第13話 「神に示す世界」
『氷龍の煌めき』とルミナさんとの修行を始めて半年が過ぎた。
この半年は課された訓練に夢中で取り組み、少しずつ討伐者に必要な力をつけていくことができた。
ルーカスさんには討伐者に必要な心構えの他にも、学術試験の勉強にも付き合ってもらい現時点で合格できるとお墨付きをもらえたことで残りの時間は復習程度に留めて戦闘訓練に専念できるようになった。
そこで俺はルーカスさんに残りの時間を戦闘訓練に切り替えられないか尋ねることにした。
「ルーカスさん、これからの修行に模擬戦を追加してもらうことってできますか?ルーカスさんとも戦ってみたいです!」
「模擬戦か......確かにこの半年は座学ばかりだったな。マヌスは頭も良いから俺の教えたことは吸収できたようだしな。」
ルーカスさんは顎に手を当てて少し考えるような仕草をした後に口を開いた。
「そうだな。では、半分は今まで通りの座学、そしてもう半分は模擬戦などの戦闘訓練に当てるようにしよう」
「お願いを聞いてくれてありがとうございます!よろしくお願いします!」
それからはルーカスさんからは座学で学んだことを活かして模擬戦を行うといった内容の修行が追加されたことで毎日がより充実していくのを感じた。
◇◆◇◆
――訓練に明け暮れる毎日を過ごすなか、いつものようにルーカスさんとの模擬戦が終わり、疲れから地面に倒れ込んだときに声が響いた。
『固有スキル:絆を結ぶ世界が発動します』
『固有スキル:絆を結ぶ世界の効果により氷の知性・守護の光鉄・子竜の鱗を獲得しました』
俺のなかに新たな力が三つ生まれた。
一つは冷たくも不快では無い氷
一つはどんな攻撃も弾き返す光鉄
一つは猛烈な力の片鱗
『氷龍の煌めき』の皆から感じた強さの一部が固有スキルによって俺の中に付与される。
『――追加効果:氷の知性・守護の光鉄・子竜の鱗の対象の親和性確認』
『追加効果の合成を開始――成功しました』
『追加効果:氷鉄竜の鏡鱗を獲得しました』
最後の声が聞こえた瞬間、俺の目の前に氷と鉄で出来た巨大な竜が現れた。
その姿は周囲の光を反射して輝き、鱗一つひとつが呆然とする俺を写し出している。
竜の背後には俺が生きてきて見た事の無い、氷で出来た街や金属製の動物たちが走り回る光景が広がっていた。
竜は俺のことを一瞥した後、凄まじい音量の咆哮を空に向けて放ち翼をはためかせて青空に飛び立った。
何故かその姿を見失いたくないと考えた俺は無意識に手を飛び立った竜に向けて伸ばす。
だが、いくら手を伸ばしたところで空を飛ぶ竜に届くことは無く、竜が残した微かな光を掴むだけに終わる。
氷の街の中心で呆然と佇む俺の手には鏡のように姿を反射する鱗だけが残っていた。
――出会いが形となり、世界を創る
そんな言葉と一瞬の光とともに俺は修練所へと戻っていた。
「ハッ!......今のは」
突然起こった事象に理解出来ずに停止していた思考が戻ってくる。
「大丈夫かマヌス!燃料が切れたかのように動かなくなったが......」
「大丈夫......マヌス君?」
顔を上げると、ルーカスさんとルミナさんが心配そうにこちらを見つめていた。
「だ、大丈夫......頭が追いついてないけど多分固有スキルが発動したのかな」
そう答えた俺を見て少し安心したのかホッとしたように息を整えてからルーカスさんは口を開く。
「固有スキルか。俺も持っているがこの世に一つだけのスキルなだけあって癖があるものだからな。ときに理解できないことが起こることもあるだろう」
ルーカスさんは「俺にも経験がある」と言いながらまだ混乱する俺の頭を落ち着かせるように撫でる。
そのお陰でさっきよりも思考が整理された俺は、「ごめん、ちょっと考えさせてください」と二人に断りを入れてからさっきの事象について思い出していた。
「さっき見えたのは絆を結ぶ世界の効果だとしても、初めてスキルを獲得した時やルミナさんと絆を結んだときにはあんな事は起こらなかったよな......」
聞こえた声は三つの追加効果の獲得とそれが親和性が高いことで合成するということを言っていた。
その結果生まれたのが確か......氷鉄竜の鏡鱗だったかな。
ということは俺見た竜は氷鉄竜ってことで、最後に掴んだ鱗がこのスキルってことか。
そういえば最後にいつもの無機質なものじゃなくて、感情が乗った声が聞こえたような。
(確か『――出会いが形となり、世界を創る』だっけ)
その言葉を心の内で復唱したことをきっかけに、また声が聞こえてくる。
『貴方は出会いのなかでひとつの世界の形を神に示しました。よって報酬として原初のガントレットを新たな姿に変化させます』
俺の口が勝手に動き、神導武器を呼び出すためのキーワードを声に出す。
『蒼鏡鱗のガントレット――機動』
その言葉を合図に俺の両手から青と白の光が溢れ、線となり右は蒼き竜を左は純白の鏡を形成していく。
形を成した二つの光は、まるで宿主を見つけたかのように俺の元へ還ってきた。
右手に蒼竜、左手には純白の鏡。内側から凍てつくような寒さとともに、光は新しいガントレットとして俺の手を覆い尽くしていく。
光が収まり、両手に目を向けてみるとそこにあったのは原初のガントレットとは全く違う姿の新しいガントレットだった。
右手には青い鱗が鎧のように積み重なり、歯車を半分に割ったような爪が指先で鈍く光る。左手は真鍮のフレームに縁取られた純白の盾が手を包み、鏡面のように辺りの景色を映し出す。
蒼と白――獰猛さと神秘的な美しさを持つ異なる二色のガントレットが俺へ装着されていた。
「もう、キャパオーバーだ......」
何とかそう口に出した俺は過剰な情報量を詰め込まれたことで熱くなった頭を癒すために目を閉じ、意識を手放した。
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