第11話 「氷龍の煌めき」
夕焼け空が深い闇に変わる前に帰路に着いた俺はアレス父さんとミレア母さんに目標の達成を伝えるために夕食が終わった後、二人を呼び止める。
「やっと崩魔拳術のスキルを得ることができたよ!二人とも修行を手伝ってくれたり、帰ってきた後も気にかけてくれてありがとう!」
まだ一年の修行を終えただけで討伐者試験を合格できるわけではないが、それでも自分の力に自信を持てるまで修行ができたのは二人のおかげだ。
そんな俺の姿を見た二人は嬉しそうな顔をしながら優しい声で言葉をかける。
「マヌス、よくやったな!だが、ここで安心しててはいけないぞ。まだこれからの一年で覚えなければいけない知識もあるからな」
「頑張ったわね、マヌス!これまであえて人との交流を減らしていたのでしょうけど、これからは沢山の人に教えてもらいながら頑張ってね」
そんな声を聴きながら立ち上がった二人が俺の頭を撫でてくる。二人が褒めてくれながらもアドバイスをしてくれた言葉を受けて嬉しい気持ちになりながら、これからについて考える。
現状、俺が頼れそうな人はルミナさんだな。
ルミナさんと修行の合間に世間話をしに資料室へ行くことはあったけど、その度に修行を手伝いたいという有り難い言葉を貰っていた。
この一年は自分と向き合うために心苦しさもありながらお断りしていたけど今度、修行の成果を報告するときにでも頼んでみよう。
――あ、そうだ!
「二人にお願いがあるんだ。受けてくれるかわからないけど家の宿屋を良く利用してくれている討伐者パーティーの『氷龍の煌めき』に修行を見てもらえるか聞いてみてもいいかな?」
『氷龍の煌めき』は自由国ラグス・フールを中心に活動しているB級討伐者パーティーだ。
俺が小さい頃から交流があり、仕事の合間にどんな依頼を受けたのかを子供の俺に教えてくれる優しい人たちだ。
そんな人たちに修行を見てもらいたいというのは一年の修行のなかでずっと考えていた。
ただ、俺が勝手にお願いをすることはあんまり良くないかなっと思い、二人にお願いしてみる。
「おお!いいじゃないか『氷龍の煌めき』はマヌスに良くしてくれているのも見てるからな。勿論、相手が良ければだが聞いてみるのはいいんじゃないか?」
「そうね、明日にでも声をかけたらいいんじゃないかしら。マヌスの頑張りたいっていう気持ちを伝えなさい!」
アレス父さんが頷くのに続いてミレア母さんが俺に勇気を与えるように鼓舞してくれる。
俺が一人で考えていたことを二人が後押ししてくれたことで少し怖気づいてしまっていた気持ちを払うことができた。
「わかった、二人ともありがとう!明日『氷龍の煌めき』の皆に聞いてみるね!」
◇◆◇◆
両親との会話を終えた次の日の朝に宿屋の部屋から下に降りてきていた『氷龍の煌めき』の皆にお願いをするために声をかける。
「『氷龍の煌めき』の皆おはようございます!お願いがあるんですけど聞いてもらえますか?」
俺が声をかけると呼びかけた三人がこちらへ振り向いてこちらへ気づいたように笑顔を向ける。
眼鏡をかけて純白のコートにシャツスタイルのルーカスさん。
革のベルトにぴっちりとした潔白さを感じさせる真っ白なシャツに黒革製のコルセットスタイルのカレンさん。
フリルのスカートにホルスターやポーチが装飾されているサスペンダースタイルの可愛らしい服装のソルさん。
この三人がB級討伐者パーティー『氷龍の煌めき』の皆だ。
『氷龍の煌めき』唯一の男性でありパーティーリーダーでもあるルーカスさんが眼鏡を指で直しながら俺に応える。
「どうしたマヌス、改まって......ふむ。カレン、ソル。あっちの机で座って話すぞ。」
「わかった」「いいよ~!」
「皆さんありがとうございます!」
俺とルーカスさんたちが椅子に座ったところで一度深呼吸をしてから改めて話を切り出す。
「今日呼び止めたのは俺の修行を見て欲しいと思ったからです」
ほぉ......と口にしながらルーカスさんが視線で続きを促す。
俺はその視線に答えるように軽く頷いてから理由を答えていく。
「俺が討伐者になるために修行していることは何度かお話しさせて貰っていたので知ってるかと思うんですが、つい先日に目標としていたスキルの習得が終わり次のステップへ進む準備ができました」
俺の報告に『氷龍の煌めき』の皆が笑顔で「おめでとう」と伝えてくれたことで照れと嬉しさから少し顔が熱くなる。
「んんっ......ありがとうございます」と一つ咳払いをしながらお礼を言って続きの理由を説明する。
「この一年は自己鍛錬に専念した分、討伐者になれる15歳までの残りの一年間は一人では出来ない方法で修行したいんです。そこで、信頼できる討伐者の方は誰かと考えたときに思い浮かんだのが『氷龍の煌めき』の皆でした」
