第12話 「修行の時間」
太陽が輝き、暖かな空気が身体を撫でていく穏やかな天気のなかで魔力で浮きながら歯車が噛み合う音を響かせる建造物が立ち並ぶ。
そんな規則性のある音を鳴らしながら力を求めるものを歓迎するギアタウンの修練所に俺は来ていた。
「『氷龍の煌めき』の皆さん、今日はよろしくお願いします!」
今日は『氷龍の煌めき』との初めての修行開始日ということでパーティーメンバー全員で見てくれることとなっている。
「こちらこそよろしく。改めて軽い自己紹介くらいはしておくか。ルーカスだ。氷人族で得意属性は氷、神導武器はレイピアを使う」
「カレンだ。私は希少種族であることから正式な種族名は秘密にさせていただくが得意属性は光、神導武器は直剣と中盾の二対になる」
「ソルヴィアだよ〜!ソルって呼んでね!種族は龍鱗族で得意属性は土と火、神導武器は銃だよ!」
三人の人柄は知っていたが得意属性や神導武器については聞く機会が無かったため初めて知ったな。修行をしてもらう為には必要な情報ということだろう。
「マヌスです!人族で得意属性は土と無です。神導武器はガントレットです。よろしくお願いします」
修行前だったらガントレットのことを伝えることに少し躊躇していたかもしれないが一年間、後悔の無い修行が出来たことで自信がついた。
(やっぱりこの一年は間違っていなかった......)
そんな感傷に浸っているとルーカスさんたちが不思議そうな顔をして俺を見ていた。
少し恥ずかしい気持ちになりながら首を振って誤魔化し、あまり触れないでくださいという気持ちを込めて今日の修行の内容について聞く。
「そ、それで今日はどんなことをするんですか?」
「そうだな。今日はマヌスの神導武器、ガントレットを装備した状態で俺たちと模擬戦をしてもらい、そこから課題を見つけていく」
「わかりました!修行の成果を見せる気持ちで頑張ります」
今までは動く的や、たまに父さんとの模擬戦をやるくらいしかしていなかったから他の人と戦うのは新鮮だな。
鉱魔獣にはそれぞれ特徴があってただの力比べじゃなくて相性を見極めることも大事って教えて貰ったし、この模擬戦も良い経験になりそうだ。
「では俺、カレン、ソルの順番で模擬戦をしていこう。......あーあとその前に質問していいか?」
「?大丈夫ですけど、どうしました?」
ルーカスさんが不思議そうな表情をしているけど、何か変な所があったかな?特に問題は無い気もするけど......
「いや、あまりにもマヌスが自然体過ぎて聞くのもどうかと思ったんだが......マヌスが背負っている女性は誰だ?」
......はっ!?わ、忘れてた!家を出てからここまでずっとルミナさんを背負っていたんだった。
あまりにも軽いし、微動だにもしなかったからそのままの状態でルーカスさんたちと話していた。
意識したら寝息みたいなものも聞こえてくるし......俺の背中でリラックスしすぎじゃないですか?
「い、今紹介しますね!ルミナさーん!起きてますか?起きてたら返事して!」
何回か背負ったままルミナさんを揺らしているとモゾモゾとした動きとともに背中から微かな声が漏れる。
「ん......マヌス君、おはよ〜......修練所ついた......?」
「着きましたよ!ほら、朝言った『氷龍の煌めき』の皆に挨拶してください」
まだ眠そうなルミナさんをそっと地面に下ろすと、倒れないように支えながらルーカスさんたちの方向へ身体を向かせる。
「ふわぁ〜......ルミナ。いつもは000で図書館司書をやってる......マヌス君に修行を付けるためにずっと一緒にいる。よろしく〜......自己紹介はちゃんと聞こえてたよ〜......」
ルミナさんがまだ眠そうだが挨拶をしてくれたことにホッとしていると、ルミナさんは軽く宙で指を振る。
魔力の揺らぎを感じた時には机と椅子が現れており、ルミナさんはそこに座るといつものように身体を伸ばした体勢になった。
「えーと改めましてルミナさんです!俺が修行を始める前に道を示してくれた人で俺にとってとても大切な人です!」
「マヌス君、そんな......照れる......けど、嬉しい」
頬を赤くしているが表情は変わらないルミナさんを見て俺も少し照れるが決して過言じゃない。
真っ直ぐに気持ちを伝えられるくらいルミナさんにはお世話になった。
ルーカスさんはそんな俺らの様子を見て、困惑した表情を見せる。
