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ガントレットは青空を掴む ー旅は導き、世は助けー  作者: いさな
第一章 導きのエルフと自由の栞

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第10話 「一年の軌跡と崩魔拳術」

俺は父さんとの修行を終えた後、家に帰り自室でこれからの修行内容についてメモ帳に纏めていた。


 俺が討伐者に登録することができる15歳になるまであと二年。


 この二年の間に鉱魔獣を問題無く狩ることができるように力を付けるためには無駄な道を踏んでいる暇は無い。


 まず一年をかけて格闘術のスキルレベルを上げていき、他の相性が良いスキルが取れた場合はしっかりと調べて理解度を上げることに努めること。


 それに加えて原初のガントレットを普段の修行でも使えるようにすることを目標にしよう。


 ――それからは宿屋の手伝いをしながら毎日のように訓練施設に通い詰める修行の日々を送っていった。


 まず始めたことは写し身スキルを利用した正しい身体の動かし方だ。


 初めての修行のときにストックした〈父のサンドバック打ち込み〉を再生しながらサンドバックにひたすら打ち込み、精度を高めながら一区切りのタイミングで父さんに自分の動きを見せて次の動きのストックを溜めさせてもらい、再現するということを繰り返した。


 ストックは一つずつ着実に積みあがっていき、外が暑く太陽が地面を照りつける時期になった頃にはストック数は20を超えていた。


「ストックが増えてきたし色々な動きも再現できるようになってきたな!格闘術のレベルも上がってきたし、筋力も増えてきた。あれに挑戦するか」


 動きの再現に一区切りをつけた俺は、ルミナさんの本に書いてあった『崩魔拳術』という複合武術に取り組むことにした。


『神導武器大全 出力=ガントレット』の本を取り出して該当のページを開く。


 詳しい内容をしっかりと読み取り、持ってきていたメモ帳に書き出す。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

『崩魔拳術』


 崩魔拳術は無属性の魔力を拳に纏わせて相手を殴るということが前提となりそこから型ごとに派生していく拳術である。


 Ⅰの型は両手に魔力を纏った拳同士を打ち合わせて自身の内部に無属性魔力を流し込み肉体強度を上げる。


 Ⅱの型では手に纏った無属性魔力を操作し、魔力で形成した波を相手に流し込むことで内部から破壊する。


 そして、Ⅲの型では自身の持つ他の属性魔力と無属性魔力を融合させることで大きな破壊効果を拳に持たせて相手の内部に力を流し込むことで防御を無視して相手を崩壊させる。


 習得には魔法ではなく魔力を操る訓練が必要であり、身体全体に魔力を巡らせること、その魔力を一つにまとめて好きな部位に移動させること、集めた魔力を外部に放出できること全てを完璧に習得することが崩魔拳術の始まりの扉を開く最初の一歩である。


 最初は魔力操作を完璧にする必要がある。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 これから俺が真っ先に取り組むべきことは魔力について知り、操作することだ。


 今まで身体を動かすことだけに集中することが出来ていたが、そこに魔力操作を加えると初めはまともな修行も出来ないだろう。


 まずは自分の魔力を感じる修行から始めるか。やり方は『属性魔法・魔術指南書 出力=土魔法』に書いてあった。


 その場で目を閉じて自分の内面に意識を向ける。


 そこから、心臓とは反対側にあると言われている魔力貯蔵器官に手を置いて魔力の存在を確認する。


 そうすると暖かな感覚を発する力が自分の身体のなかにあることを認識できた。


 次に、想像力を働かせ、自分の身体を脳内に描き、身体のなかに管が通っていることをイメージする。その後に手の下にある魔力貯蔵器官からその管に力を流すように力を制御する。


 深呼吸をし、心を落ち着けて身体全体に魔力を流す意識を高めていく。


「魔力を......熱を感じて巡らせる」


 手の上を中心に少しずつ魔力が溢れていく。溢れた魔力を束ねて多数の管にしようとした瞬間、俺のなかにあった魔力が熱とともに放散していく。


「あっ......駄目か。そんな簡単とは思ってなかったけど時間は必要かな」


 読んだ知識を見様見真似でやったくらいじゃすぐに習得は難しそうだ。今日はもうちょっと試してみて家に帰ったら母さんにコツを聞いてみよう。


 魔法を使うのはこの一年間は諦めて魔力操作と格闘術のレベル上げに専念することにする。


 ――――そこから修行が終わったストックは消して新しいストックを手に入れることを繰り返しながら、残りの時間は魔力操作を習得する日々を送った。


「一人で出来ることを全てやる」を目標に14歳を迎えるまでは父さんと母さん以外の交流を控えながら黙々とサンドバックに拳を打ち込む。その間も魔力を動かす意識は忘れない。


 反復と失敗を繰り返しながら、半年が過ぎた頃に原初のガントレットを装着した状態での修行を開始した。


 原初のガントレット用の魔鉱石を手に入れることは討伐者になり、鉱魔獣を倒すまで出来ないので武器を装着した状態で攻撃することに慣れる訓練を中心に行う。


「原初のガントレット『機動』」


 両腕にガントレットが装着されると腕にずっしりとした重みが伝わる。手を開閉させて拳の握る感覚を慣らしていくがどうにもしっくりこない。


 この感覚に慣れるためにも、今までのストックで知った動きをガントレットを装着した状態で復習するのがいいかな。ストックは消さないで残してあるから復習は簡単に始められる。


