第9話 「特化型と多機能型」
「マヌスも調べたとは思うが、まずは神導武器についてざっくり教えるか」
そういうとアレス父さんは目を閉じて右手を前に出す。
「海の片手斧『機動』」
その言葉に呼応するように銅の持ち手に青く染まった刃を持つ片手斧が、アレス父さんの手に収まる。
「これが俺の最初の神導武器であり、俺が討伐者になった始まりの期間を支えてくれた海の片手斧だ。マヌスの原初のガントレットと同じ位置にある俺の神導武器の変化の基盤になっている」
凄い綺麗な斧だ。水面のように澄んだ蒼の刃が照明の光を受けて宝石のように煌めいている。
片手斧だから重さで相手を押しつぶす感じでは無いと思うけど、その代わりに繊細さと打ち負けることの無い力強さを感じさせる見た目だ。
「なんて言ったら良いかわからないけど、凄い綺麗な斧だね!ここから父さんの討伐者人生が始まったんだ......!」
「そうだな。俺の始まりの神導武器である海の片手斧は水属性に特化した斧だ。神導武器は特化型と多機能型に分かれるがそれを判別することは性質を表す頭の文字で確認できる」
アレス父さんは片手斧を空中に投げて掴むというジャグリングのような器用なことをしながらこちらを見つめている。
「俺の海や昔に話したことがある母さんの火の他にも鉄や衝撃などの一つの属性を表す性質を持つのが特化型で、マヌスのように原初や始まり、未来や未知といった一言で表すことの出来ない可能性を感じさせる性質を持つのが多機能型と言われているな」
説明が終わったことを示すように高く片手斧を投げるとパシッという音とともに持ち手を掴み、言葉を止めて俺に説明を飲み込む時間を作る。
俺のガントレットは多機能型なんだ。
ガントレットってだけでも迷ったのに、多機能って言われてもまた選択肢が多くて道に迷いやすい要素が付いてるから素直に感謝しづらいな......。個人的には道がある程度定まっていてくれてたら助かったんだけど――
そんなことを思いながら心のなかで溜息をつく俺の気持ちを知ってか知らずか、アレス父さんが話し始める。
「まずは特化型の特徴から説明するか。特化型の神導武器は最初の武器の要素を残しつつ変化していくため大元の形は変わらないことが特徴だ。俺の場合は海及び水の要素と途中で手に入れた土魔法が融合して泥濘となり、武器の種類は片手斧から大斧、爪大斧へと変化していった。潮刃の片手斧・泥濘大斧・泥鋼砕刃の大斧・沈淵葬爪大斧『連続機動』」
アレス父さんの手に持っていた海の片手斧の形が連続で変形していく。最初は持ち手が魔鉄に変わり、斧頭の刃の上に波打つ白の波紋が付いた片手斧、次は斧が三倍ほどの体積に増えた大斧になり、元々一つしかなかった刃も左右に伸びて銅色と深い青の二色の斧頭に変化する。そこから更に持ち手が太く、長く変化して斧頭も二倍ほどの大きさの大斧が現れ、最後に左右に伸びていた刃の数が三枚二対に変化し、持ち手の金属は漆黒で周りに鎖が絡まった威圧感のある爪大斧になった。
沈淵葬爪大斧になったであろう爪大斧の柄を地面に下ろすと、父さんはこちらを見て俺の反応を楽しむよう口元に笑みを浮かべる。
「連続機動で見せたから詳しく見られたわけではないと思うが、基本形態が斧から変わらずに徐々に要素が追加される形で変化したのがわかったか?これが特化型神導武器の特徴だ。水に適正のある片手斧から俺の討伐者時代の経験を糧として土属性が付与され、刃は大きく数も増えていき爪大斧に変化した。一つの道を極めていき唯一無二を体現することができる反面、明確な弱点が見えてくるという欠点を持つ」
確かにアレス父さんの神導武器は片手斧から爪大斧になったものの斧という範疇からは逸脱していないように見えた。
イメージは片手斧に必要な能力がパズルのピースのように嵌り、その形を大きくしていった感じだ。
「次は多機能型についてだな。マヌスのような多機能型は幅広い変化が起こるとされている。俺の友人の多機能型神導武器使いを例にすると、そいつは白紙の短剣から始まり、討伐者として各地を巡り歩くなかで様々な変化が起こっていた。例えば、短剣が一瞬の間だけ凄い伸びたり宙に浮いたりだな」
なんか話を聞いてる感じは曲芸とか特殊能力みたいだな。
「戦略の幅は広がりそうだけどそれだけで特化型と同じくらい強くなれるの?器用貧乏になりそうだけど......」
「マヌスの言う通り変化先が増えていくだけだと考えることも多いし、手数が増えていくだけで最高値を求めると特化型には及ばない。形を瞬時に切り替えて戦う器用さを求められる分、知らない奴からは特化型より大きく劣ると思われることもある」