「そ、そうか。俺も図書館は何度か利用しているがいつも寝ている女性がいるとは思っていた。あまりにも動かないので声は掛けなかったが......」
「ルーカスはすぐに目的の資料の所へ行ってしまうからな。私やソルは少しだけ話したことはあるぞ」
「ソルたちも仲が良いと言えるほどは話していないけどね〜!同じ子を教える立場だしこれからよろしく!」
そんな自己紹介から始まったルーカスさんたちから教わる実践的な修行は、実りある時間の連続だった。
ルーカスさんからは討伐者として持つべき知識を教えて貰った。
ルーカスさんとの修行は戦闘訓練よりも座学が多く、黒板の前でメモを取ることが中心になっていた。
「鉱魔獣は知能は低いが、無いわけではない。人間が策を講じるのと同じように鉱魔獣も生き残るために集団で行動し、ときには奇襲や罠を仕掛けてくることもある」
「正直にこちらに突っ込んでくるわけじゃないんですね」
「そうだ。それ故に討伐者たちは万全の状態で任務を受ける必要があり、戦闘が始まる前に準備を怠る者から死んでいくとも言われているくらいだな」
「なるほど......一度倒せたからと油断したら何も知らない状態だと準備不足になる人は多そうです」
「実際、新人討伐者が依頼を失敗する原因で最も多いのが準備不足による事故だな。マヌスも依頼を受ける前に知識で足りていないと感じたならば絶対に情報収集は怠るなよ」
ルーカスさんの言葉は自分の経験だけではなく、これまで討伐者を続けるなかで起こった事象を交えて話してくれることでより勉強になることが多かった。
カレンさんとの修行は俺の弱点である防御面についてが中心だった。
これはカレンさんの戦闘スタイルが高い防御力からのカウンターであり、俺との模擬戦で守りの薄さが目立ったからだと言われた。
「マヌスはガントレットでの近接戦闘は得意だが、まだまだ防御が疎かだな。戦闘中に考えることが多いからか、攻撃した後のことを考えられてない」
「攻撃した後のこと......例えば敵の動きとかですか?」
「他にも自分のいる位置や相手の手の場所、目線や意識がどこを向いているのかなどを常に考えることが求められる」
「それだけのことを常に......俺だったら頭がパンクしそうです」
「最初から出来る奴はいない。まずは考えなくても最適解の攻撃を行うこと、次に相手の動きを予想する癖をつけること、最後に防御をした後に最強の攻撃を打ち込むことだ」
まずは攻撃を無意識で打つこと、か。今の俺だったらまずはそこからだな。
「まずは私の盾にガントレットを打ってこい。私がカウンターをするから何故カウンターを打たれたのか、自分の攻撃は適切だったかを常に考えて行動しろ」
それからカレンさんとはひたすら構えた盾に向かって攻撃を繰り返し、守りとは何かを理解する訓練を行った。
ソルさんはルミナさんと一緒に修行をすることが多く、ゴム弾と魔法の弾幕を避けて近接戦闘が出来る間合いまでたどり着く訓練を行った。
「マヌスくんは現状、遠距離攻撃が無いからね〜!ソルとの修行は遠距離からの攻撃を避けて相手の懐に入る訓練だ!頑張って避けるか、ガントレットで弾いてね!」
「わかりました!どんどん打ち込んでください!」
「ルミナちゃん!ソルと一緒に魔法でマヌスくんを狙って〜!あ、勿論死なない程度にね!」
「ん......わかった。マヌス、ファイト〜」
ソルさんとルミナさんは神導武器の銃から放たれるゴム弾と非致死性の魔法の弾幕を避ける為の訓練を付けてくれた。
最初は上手く弾幕を避けられずにゴム弾による青あざを多く作ってしまったが、ルミナさんの回復魔法のおかげで修行に臨むことができ、恐れずに間合いを詰めていける。
まぁ......その回復魔法は飛んでくる弾に紛れているんだけど。
「とりあえず2、3個の弾には慣れてきたね~!次は少し飛ばして30発だ~!」
「ん......私も魔法増やすね。がんば~......」
「ちょっ!全方位は無理じゃないですかね!?――うおおお!!気合だ!」
何度か気絶しかけることもあったが、俺が倒れないぎりぎりを見極めているのかなんとか折れずに修行をすることができたのだった。
それから、ルーカスさんたちが依頼などで来れない日はルミナさんから魔法の使い方と精霊術の使い方を教えて貰いながら足りない力を埋めていく。
修行をする日々は皆との絆を深め、研鑽する大切な時間となって過ぎていった。
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