ルーカスさんたちは依頼を終えたあとで疲れているときも優しく俺に依頼中の出来事や討伐した鉱魔獣のことを教えてくれた。
そんな優しさと強さを持ち合わせるパーティーだからこそ、心から俺の修行を見てもらいたい。
「弱音を吐いたり、わがままは絶対に言いません。無理を承知でお願いします!」
俺はその場でルーカスさんたちに気持ちが伝わるよう願いながら頭を下げる。
「俺たちのことをそこまで評価してくれているのは嬉しいな。カレン、ソルお前はどうだ?」
「私としては問題無い。マヌスが頑張っているのも、おふざけで話を持ってきていないこともわかるから尚更、な」
「ソルちゃんもいいよ〜!パーティーとしても早急に受けなきゃいけない依頼も無いし、たまにだったらOK!」
ルーカスさんはカレンさんとソルさんの話しを聞いて少し悩んだあと、こちらへ手を差し出す。
「マヌス、お前からの依頼受けさせてもらう。期間はマヌスが討伐者になるまでの一年間で週に一度以上は修行を見ることをルーカスの名前で約束しよう。よろしく頼む」
「ルーカスさん......!!カレンさんとソルさんもありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします!」
俺は目の前のルーカスさんの手をしっかりと掴んだ。
これからの修行内容について軽く話し合いをした後、詳しい内容は明日修練場で詰めることになった。
修行は週に1〜2回で内容に応じてパーティー内で分担して教えてくれるらしい。
◇◆◇◆
それから俺は明日からの修行にワクワクしながら宿屋の手伝いをし、夕方には仕事も落ち着いて来た頃。
俺は宿屋の受付にいたミレア母さんに許可を貰ってルミナさんのいる000の図書館に訪れていた。
「ルミナさん、お久しぶりです!」
初めて会った頃のようにカウンターに身体を伸ばして気だるげな様子のルミナさんを見て少し安心した気持ちを抱きながら挨拶する。
突っ伏していた状態から顔を上げてこちらに顔を向けたルミナさんは俺だとわかってくれたのか口角を少しあげていた。
「マヌスくん〜久しぶりだね〜......二ヶ月ぶりくらいかな......?会いたかったよ〜」
「俺もルミナさんに会いたかったんですけど、ちょっと集中して修行しないと目標に間に合わなそうだったので......すいません」
申し訳なさそうにする俺を見てルミナさんは意地悪そうな笑みを浮かべる。
「じゃあ今度こそ私に修行を手伝わせてくれるのかな〜......?マヌスくんは何度も断られてるしな〜......」
ニコニコといつものように一緒に修行しようと提案してくれるルミナさんに申し訳なさで苦笑しながらも、答えるために口を開く。
「それは本当にすいません......なので今日は俺からルミナさんと修行させて欲しいとお願いするために来ました」
「え......いいの?」
そう言うとルミナさんは立ち上がり、普段は見せないような素早さで俺の前に現れて俺の肩を掴む。
「うわ!ル、ルミナさんそんな早く動けたんですね」
「そんなことはどうでもいい。私と一緒に修行するの?しないの?」
「し、します!します――させてください!!」
「よし、言質は取った......ふぅ〜」
ルミナさんは俺の肩を掴んでいた手を離して汗を拭う動作をしながら息を吐いていた。
びっくりした......普段ルミナさんからは想像できない気迫と圧を感じた。
俺が教えて貰う立場なのにルミナさんはこんな楽しみにしてくれていたなんて......
少しズレた服を直しながら驚きで乱れた息を整えたあと、俺はルミナさんに手を伸ばす。
「ルミナさん、これからよろしくお願いします」
「ん......毎日見てあげるからそのつもりでね」
そんな冗談のようで一切笑ってない表情をしたルミナさんは俺の手を掴み握手をしてくれた。
『氷龍の煌めき』の皆とルミナさんに手伝って貰えるなら残りの一年は充実した日々が送れるだろう。
でも――
「毎日見て貰えるなら嬉しいですけど現実的に無理じゃないですか?ルミナさんには図書館司書がありますし」
「問題無い......私は分身を作れる。ここでは寝てるだけから分身でも大丈夫」
「そんな力技!?」
「あと、これから一年間はマヌスの宿屋にお世話になるし、旅にも付いていく。000の一番偉い総司令に話しは通しておいた~......急に動いたから疲れた、お休み......」
「え!?嬉しいですけど......急過ぎますよ!ちょ、寝ないでルミナさん〜!!」
爆弾発言を置いてまたカウンターに突っ伏したルミナさんと驚く俺を照らすように図書館の窓からは綺麗な月光が差し込んでいたのだった。
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