しかし――と一呼吸置いてからアレス父さんは沈淵葬爪大斧を消してからこちらに指を向ける。
「特化型の唯一性に多機能型が勝てないかというとそんなことは無い。多機能型には特化型には無い能力である融合という力があるからだ」
融合......素直に捉えるとしたら、神導武器の効果を合わせるとか他の武器と混ぜるとかなのだろうか。
「俺は融合については詳しくないが、例に出した奴は宙に浮かせた短剣が増えて、その全てに異なる属性がエンチャントされてたぞ。マヌスの原初のガントレットの融合については今後の楽しみってやつだな!」
はっはっはっと笑いながら俺の肩を叩く父さんに笑顔で答えながら改めて自分のガントレットについて考える。
今日という一日でガントレットへの向き合い方は理解できたし、自分に足りないものが沢山あることも痛いほどわかった。
後はどうやって伸ばすのか、鉱魔獣を倒すために必要な力は何かを念頭に置いて修行を進めるべきだろう。
今日学んだことを忘れずに明日から修行を始めよう。
「よし!マヌスも考えることがいっぱいで疲れたろう。今日はここで終わりにしよう。明日からの修行にはたまにしか付き合えないが疑問や悩みが出来たら遠慮せずに言うんだぞ」
「お疲れ様でした!父さん、付き合ってくれてありがとう!」
本気で強くなりたいなら一人の力では無理だ。特に俺のスキルや神導武器の特性を踏まえると尚更。
まずは出来るだけ毎日訓練施設に来て、行き詰ったら頼ることにする。
だけど、まずは自分の力を高めるところから!帰ったらルミナさんから貰った本に良い方法が書いてないか読んでみよう。
「まずは帰ってゆっくり休め!母さんの美味い飯を食って風呂に入る。これがあれば挫けることなく修行に臨めるってもんだ」
「了解!帰るぞ~!!」
その後は父さんと今日の感想を言い合いながら魔蒸列車に乗り、ギアタウンを後にしたのだった。
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14歳修行終了時点のステータス
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名前:マヌス・カエリ
年齢:13歳
種族:人族
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【神導武器】
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【Ⅰ進化】原初のガントレット
└ 使用者の心身の成長と経験値によって姿を変える
└ 中心の窪みに魔鉱石を入れることで特殊な蒸気を内部に発生させる
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【スキル】
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【通常】剣術Ⅰ
└ 剣を用いた行動に補正がかかる
【通常】写し身Ⅰ
└ 対象の動きを写し、真似ることで学びを得る
〈ストック:父のサンドバック打ち込み〉
【通常】格闘術Ⅰ
└ 拳を用いた行動に補正がかかる
【固有】絆が結ぶ世界
└ 絆を深めた者の力を少しだけ得ることができる
絆を深めた先に新たな力を得る
〈追加効果:斧術の可能性・魔法使いの種・精霊術の欠片〉
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【魔法】
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【得意】土魔法Ⅰ
└ 土魔法が使用可能になる 習熟度に応じて自由に土を操ることができる
【得意】無魔法Ⅰ
└ 無魔法が使用可能になる 習熟度に応じて強化できるものが増えていく
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【称号】
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【初期】神導に招かれし者
└ 神導武器の適正が他の者よりも少し高い者に送られる称号
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