第26話
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道が一気に開けて家が見えた。
「ミーユ、着いたよ。あれが実家って言っている家だ」
「大きくは無いですがちゃんとした家ですね。それに周りの敷地が物凄く広いです」
「いや、元は家の目の前まで森だったんだけど、あいつら頑張ったのか凄く広くなってるよ」
実際ハルキが最後にここを出た時に比べて家の前が何倍もの広さになっている。家の裏側の農地もかなり先まで伐採されている様だ。
「ワオーーン」
バニラが到着の遠吠えをした。周辺にいる魔物や動物達に自分の存在を教え込ませている様だ。
「ミーユ、とりあえず入ろうか。
バニラ、狼でもなんでもランラプトルに護衛つけておいて。とりあえず敷地から出ないようには言っとくけど」
「ワォン」
すぐに数頭の大牙狼がランラプトルの周りを囲んだ。ランラプトルは
「大丈夫なの? コイツら襲ってこない?」
という顔でハルキを見る。ハルキが安心して食事してて良いよ、お前の護衛だよと伝えると落ち着いて周辺の草を食み出した。
「ミーユ、とりあえず荷物を片付けて、お風呂とご飯の準備をしようか」
「はい。ですが私がやりますのでご主人様はゆっくりなさってください」
「それなら説明だけするよ。その後少し周辺の様子を見て来る」
ハルキはまずスライムをミーユに受け渡した。ライムと同じ頃にハルキの従魔になったスライムは残り八〇程。その半分をミーユにテイムさせる。
「大丈夫? キツくなってきたら言って」
「今のところは大丈夫です」
二〇を超えた辺りでハルキはミーユに聞くがまだ問題は無さそうだ。
結局そのまま四〇匹のスライムをテイムしたミーユ。魔力にも特に変わった点は無いらしい。
「やはりご主人様の奴隷になって魔力が伸びている様な気がします。いくらスライムとはいえ、一度にこれだけの数をテイムできるなんて信じられません」
「俺が関わった魔物はテイムしやすくなるみたいだしね。ミーユも俺の配下だから何か変わったのかも知れないね。
何か身体におかしな所が出たらすぐに言うんだよ」
「はい、ありがとうございますご主人様」
そのまま風呂や竈の使い方をミーユに説明したハルキはバニラとライムを連れて家の裏の畑に回る。
「表も広くなってたけど、裏はもっとだなぁ。普通に大きめの村が作れそうになってるじゃん」
「ワン」
配下の狼達を褒める様に返事をしたバニラ。
「ビヨンビヨン」
ライムも自分の部下が頑張ったと言いたい様だ。
「そうだね、狼達もスライム達も頑張ってくれてるね」
今も狩った獲物を運ぶ者、野菜などを育てる者、遠くでは木の倒れる音もしている。どの程度食べているのか、食料はかなり溜まってそうだ。
結界の魔石の範囲はとうに超えて開拓が続いている。自分達で見廻りながら守っている様だ。
「バニラ、奥の方も見てこようか」
ランラプトルを呼び乗り込んで周辺を確認する。
ワイバーンの素材をスライム達が見つけた場所に向かって道が出来ている。
「バニラ、周辺の魔物や動物はどう? いなくなったりしてない?」
「ワン」
どうやら大丈夫な様だ。骨を集めてある場所にもかなりの骨が積まれている。おそらく魔石や素材も溜まっているはずだ。
「こんなに狩っても減らないなら空調機器作る分なら問題無さそうだな。
バニラ、明日からは大物を狩りたいから、みんなにも伝えておいてね」
「ワオーーン」
数頭の狼と大牙狼がバニラの前に並び、スライムを連れて四方に散っていった。
「ワン」
どうやら夜のうちに偵察する様だ。
「暗くなってきたね、そろそろ家に戻ろう」
「ワン」
家に入るとミーユは風呂も食事も準備を終えていた。
「お疲れ様です、お風呂になさいますか?」
「ああ、そうするよ。でもスライムや狼がみんな並びそうだなぁ。流石にちょっとしんどいから、バニラ達だけにしよう。他のみんなは自分で入ってもらう」
「はい、ご主人様」
ハルキとミーユは一日の汗を流す。バニラとライム、雲切隼のクラウドとムーン、それに大牙狼のチョコだけをハルキ達が洗う。
「ランラプトルの水浴びの場所も作ってやらないとダメだな」
「かしこまりました。明日にでもスライム達に手伝ってもらってやってみます」
「それならミーユ一人でも出来そうだけど、昼間は一緒に行動してもらうつもりだ。結界の範囲内とはいえ、一人にするのは心配だから。
狩りに行くから、着いてきて」
「はい、ご主人様。ですが足手まといになりませんか?」
「それも多分大丈夫。バニラ達がちゃんとやってくれるはずだから」
「わかりました。何でもしますので仰ってください」
風呂から二人が出ると他のスライム達が一斉になだれ込んで行った。今日テイムしたばかりのスライム達は少し出遅れている様だ。
「さぁ、ご飯にしよう。ミーユ、お酒も持ってきてくれたよね」
マジックバッグからワインを取り出したミーユがハルキに注ぎ夕食を食べる。
「今日は早めに休んで明日から早起きしよう。二、三日中にドーラさんも来るはずだから、ベッドの用意は明日やろうか」
「はい。ご主人様が仰ったので食料はあまり持ってきていませんが、大丈夫でしょうか?」
「それなら大丈夫。これを見て」
家に置いてあったマジックバッグをミーユに見せるハルキ。中にはかなりの量の肉や野菜などが入っている。
「開拓しながら貯めてくれてるんだ。魔石も思った以上にあるよ」
大ぶりの魔石が沢山入っている。これだけで空調機器に足りるレベルだ。
「凄いものですね。さすがご主人様です」
大物を狩るつもりで来たハルキだったが、魔石は既に足りている。だが、ハルキがここにいた時には魔物はそこまで出なかった。出てもそれ程強くない魔物ばかりだった。
「バニラ、この辺りに大きな魔物が増えてるのかな?」
「ワン」
どうやら増えている様だ。それに狼達はハルキが散策したよりも遠くまで行っているだろう。
「とにかくランラプトルもいるから前よりも遠くまで足を伸ばせる。狼達が追い込んでくれたりもするだろうしね。
バニラ、明日からは狩りを頑張ろう」
「ワン」
任せろと返事をするバニラ。
食事を済ませたハルキはこの世界に来た時の事を思い出していた。
バーを出て気がついたらここで目が覚めた。最後に話していたのはそのバーで知り合った若い女性だった。
そんなに酔っていなかったはずだが話した内容が思い出せない。
そして一人知らない世界に来て、不安の中アニャや半兵衛の本を見てなんとか暮らした。
バニラに出会い、一人じゃなくなった。そのうちライム達をテイムした。
街に出て色々な知り合いや、冒険者としての仲間も出来た。
そして今日、この家で初めて人と一緒にいる。
ハルキはそれが嬉しかった。奴隷だから言う事は聞いて当たり前なのかも知れないが、この家に人がいる事が嬉しかった。
「ミーユ、そばに来て」
近寄ったミーユをしっかりと抱きしめてハルキは言う。
「ありがとう、ミーユのおかげでなんとかやれてるよ」
「ご主人様、奴隷に感謝などするものではございません」
ハルキの唇がミーユの言葉を遮り、森の中の夜は更けていった。




