・魔法使いの種〉
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【魔法】
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【得意】土魔法Ⅰ
└ 土魔法が使用可能になる 習熟度に応じて自由に土を操ることができる
【得意】無魔法Ⅰ
└ 無魔法が使用可能になる 習熟度に応じて強化できるものが増えていく
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【称号】
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【初期】神導に招かれし者
└ 神導武器の適正が他の者よりも少し高い者に送られる称号
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「ほぉ......これは珍しい神導武器です。あなたが神から授けられた武器はガントレットと呼ばれているものです。使い手が少なく珍しい武器ですがそれゆえにあなたが望む姿へと変わっていくことでしょう。折れない意思をもって未知に立ち向かってください。」
「は、はい。ありがとうございました......」
特殊な神導武器を授かった者の不安を司祭様は理解しているのだろう。
励ましの言葉をくれた司祭様に感謝を伝えて列から外れる。
――先の見えない不安を残す俺の手に装備された冷たい黒鉄のガントレットが教会の魔光ランプの光を受けて、鈍く光っていた。
「神様、ガントレットってなんですか......」
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