8話「写し身スキルの可能性」
「マヌス、よく頑張ったな。一度休憩にしよう」
父さんが一つ息を吐き、模擬戦の終了を告げる。額に少し汗が見える程度でまだまだ余裕がありそうな父さんを視界に捉えながら、限界が来ていた俺は倒れこむように身体を大の字にして地面に預けた。
「はぁ......了解。あ~疲れた!拳での近接戦闘、考えること多すぎ!」
「はっはっは!今までの剣を使用した模擬戦とは勝手が違うからな、慣れないことをする上にギャップで疲れやすくもなる。頑張ったなマヌス」
模擬戦の最後の方には体勢が崩れることが無くなり、拳の威力も上がっていたがこの時間でまともに父さんへ攻撃が当たってないことが俺の実力不足を裏付けている。
「スキルも手に入ったし、一回くらいは父さんにダメージを与えたかったけどまだ無理だ~......」
「流石に討伐者時代から時間が経ってブランクがあるとはいえ、まだまだ子供には遅れは取らんよ!」
父さんが大口を開けて笑っている姿からは余裕を感じる。
「くっ……」
悔しくないと言えば嘘になる。でも不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
――いつか絶対、あっと言わせてやる。
そう胸に刻んで疲れた体を休めていると、父さんが笑いを収めて口を開いた。
「近接戦闘は今日言ったことを意識しながら進めていくと良いだろう。シャドーや迷惑にならない範囲でなら他に人に声をかけて模擬戦をやってもらうのが近道になると思うぞ」
そうだった。今日は父さんが手伝ってくれているから問題無いがこれから先、修行をするなら一人で出来ることを模索するか、修行を手伝ってくれる人を探す必要が出てくる。
家の宿屋は討伐者の人も利用してくれているから誰かに声をかけてみようかな。でも、今の俺だと教えて貰ったことをすぐに実践できないかも......
そんなことを考えながら頭を悩ませているとやっと体が動かせる程度には体力が戻ってきた。よっという声とともに起き上がった俺を見て父さんは次の修行の説明を始める。
「やっと動けるようになったな。次はマヌスのスキルについてだ。家を出る前に聞いたものだとマヌスが持っているスキルは『剣術Ⅰ』『写し身Ⅰ』に固有スキルの『絆が結ぶ世界』とさっき手に入れた『格闘術Ⅰ』だな。悪いが俺は固有スキルを持っていないので今回教えられることは通常スキルだけになる」
「わかった!あ、あと『絆を結ぶ世界』の追加効果で絆を深めた人の力を得られるっているのがあるんだけどその中に父さんの力だと思う『斧術の可能性』っていうのがあるんだ。俺には斧は使えないけど斧術が何か知りたいから今度教えて!」
「おお!そんな効果があったのか。いいぞ、今日はそこまで時間は無いが、また一緒に修行するときにでも教えてやろう!まずはマヌスのスキルを理解するところからだな」
俺の持っているスキルか――剣術と格闘術についてはある程度理解できているが問題はモノマネスキルだな。
「じゃあ、写し身スキルについてもっと知りたいな。格闘術は効果をさっき体感できたし、剣術は当分の間使うことは無さそうだし」
「写し身スキルか......ステータスにはなんて書いてあった?」
父さんがスキルの詳細を確認してきたのでステータスを開いて写し身Ⅰの欄を見る。
【通常】写し身Ⅰ
└ 他者の動きを写し、真似ることで学びを得る
「写し身Ⅰには対象の動きを真似て学べるって書いてあるね。」
それを聞いた父さんは少し悩んだ後、訓練施設に設置してあるサンドバックの前へ歩いていく。
「マヌス、俺が今から正しいフォームで拳をこのサンドバックに打っていく。その動きを写し身スキルを意識しながら観察し、お前も隣にあるサンドバックを殴ってくれ。スキルを使用するときのアドバイスだがスキルを使用するときにそのスキルの名称を声に出すと良いぞ」
「慣れると声に出す必要は無くなるが」と言うと、父さんは腰を落としサンドバックに向かって何度も拳を打ち付けていく。
「スキルを使うときは声を出す......よし、【写し身】!」
俺が声に出してスキル名を言ったその時、俺の目に魔力が集中していく。
その瞬間、父さんの動きがゆっくりに見えるとともに動きの始まりが理解できるようになった。
父さんがサンドバックを殴るたびに拳の形、力の入れ方、衝撃の流れがどんどん明確になっていく。
そして、父さんの動きを完璧に理解できたと感じたときに頭の中からカチッという音と共に声が聞こえる。
『写し身スキルが発動します。写し身対象の動きがストックされます。』
今まで詳しい内容がわからなかった写し身スキルについての知識が脳内に流れ込んでくる。
ステータスを開くと写し身スキルの欄が変化していた。
【通常】写し身Ⅰ
└ 他者の動きを写し真似ることで学びを得る
〈ストック:名称未設定1〉
ステータスを確認したあと、俺は流れ込んだ知識の通りにスキルを発動していく。
「ストック名称変更―【父のサンドバック打ち込み】。ストック解放、【父のサンドバック打ち込み】」
そう口にした瞬間に、ステータスのストック欄にあった【名称未設定1】が【父のサンドバック打ち込み】に変更されたあと目の前に一つの映像として父さんの動きが眼前に表れた。
その動きを上からなぞるように俺の身体を意識して動かしてサンドバックへ拳を打ち込んでいく。
始めは軽い音しか鳴らず、サンドバックも少し揺れる程度だったものが何度もストック映像を模倣し、拳を叩きつけていくと拳から鳴る音が変わっていく。
無心で動きをなぞることだけに神経を集中させる。
動きが最適化されていくことで重い音が訓練施設に響くようになり、最後の一撃はサンドバックが大きく後方に飛んでいきこちらへ返ってきた。
「これが写し身スキルか......」
「やはり考えた通りだな。マヌスよく覚えておけ。写し身スキルは現状、修行に用いることを目的とするのであれば最高のスキルになる」
スキルを実感した今ならわかる。動きを完璧に写し、なぞっているうちに間違ったフォームが矯正できる写し身スキルは通常の修行では不可能な効率で学ぶことができるスキルだ。
ただ、万能なスキルであることには間違いないが問題点も見えてくる。
「凄いスキルだけどストックする対象を見つけなきゃいけないことと模倣した動きを真似するまで時間が掛かるのが大変かな。あと、スキルレベルが上がったらどうなるかわからないけどしっかりと観察しなきゃストックにならないから戦闘中に相手の動きを真似するのは無理そうかも」
「ま、最初からそんな最強スキルは無いってことだ。沢山スキルを使ってレベルを上げて進化させれば可能性はあるがな」
父さんはそう言って俺を慰めるかのように優しく肩に手を置く。
「さぁ!マヌス、あともうひと踏ん張りだ!最後に神導武器について教えるぞ。俺の神導武器も見せるから参考にしてくれ」
「よし、よろしくお願いします!」
俺は気合を入れなおすために大きく声を上げて最後の修行に臨んだ。
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