第37話
「アンディさん、レニーはやはり豪華な生活に慣れているんですか?」
アンディから元聖女のレニーを譲り受けてハルキが聞く。
「いえ、その様な事はありません。
元々は孤児だったと聞いています。聖女になるまでも質素な生活をしているはずです。
聖女になってからの時間は長くないので、普通の奴隷と考えて頂いて結構です。犯罪奴隷では無いですが、奴隷としてのの期間も基本的に終わりがありません。
私に預けた者も、とにかく生かしてやってくれ、とだけでした。うちでも普通の奴隷として扱っております。
レニー、それで間違いないな?」
「はい。贅沢はした事はありませんし、食べる物と雨風が凌げる場所があればそれで充分です。
聖女になるまでずっと鍛えられたので、魔力はそれなりかと思います。他にも色々と勉強はさせて頂いてます」
「わかりました、アンディさん。
レニー、俺の奴隷の使い方は少し変わっていると思う。だが、酷いことをするつもりは無いし、誰かにそうさせるつもりもない。
一人、前にここで買った者がいるから、その子から色々学んでくれ。
後はそうだな、自分でこれからどうなりたいか、どうやって生きていきたいか、もし有れば教えてほしい。
今すぐでなくても構わない。そんな事を考えたら俺に伝えて欲しい」
「えっと、は、はい。
すぐには何も浮かびませんが、何か有ればお伝えします」
「うん、そうしてくれ。
アンディさん、今日買った奴隷にスライムをテイムさせたらレニーだけは連れて帰ります。
レニー、まだ部屋もちゃんとは用意出来ないが、一緒に暮らす事になる。困った事が有ればすぐに言ってくれ」
「はい、ハルキ様」
「ハルキ様、レニーをよろしくお願いします」
ハルキは先程買ったの夫婦の奴隷達にスライムをテイムさせるとアンディの店を後にした。
「レニー、とりあえず服を少し買いに行く。家にいる奴隷には今から連絡をするから、家に帰ったら彼女に教わってくれ」
「はい、ハルキ様」
ハルキは服屋に寄ってレニーの衣服を揃えた。ミーユはハルキの連絡を受けて自分の部屋にベッドを増やすと返事をしてきた。
「後は防具や武器なんかだけど、得意な武器はあるの?」
「魔法はある程度使えますが、武器は殆ど使った事がありません。
防具も同じです。」
「まぁ、それはそうか。
家に帰ったらとりあえずスライムからテイムしてもらうよ。
聖女様とはいえ、もう俺の家族の一人だ。
今日買った他の奴隷は夫婦だから、家族っていう感じじゃ無いからな。もちろん、大切にするけど。
奴隷の他にも何人かの仲間がいる。帰ったら紹介するから仲良くやってくれ」
「はい、ハルキ様」
ハルキ達が家に帰り着くとミーユが出迎える。
「おかえりなさいませ、ご主人様」
「ただいま、ミーユ。
この子が今日買った奴隷のレニーだ。仲良くしてやってくれ」
「はい、ご主人様。
レニーさん、ご主人様はとてつもなく素晴らしいお方です。一緒にご主人様の為に頑張りましょう」
「レニーです。ミーユ様、よろしくお願いします」
「なーんか堅苦しいなぁ〜、二人共同じ位の年だろ? お互いちゃん付けで良くない?」
「ハルキ様、私は新参者です。ミーユ様の下でハルキ様にお仕えする身ですので」
「うーん、ミーユはどう思う?
どっちがやり易い? ミーユが仕事を教えたりするからミーユのやり易い方で良いよ」
「私はどちらでも構いません。
しかし奴隷として同じ立場ではありますが、先にお仕えした身として、レニーさんがご主人様に害がある場合は命を賭して止めますが」
「ミーユ、そんな事はないから気にしなくて良いよ。じゃあとりあえずちゃん付けで。二人は五分の兄弟分、この場合は姉妹分か。
一応ミーユが姉って感じでやって。問題が有ればまた相談にのるから」
「かしこまりました、ご主人様」
「はい、ハルキ様」
そのまますぐにミーユとハルキのスライムを五〇程レニーにテイムさせる。続けて雲切隼も一羽。
「ハルキ様、少し頭がクラクラしてきました」
「初日だからこんなもんかな。
ミーユ、レニーに魔力回復のポーションを。それを飲ませて回復したらお風呂の準備を教えてあげて。
風呂が準備出来るまで俺が食事の準備をするよ」
「かしこまりました、ご主人様。
レニーちゃん、これを」
「は、はい、ミーユちゃん」
ポーションを飲んでレニーが回復するミーユはレニーに風呂の準備を教え始めた。
ハルキは厨房に入って食事の準備をする。
「ご主人様、お風呂の準備が終わりました」
「そうか。じゃあ先に風呂に入るよ」
「はい、ご主人様。レニーちゃんもこちらへ」
「はい」
脱衣所に入るとミーユがハルキの服を脱がせながらレニーに言う。
「レニーちゃん、ご主人様の元では奴隷である私達も毎日お風呂に入れて頂けます。私達はご主人様の奴隷として清潔に保つ必要があります。
それにご主人様の湯浴みのお手伝いも私達の大切な仕事の一つです。
従魔も入る事があるので、その手伝いも。
ご主人様の元では皆、汚れたままにしておく事は許されません」
「はい、ミーユちゃん」
ハルキはそんな事言ったかなと思いながらも不満はないのでそのまま口を挟まずにいた。
「ご主人様の服を脱がし終えたらすぐに自分も脱いでご主人様を洗わせて頂きます。
私達はご主人様が洗ってくださる時もありますが、自分で洗う時でもシャンプーや石鹸は自由に使わせて頂けます」
手際良くスルスルと自分の服を脱ぐミーユ。一瞬の戸惑いの後、レニーもそれに続いた。
ミーユよりも全体的に細いがスラリとした手足を持つレニーの身体が露わになる。
ハルキは一瞬目をやるが白々しく目を逸らして風呂場へ入った。
「ミーユ、今日はレニーを先に洗ってあげてくれるか。使い方もわからないだろうからね」
「かしこまりました、ご主人様」
レニーを洗い終えるとミーユはレニーに手伝わせながらハルキを洗う。最後にミーユをハルキとレニーで洗い、三人で湯船に浸かる。
「レニー、とりあえずは慣れてくれ。不満があればなんでも言う様にね」
「はい、ハルキ様」
「大丈夫ですよ、レニーちゃん。ご主人様の元に居れば不満など出てくる事はありませんから。
びっくりする事はあるとは思いますけどね」
ミーユの言葉にレニーが頷きを返し、ゆっくり温まった三人は風呂を上がった。
風呂から出た先にはバニラとライムがちょこんと座って待っていた。
「そうだ、レニー。ちゃんと紹介してなかったけど、この狼がバニラ、スライムがライム。
俺の一番長くいる家族みたいな奴らだから、よろしく頼むね」
「ワンッ」
「ビヨヨーン」
ハルキの配下として二匹がレニーを値踏みする。
「ワォン」
どうやら大丈夫な様だ。
「レニーちゃん、私は最初はこの二匹も様付けで呼んでいました。
どちらもとてつもなく強くて、頼りになります。ね、ライム、バニラ」
「ビヨヨーン」
「ワンッ」
当然だと返事をする二匹。
「バニラ、ライム、レニーです。よろしくお願いしますね」
「ワンッ」
「デレレーン」
ハルキの家族達へのレニーの最初の顔見せは、どうやら上手く終わった様だった。