 そして、暖かさが落ち着き肌に当たる風が少し冷たいと感じるほどの時間が経った頃にはスキルに魔力操作Ⅰが増え、魔力による身体強化ができるようになった。


 崩魔拳術Ⅰの型である身体強化のおかげで、ガントレットを装着した状態でも生身の状態と同じような感覚で修行に取り組むことができる。


 半年の修行により、魔力操作Ⅰと格闘術Ⅱに身体操作Ⅰのスキルが増えたことで崩魔拳術に取り組むことができる前提条件を満たすことができた。


 始めは内部で操作した魔力を外に放出することもできず、鋼鉄製の的を原初のガントレットを装着した状態で殴っても身体能力に物を言わせた攻撃しかできずに的をへこませる結果になった。


 崩魔拳術は自身の持つ力を魔力と一緒に相手の内部へ浸透させることで内側から破壊することを目的とした拳術。


 攻撃対象が吹っ飛んだり、拳を打ち込んだ部分から表面上の力が伝わることで打撃跡が残る状態は失敗だ。


 まずは、外へ魔力を放出すること。次に放出した魔力の形を波に変化させて相手へ伝えること。このことを意識して修行を進めよう。


 魔力操作を取得する際に苦労したことを思い出して少し憂鬱になりながらも少しずつだが課題をこなしていく。


 ちょうど修行を始めてから一年が経った頃、サンドバックにガントレットを打ち込んだときに今までとは違う感覚が身体に駆け巡る。


 次の瞬間、サンドバックが中心から弾けるように中身をぶちまけて破裂した。


「これは......!」


 その感覚を忘れないうちにこれまでガントレットを打ち込み続けた鋼鉄で出来た板の的にさっきと同じように拳を叩きこむと、打撃点からひび割れるように亀裂が走り、粉々に砕け散った。


「掴んだ......!これが崩魔拳術への入り口!」


 頭の中に声が聞こえてくる。


『スキル:崩魔拳術Ⅰを獲得しました』


 この一年の修行の成果がこの声に表れている。


 その場で倒れこみ、空を見上げる。


 夕焼けで橙色に染まった空からの光が俺のことを優しく照らす。


 まだ通過点、だが一つの壁を壊した日。今日という日を、空の色を俺は忘れることは無いだろう。


「ステータス」


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 名前:マヌス・カエリ

 年齢:14歳

 種族:人族


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【神導武器】

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【Ⅰ進化】原初のガントレット

 └ 使用者の心身の成長と経験値によって姿を変える

 └ 中心の窪みに魔鉱石を入れることで特殊な蒸気を内部に発生させる


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【スキル】

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【通常】剣術Ⅰ

 └ 剣を用いた行動に補正がかかる


【通常】写し身Ⅰ

 └ 対象の動きを写し、真似ることで学びを得る


〈ストック:父のサンドバック打ち込み・正拳突き・フェイント・足払い・過集中・父のシャドウ・喧嘩殺法〉


 ※他のストックは削除済み


【通常】格闘術Ⅱ

 └ 拳を用いた行動に補正がかかる

 アーツ〈正拳突き〉


【通常】身体操作Ⅰ

 └ 身体が自分の思い描くように動かせるようになる


【通常】魔力操作Ⅱ

 └ 魔力を動かせるようになる

 アーツ〈肉体強化・外部放出〉


【複合】崩魔拳術Ⅰ

 └ 魔力と力を混ぜ合わせ相手を内部から破壊する武術

 アーツ〈浸透破〉



【固有】絆が結ぶ世界ノードゥスワールド

 └ 絆を深めた者の力を少しだけ得ることができる

 絆を深めた先に新たな力を得る

〈追加効果:斧術の可能性・魔法使いの種・精霊術の欠片〉


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【魔法】

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【得意】土魔法Ⅰ

 └ 土魔法が使用可能になる 習熟度に応じて自由に土を操ることができる


【得意】無魔法Ⅰ

 └ 無魔法が使用可能になる 習熟度に応じて強化できるものが増えていく


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【称号】

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【初期】神導に招かれし者

 └ 神導武器の適正が他の者よりも少し高い者に送られる称号

 神導武器の成長を微補正


【成長】始まりの足跡

 └ 自分の努力で己に課した試練を乗り越えた者に与えられる称号

 心が折れにくくなる

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 大丈夫だ。しっかりとステータスにも反映されている。


 称号の欄に追加された『始まりの足跡』も神様が俺の頑張りを祝福してくれているように感じて目に涙が浮かんでくる。


 達成感に心が大きく鼓動を鳴らすのを抑えるために深く呼吸をして感情を整える。


「この一年で自信が持てるくらいの修行はした。これからの一年は繋がりを作ることにも挑戦しようか」


 新しい決意を胸に、高鳴る心が落ち着くまで暖かな夕焼けを眺めていた。

【作者からお願い】


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