第27話
次の日、日の出と共に家を出発したハルキ達は森を南へと進んで行く。時折猪などを大牙狼達が狩ってハルキの元へ届けている。
しばらくして前にドラゴンの鱗を見つけた場所まで辿り着いた。
「ミーユ、ここから先は俺も初めてだ。一応警戒していて。バニラ、頼むね」
「はい、ご主人様」
「ワン」
バニラは任せろと返事をした。
それからも森を進むとハルキ達は小高い丘の上に出た。
眼下には広大な土地が広がっている。
「なんか、行った事無いけどサバンナみたいだな」
ハルキ達の足下に広がる風景はまるで元の世界のサバンナの様な光景だった。生き物の姿もある。
草原の中に所々森があり、遠くには池の様な場所もある。
全てが見渡せる訳では無いが、ハルキのいる場所からは山に囲まれている盆地に見える。
「ご主人様、ここはどういった場所でしょうか? サバンナ、とは?」
「ああ。元の世界に似たような場所があってね。行った事は無いんだけど、自然が豊かで多くの動物がいるんだ」
ハルキは元の世界を思い出してサバンナの事をミーユに話す。
元の世界のサバンナはハルキのいた時代では狩りなどは制限された土地だ。そしてここ、サノ領の南部もまた人の来る事は無い場所だ。
ギルドの地図にはサノ南部は未開の山林が広がっており、その先は海だとされている。
ある程度は陸側から調査されたらしいが、全域までは人は立ち入っていないらしい。
だがこの先が海だというのは、サノから西に行った港から海路を南周りでサノの東へ辿り着いた記録があらので間違いない。
このサバンナの事までは載ってはいなかったので、ここ迄は調査されていないのか、他のルートを通ったか。
「とにかく、ここなら相当狩っても大丈夫そうだ。大物もかなりいそうだしね」
「ワオーーン」
ハルキの言葉に反応してバニラが遠吠えをして、ハルキの前に腰を下ろした。
「ん? とりあえず休憩か?」
「ワン」
そうだと返事をするバニラに従い、軽く食事を取る一行。
しばらくすると下の草原から一頭の大牙狼がスライムを乗せて丘を登って来た。
「ワン」
昨日偵察に行かせた大牙狼のうちの一頭だ。バニラに報告しているのか、顔を擦り寄せている。
「デロン」
スライムはハルキの元へ来て、頑張ったよと言いたげだ。
「そかそか、良く頑張ったね」
スライムと大牙狼を撫でて食事を与えるハルキ。どちらも嬉しそうだ。
「バニラ、残りの偵察の狼達は?」
「ワン」
大丈夫だと返事をするバニラ。もう少ししたら動き出すつもりの様だ。
「ミーユ、疲れてないか? もう少ししたら丘を降りて狩りを始めるけど」
「問題ありません、ご主人様」
一同が食事を終えたのを確認したバニラは上にライムを乗せて動き出す。
「ワン」
行くよと吠えたバニラの後ろを狼達に囲まれたハルキもついて行く。
こうしてサバンナの探索が始まった。
丘を降りるとバニラは迷う事なく進んで行く。魔物か動物か、結構いるのだが小さいからかバニラは構おうとしない。大牙狼達を見て逃げ出す生き物達は狩る必要もない様だ。
「ワオーーン」
バニラが立ち止まり、大きく吠えた。ハルキ達の周りにいた狼達は広がって半円を描く。
「バニラ、ランラプトルから降りなくても良いの?」
「ワン」
どうやらこのままで良さそうだ。
「ミーユ、とりあえずこのまま」
「はい、ご主人様」
ハルキ達の前方から地鳴りの様な足音が聞こえる。昨日の夜に出した偵察がこちらへ追い込んでいる様だ。すぐにハルキは偵察に出ているスライムと感覚共有する。
「なんだろう、サイかカバみたいなのが三頭だな。バニラ、いけるの?」
ハルキに伝わったイメージだとかなりの大きさだ。
「ワン」
問題ないよ、とバニラは返事をする。ライムも任せろと言いたげにウネウネしている。
「ワンッ!!」
前方から来たサイの様な生き物がバニラ達に囲まれて足を止める。
サイの様だが身体の多くの場所が角の様に尖っている。バニラを先頭にした狼達を睨みつけている。
「ご主人様、大丈夫でしょうか?
いくらバニラでもあの様な大きな者を倒せるのですか?」
「大丈夫だと思う。とりあえず様子を見る」
バニラは怯む事なく三頭のサイに向かって走り出す。何頭かの狼もバニラに続く。
急停止したバニラの背中から飛び上がったライムが一頭に雷魔法を放つ。他のスライムも狼達から飛び上がり、何種類かの魔法を放っている。
ライムはそのまま一頭の顔に広がって被さる。他の二頭にも何匹かのスライムが纏わりつく。
バニラはライムの乗った一頭に襲いかかり、首を掻っ切った。
他の二頭にも狼や大牙狼が襲いかかっている。
「ワン」
バニラはちゃんとやれと言わんばかりに狼達に指示を出す。一番小さな大牙狼のチョコも必死に食らい付いている。
しばらくして残りの二頭もその場に倒れた。何頭かの狼達は怪我を負った様だ。
「ご、ご主人様。バニラやライムはここまで強いのですか? それに他のスライム達も」
「そうか、ミーユはバニラ達の戦う所初めて見るんだっけ。まぁ、今の所ドーラさん以外には負けて無いし、魔物とかだと苦戦もしてないからね」
「ご主人様、やはりご主人様は特別なお方です」
自分のテイムしているスライムの強さを改めて知ったミーユは尊敬の眼差しでハルキを見つめた。
「そうだ、ミーユのスライムに怪我した狼達を治してもらって」
「は、はい」
ミーユの指示でスライムが狼達に治癒魔法をかけていく。
「クーン」
チョコも全快してミーユに甘えている。
そうこうしているうちにハルキの前にスライムがピンポン玉程の魔石を三つ差し出して来た。
「おー、結構大きいね。この魔物は皮とかも硬そうだし素材としても良いかもだから待って帰ろう。スライム達、マジックバッグにしまってくれる?」
ハルキの差し出したマジックバッグにスライムと狼達でサイの魔物をしまっていく。
「ワン」
バニラが次に行くよとハルキを促す。
次に狼達が追い込んで来たのは二頭のヒョウの魔物だった。またしてもハルキの出番は無く、バニラ達だけで倒す。怪我をした狼とスライムに今度はミーユが直接治癒魔法を使う。
日が傾きかける頃には大量の魔石と素材を手にしてハルキ達は帰路についた。
無事に森の家に帰り着き、留守番の狼達とスライムと共にハルキが素材の仕分けをしている所へ一羽の雲切隼がハルキの元へ降り立った。




