第36話
「いらっしゃいませ、ハルキ様。こちらへどうぞ」
アンディはすぐにハルキを応接室に通した。
「色々噂は伺っております、ご活躍の様で何よりです。今日はどういった奴隷をお求めですか?」
流石に老舗の奴隷商ともなると情報は何かと持っている様だ。
「土木、建築、農業、会計、その辺が出来る人はいますか?
多分アンディさんにはすぐに話が伝わるだろうから先に言っておきますが、村を一つ作るつもりです。
一応まだ口外はしないでください。
なのでそれ以外にも色々と人材が欲しいんです」
「村を作る、ですか。
開拓村の初期メンバーを奴隷で、という事でよろしいですか?」
ハルキは突拍子もない事を言ったつもりだがアンディに動揺は見られない。
「そうですね。もちろん奴隷だけで進めるわけではありませんが」
「わかりました。今いる奴隷で全てが賄えるかは微妙ですが、あちらの部屋に用意しております。ご覧になってください」
ハルキの案内された部屋にはズラリと女奴隷が並んでいた。それはミーユを買った時と同じだが、今回はその後ろに男の奴隷も何人か並んでいる。
「アンディさん、あの男の奴隷達は?」
「今回は女奴隷と、夫婦で奴隷になっている者は後ろに夫を並ばせています。
今回ハルキ様のお求めの奴隷の場合は夫婦も宜しいかと思いましたので。
夫のいる女奴隷に夜の相手をさせる事は出来ませんが」
そう言われてハルキも思い出す。
確かにハルキの元の世界でも、開拓には夫婦で入植する事が多かった様な内容のテレビを朧げながら見た記憶があった。
「そうですね。それも含めて見させてもらいます」
ハルキはミーユを選んだ時と同じ様に、なんとなくの雰囲気で数名選び、特技などを聞いていく。
「アンディさん、今日奴隷を買ったとしても引き取りはしばらく後でも構いませんか? その間の生活費は払いますから」
「勿論構いません。ハルキ様でしたら一月位はこちらで無料でお預かりさせて頂きます」
「助かります。でしたら今前に出ている人は買わせてもらいます」
「ありがとうございます。それでは契約を」
ハルキはその場で八人の奴隷を買い取った。今回はその全てが夫婦である。
別室で契約を行った後にハルキがアンディに頼み事をした。
「今から一度帰って連れてくるので、新しく買った奴隷にスライムをテイムさせたいんですが構いませんか?」
「ハルキ様のスライムですか。それも色々と噂は伺っております。勿論構いませんよ。
私も機会が有れば手に入れたいとは思っていましたが、可能でしょうか?」
「アンディさんが欲しいなら何匹でも無料で譲りますよ。とりあえず十匹位で良いですか?」
「私に十匹もテイム出来るかはわかりませんが、私の奴隷もいるのでなんとかなるでしょう。
是非お願いします」
「多分アンディさんなら数十は大丈夫ですよ。じゃあ一旦家に帰って連れて来ます」
ハルキは一旦家に戻り、スライムを連れてアンディの店に戻った。
「アンディさん、それじゃ、スライムを」
「はい」
十匹のスライムを難なく受け渡し、スライムと意志の疎通を確認するアンディ。
「素晴らしいですね。私にこの様な事が出来るとは」
「よかったです。アンディさん、後この子もどうぞ」
ハルキの肩に一羽の雲切隼が舞い降りた。
「これは?」
「雲切隼です。今は数に余裕があるんで良かったらどうぞ」
「ありがとうございます。ですが流石にこちらまで無料で受け取る訳には参りません。支払いはキッチリとさせて頂きます」
「大丈夫ですよ。これからもまたお世話になりますから」
「それでしたら、一人、奴隷を貰って頂けませんか? 色々あって私が契約しております。普通の方には扱い辛い者ですが、ハルキ様には力になる事はお約束出来ます」
「そんな人がいるんだ。
とりあえず会わせてもらえますか?」
「はい。レニーをこちらへ」
アンディは側仕えにレニーという者を呼びに行かせた。
ハルキの前に現れたのはアンディの下にいる者には珍しい、薄汚れた服を着た若い女性だった。
「レニーと申します」
「ハルキです。アンディさん、何故彼女を?」
「彼女はこのセンシュー王国の北、ビワ神国の出身です。
今は粗末な服を着させていますが、聖女なんですよ。
元、が付きますがね…」
「聖女、ですか?
…聖女って何なんですか?」
アンディが聖女についてハルキに説明した。
この世界にある宗教は一つで、この国にある教会も全てその宗教の物だ。ビワ神国はその宗教の元締めの国で、教皇が国を治めている。
聖女はその象徴の一人で、色々な所から候補を集めてビワ神国にある大教会で暮らしている。
そんな中、次の聖女に選ばれたレニーは教会内の派閥争いの結果、聖女になってすぐにその職を追われる事になった。
レニーを後押ししていた者たちが粛正され、その中の生き残りがなんとかレニーを国外に逃がしたのだった。
なるべく見つかる事の無い様に、センシュー王国の中でも南のサノ領のアンディを頼って届けられたのだった。
「アンディさん、彼女は自分の希望で奴隷になっているんですか?」
「希望、というよりは奴隷になる事で狙われにくくなるという事もあります。
もしレニーの存在が知られたとしても奴隷に手を出すという事はその主人に手を出すのと同じことですので」
「でも、なんで自分なんですか?
もっと金や権力のある人もいるんじゃないですか?」
「そういう方々は商売や色々な事で教会とも繋がりがあります。
私の知っている限り、ハルキ様程レニーの主人に相応しい方はおられません」
「…わかりました、譲っていただきます」
元聖女のレニーはこうしてハルキの奴隷となったのだった。




